表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/87

AJ 秘策(黒)

 申し合わせたかのように3人が飛び出す。香夜は右手に刀を持ち、撃たれた左手にはナイフを持つ。最初に踏み込んだのは堂島だった。香夜の眼前で凄まじい袈裟斬りを放つ。それを香夜は皮一枚で見切り、カウンターを飛ばす。堂島も一歩遅れてバックステップを踏むが、胸を薄く切られてしまう。

 しかし、香夜のカウンター終わりの体勢を田沼が見逃すはずがなく、凄まじい突きが飛ぶ。香夜は刀を捨てて身体を捻ってギリギリで回避した。しかも回転する勢いを利用して左手のナイフを田沼に投擲する。

 田沼も余裕で見えており、ナイフで弾き返す。しかも田沼はただ弾くだけでなく、香夜の方向にナイフを打ち返す。弾き返されたナイフは真っ直ぐに香夜の方向に飛んでいく。

 想定外の攻撃を受けた香夜は咄嗟に左手を犠牲にしてナイフを止めにいく。


「グゥ!」


 ナイフが左手の甲を貫通し、激痛が走るが次の攻撃が来る。体勢の悪い香夜に対して戻ってきた堂島が横凪を放つ。

 それに対して香夜は地面に這いつくばるようにしゃがむ事で回避した。それでも次の攻撃が来る。田沼が左手に持った拳銃を香夜に向けて発砲した。


「グッ!クソッ!」


 必死で回避するも、その凶弾を右足の太ももに受けてしまった。堪らず、急いで柱の影に入る。


「おいおい、どうした?俺たちを殺すんじゃないのか?俺はまだ傷一つ付けられてないぞ。」


「はぁはぁ…うるさいわね。女1人に2人がかりで、恥ずかしくないのかしら。」


「知った事か、俺たちには貴様らの様な安いプライドなどない。さっさとそこから出てこい。」


 そう言って田沼は懐から手榴弾を取り出してピンを抜き、香夜の足元に投げる。


「チッ!」


 香夜は爆発を回避するために後ろに下がるが、それによって死角がなくなり、田沼の集中砲火を浴びる。

 左右に動きながら致命傷を回避するが、全てを外しきれず、身体の所々に銃弾が掠り、出血する。そして何とか再び後ろの柱の影に入る事に成功した。


(クソッ!格上2人相手はやっぱりしんどいわね。特にあの田沼とか言う男、攻撃が読みにくい。それに…さっきの手榴弾が爆発しない…捨て身の作戦かと思ったけどまんまと騙されたみたいね。…さっきの攻撃で携帯も壊れた。援軍は期待できない。それに太ももと左手の出血が激しい。でも、やるしかない!)


「グゥ!」


 香夜は再び上着をその場で破いて太ももをキツく縛り付けて簡易的に止血した。思い切り縛りつけた痛みを袖を思い切り噛むことで耐える。そして左手に刺さったナイフを抜いて握り直す。


「うぅぅうう!!はぁはぁ…でもこれで武器が手に入った。」


「さぁ、出てこい!死ぬんじゃないぞ!」


 再び田沼が手榴弾を香夜の足元に投げる。下がる事ができない香夜は柱から飛び出して前に出る。それを読んで堂島も前に出ていた。しかし、堂島の顔が歪む。


「チッ!」


 香夜は先ほど逃げる際にマキビシを地面に巻いていた。床と似た色であったため、堂島は気づかずに踏んでしまい、動きが一瞬鈍る。その隙に香夜は田沼の射線上に堂島を入れて、壁を作った。

 堂島の懐に入った香夜だが、堂島も立て直して刀を振り上げる。香夜はその一刀を交わそうと刀を注視するが、それはフェイクだった。堂島は刀をそのままに、足を跳ね上げる。

 香夜もギリギリで気付いて腕を入れるが、その凄まじい横蹴りによって、ガードごと蹴り飛ばされる。


「グゥゥ!!」


 堂島の凄まじい蹴りによって、治りかけていた香夜の左腕は再び粉砕されてしまった。香夜は地面を転がりながら、残った右手を地面についてバク転の要領で立ち上がる。しかし既に田沼が銃を構えており、香夜に向けて発砲する。香夜はそれをかわす事が出来ずに、左肩に命中する。


「ガッ!クソッ!」


 しかし、撃たれながら右手に持ち替えた銃で田沼に反撃する。田沼もその銃弾を回避しながら近くの柱に隠れる。そして、再び隙ができた香夜に堂島が斬りかかる。


「これで終わりだ。」


「うぉおお!!」


 香夜は右手の銃を盾にしてその一撃を受け止める。しかし、片手の香夜のガードは弾き飛ばされ、袈裟斬りが香夜の身体を捉える。


「ガハッ!…でも、捕まえた!」


 香夜は斬られると同時に堂島の手に触れていた。


「それがどうした!!」


「【止まれ】!!」


「ウグッ!」


 香夜がそう命令した瞬間、堂島の身体は硬直する。そして右手に持った銃で堂島の心臓目掛けて撃った。


「グハッ!」


「ハァハァ…クソっ…」


 香夜は最後の最後で手元がブレて、狙いがズレてしまった。その弾丸は心臓ではなく、肩に命中した。しかし、堂島もその場で仰向けに倒れる。


「ハァハァ…つぎ…は…うっ!」


 そして香夜は斬られた傷によって限界を迎え、その場に倒れ、意識を失ってしまった。それをみた田沼は柱から出てきて香夜に近づく。


「やっと終わったか。手間かけさせやがって。にしてもこんなガキに出し抜かれるとはお前も無能だな。死ぬか?」


 そう言って倒れた堂島の撃たれた肩を踏みつける。


「グハァ!…すみません。ヤツに触れられたら身体が急に…いや、今治りました…グッ!」


「黙れ。テメェの言い訳は聞かねぇ。そこで反省してろ。…にしても、すげぇ出血量だな、女。このままだと連れてく前に失血で死んじまう。はぁ…仕方ねぇが止血してやるか。」


 そう言って田沼は倒れた香夜の止血を始めた。素早い手際で止血を終わらせた田沼が香夜を運ぼう担ぎ上げたその瞬間、香夜が目を覚ます。そして、それに気づいた堂島が叫ぶ。


「田沼さん!そいつに触れるのは危険です!下ろしてください!」


「あ?」


 しかし、既に時遅し。香夜は右手を田沼の背中にあて、笑みを浮かべながら一言つぶやく。


「…【止まれ】」


「うおっ!急になんだ!?」


 香夜の能力によって田沼の身体の自由は奪われた。担がれた香夜は地面に落とされる。


「…ハァ…ゴフッ…へへ、ざまあみろってのよ。」


 失血で立ち上がれない香夜は寝たまま、田沼を嘲笑する。

 田沼も少し考えて、自分の状況を悟った。しかし、その後の田沼の態度は香夜の想像とは全く違うモノだった。


「はっはっは!これはとんでもない能力だ。この俺も知らない力、まさか隠していたとはな…まさに、してやられたな。本来ならここで終わっていただろうな。だがな…俺は1人じゃないぞ。」


「な…に!?」


 動けない2人の視線の先では肩を撃たれた堂島が立ち上がっていた。それを見た田沼が口を開く。


(まさか!気を失ったら能力が解除されるなんて聞いてないわ!マズい!攻撃が来る!)


 香夜は状況を理解して、本気で焦りの表情を浮かべる。


「お前の能力は強力だが、どうやら気絶したら解除されるらしいな。さぁ、この状況でどうする!?」


「クソッ!クソッ!動け!動けぇええ!!」


 歩み寄ってくる堂島を見ながら、香夜は全身に力を入れて立ち上がろうとするが、もうボロボロの身体は言うことを聞かない。目の前の足掻く香夜を見下すように堂島が話す。


「油断した…まさか、こんな若い女がここまでやれるとは…タイマンで闘いたかったものだ。」


「ハァハァ!うぉおおお!!グッ!はぁああ!!」


 そうして、香夜を素直に褒める堂島を無視して、香夜は全身を奮い立たせるために雄叫びを上げる。そして何とか立ち上がる事に成功する。しかし、手足は激しく痙攣し、立つ事が精一杯だった。


「おい堂島、コイツを痛めつけろ。気絶させるだけでいい。」


「はい、分かりました。…すまんな、若い女。ふん!」


「ガハッ!」


 そう言って堂島は瀕死の香夜の顔面を刀の鞘で殴りつける。回避も防御も出来なかった香夜は、そのまま吹き飛ばされる。そして、堂島は倒れた香夜の頭や身体を何度も何度も執拗に殴りつける。香夜は這いつくばって逃げようとするが、背中を踏まれて逃げられなくなる。そのまま無抵抗に全身を打たれ続けた。

 頭からは出血し、全身はアザだらけ、何箇所も骨が折られ、途中までは痛みで叫びを上げていた香夜も、既に何も発さなくなっている。それでも香夜は気合いで意識だけは繋いでいた。


「おら!」


 そして、堂島の蹴りによって吹き飛ばされ、柱に背中から叩きつけられる。その一撃は特に強烈で香夜の意識をほとんど刈り取った。


(もう…いしき…が…)


 そして、堂島が最期だと言わんばかりに高く腕を振り上げた瞬間、何者かが堂島に突っ込んでくる。


「うぉおお!!テメェ、何してんだ!!」


「ふん!」


 その男の前蹴りを堂島は完璧にガードしたが、少し吹き飛ばされる。駆けつけたのは南だった。


「姉貴!!大丈夫ですか!?」


「…じゅ…んぺ…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ