表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/87

35 陥落(白)

 岸の強烈な踏み込みで地面が揺れる。そこから繰り出される拳がヴァルスの顔面に迫る。その威力にヴァルスは思わずバックステップで下がるが、岸は読んでいたかのようにさらに一歩踏み込んで距離を潰す。

 先ほど剣を折られ、丸腰のヴァルスは両手を前にクロスさせ、能力を防御に全振りしてガードする。


「ぐぅああ!」


 しかしそれでも岸の渾身のパンチを受け切る事はできず、ヴァルスは勢いよく吹き飛ばされ、壁に突き刺さる。


「ガハ!」


「ふぅ…今のを受けて立っていられるとは、お前も力属性か。殴りがいのある相手だ。」


 背中から壁に叩き付けられたヴァルスは後頭部を打ち、出血していた。さらにガードした両手は折れてはいないものの、相当なダメージが残った。


「あれだけ完璧に受けたのにこのダメージ…やはりとんでもなく強いですね。」


 ヴァルスも壁際から一歩前に出て再び構える。


(受けは通用しない。速さに全振りして、全て外して一撃で仕留める。)


 今度はヴァルスが仕掛ける。先ほどの岸より素早い速度で距離を潰した。

 岸もその動きは見えており、カウンターの拳が飛ぶが、ヴァルスはギリギリで首を捻って回避する。そして隙が出来たので、左手で岸の振り終わりの腕を掴む。そして左手の能力を発動しようとするが、岸の腕が無理矢理起動を変え、ヴァルスのコメカミを捉える。


「グッ!」


 能力を使う前にヴァルスは横に吹き飛ばされる。勢いがほとんど無く、当たっただけの拳だが、その威力は高く、ヴァルスの側頭部から血が流れる。

 そしてヴァルスが地面に膝を付いたところで岸が追撃を仕掛ける。先ほどの超高威力の右ストレートがヴァルスの顔面に迫る。


(これはガードできない!回避するしかない!!)


 ヴァルスはさらに深くしゃがみ込んで回避しようとしたが、岸の攻撃はフェイクだった。ヴァルスの目の前で踏み込まれたのと逆の足が跳ね上がり、ヴァルスの脇腹を捉える。


「グハァ!」


 ガードできなかったヴァルスはそのまま地面を転がる。ヴァルスは蹴られた脇腹を抑えながら、激痛に悶え苦しむ。


(クソッ!肋が何本か折れた!はぁはぁ、このままじゃマズイな。パンチの威力は言わずもがな凄まじいし、フェイントもしっかり入れてくる。戦闘者としての経験が数段上だ。でも、おそらく彼の能力はパンチの威力上昇だけ。思い切り蹴られた脇腹が肋数本で済んでいる時点で、蹴りの威力はそこまでじゃない。能力なら俺が遥かに勝る。後は相手の隙を突いて右手か左手の能力を起動させるだけで俺の勝ちだ。)


 痛みを感じながらも、ヴァルスはこの局面で笑ってみせる。それを見て岸も笑顔を見せる。


「ふむ…全体的に高い身体能力、バランス型だな。だが能力の使い方がお粗末だ。まぁ所詮は半グレと言ったところか。」


「俺は半グレじゃないですよ。訳あって彼らに便乗して貴方と戦いに来た軍人です。帝国のね。」


 それを聞いた岸の雰囲気が変わる。


「ほう…道理で『憚』の構成員にしては気合が入っている訳だ。だが、俺の前で帝国軍人と名乗るとは。よほど死にたいらしいな。」


「俺は死にませんよ、さっき2人で生きて帰ると相棒と約束したばかりなのでね…俺もここからは手加減無しで行きます。」


 そう言ってヴァルスも纏う雰囲気が変わる。それを感じた岸は本能的に一歩後ろに下がってしまった。


(俺が怯えている?何故だ、どう考えても俺の方が強いはず。頭では格下と分かっているが、身体が勝手に震えるのだ。コイツの異様な雰囲気は一体…いや、余計な事を考えるな。コイツは水瀬の姉貴を殺したクズどもの仲間だ。この場で確実に殺す!)


 そして両者が同時に突っ込む。先手を取ったのはヴァルスだ。凄まじい右手の拳が飛ぶ。相当な速さで繰り出された拳を完璧に外す事は出来ずに岸は右腕で受ける。そしてそれと同時に左フックがヴァルスの右肩を捉える。しかしヴァルスは当たった瞬間に右手の能力を起動させて、人差し指を立てる。


「グゥ!」


「ガハ!」


 未知の攻撃によって右腕の一部を抉られた岸は苦悶の表情を浮かべ、ヴァルスは再び吹き飛ばされる。


(今のはなんだ!右腕の一部が抉り取られた!?爪か!?いや、そんなレベルの攻撃じゃない!!)


 自分の状況に混乱する岸だが、吹き飛ばされたヴァルスは既に立て直して岸に突っ込んでいた。ヴァルスは再び、岸に向かって右手の拳を振るう。

 虚を突かれ、反応が一瞬遅れた岸は再び右腕でガードするが、またもやヴァルスの能力で削られる。岸も今度は下段蹴りを放つが、ヴァルスは足に目一杯の力を込めて受ける。

 今度はダメージを最小限に抑え、岸の振り終わりの態勢を狙って心臓目掛けて右手の人差し指を突き立てる。

 しかし、岸もギリギリで反応して、身体を捻る事で心臓への致命傷は避ける。それでも外しきれず、右肩を抉られる。


「グゥッ!そこだぁ!!」


 隙ができたヴァルスの顔面を狙って畳んでいた右手からジャブが飛ぶ。

 しかし、ヴァルスは既に岸の肩を左手で掴んでいた。岸の拳が放たれる直前、ヴァルスの左手の電撃が発動する。


「グゥワアアア!!」


 強力な電撃を喰らった岸は全身を激しく痙攣させる。


(なん、だと!?電撃だと!?こいつ、何個の能力を使えるんだ!?…マズイ、意識が…)


 ギリギリで意識を繋ぎ、立っていた岸だが白目を剥き致命的な隙を生んでいた。ヴァルスがそれを見逃すはずもなく、右手の人差し指を岸の身体に向けて突く。


「…はぁああ!」


「ゴフッ!」


 モロに攻撃を受けた岸は血を吐きながらその場に仰向けに倒れた。柏木組武闘派No.2の岸龍司がこの場で陥落した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ