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AH 突入(黒)

「何!それは確かだな!?分かった引き続き監視してくれ。」


 電話を切った松林は即座に別のところに電話をかける。


「品川か?俺だ。今、監視カメラに田沼の姿が映った。それに周りに配置した監視員の複数人が、ホールに入っていくヤツの姿を視認している。作戦決行だ。いいか、敵は1人も逃すな。今日で終わらせてこい。」


 そう言って電話を切り、タバコを咥える。


「ふぅー…本当にヤツが現れるとは…仮にこれが罠でもヤツさえ仕留めれば『憚』は終わりだ。だが…やはり引っかかる…本当にこれでいいのか?」


 松林の拭いきれない不安はその後、確信へと変わる。



 柏木組本部と東町の中間地点のアジトでは、松林からの指示を受け、全員が動き出していた。


「田沼が現れた!今すぐに全員で乗り込んでのヤツのタマを取るぞ!」


 年長者であり、このメンバーの責任者でもある品川が檄を飛ばす。

 そして、そこにいる全員が武器を取ってそれぞれ車に乗り込んだ。香夜と南は道草の運転する車に乗り込み、会合場所へ向かう。


「いよいよですな。今日で全て終わらせましょう。」


「はい…そうですね…」


 歯切れの悪い香夜に南が話しかける。


「姉貴、どうしましたか?何か引っ掛かる事でも?」


「ええ…おそらくこれは罠…でも、カシラや監視員が田沼の姿を見間違えるハズはない。もしかしたら田沼は影武者?…何か違う気がする…」


「そうですな。影武者という可能性はありましょう。しかし、そこにいる構成員を全員始末するだけでも十分な戦果といえます。罠には十分に気を付けながらいきましょう。」


「そうですね。俺も頑張ります!」


「…」


 意気込む南と対極的に香夜の違和感は拭い切れなかった。


 30分ほど経って、ホールが見えてきた。東町の中心には台地があり、そこに建つホールは高い所にある。ホールに行くには大きな登り坂の一本道を通らなければならない。

 極道達の車はその坂が見える少し離れた道に停まった。車の中からその登り坂を見ていると、何台もの車がその坂を登っている。


「これは、確定ですな。罠の有無はともかく、今から会合が開かれる事は確実ですぞ。」


 道草がそう確信するのは、その坂の先にホールがあるのだが、それ以外の施設は何も無いため、普段はその道に車が通ることは無い。にも関わらず、ひっきりなしにバイクや車がその坂を登っている。ホールに確認したところ、今日の使用客はいないと回答を得ているので、無許可で使用している事が明らかであった。


「道草の兄貴、定刻までもうすぐですね。」


「そうですね、連絡が来たら即座に攻め込みますよ。南も無理はしないように。勝谷を殺した奴がいたら、私が相手しますが貴方に最期はトドメを刺させてあげましょう。」


「分かりました。ありがとうございます!」


「女神にも機会を提供しますので、それでよろしいですかな?」


「…ええ。」


「女神よ、あまり考え事ばかりしていては足元をすくわれますぞ。これからカチコミです。集中してください。」


「…そうですね。ありがとうございます。目が覚めました。よし!2人とも気合い入れていくわよ!私たちがこの戦いを終わらせましょ!!」


「はい!頑張りましょう!」


「そのいきですぞ!私も久々に腕がなります!!」


 そのタイミングで道草の携帯が鳴る。


「…はい。了解ですぞ!2人とも行きますぞ!」


 そう言って道草はアクセルを踏み、坂に一気に向かう。それに呼応するように他の車も一斉にそこに集結し、一気に坂を登る。長い登り坂に何台もの極道車が並び、ホールを目指す。

 少し走ってすぐに目的地に着いた。そこの駐車場には何台もの車が停まっており、中に百人規模の構成員がいる事は明らかだった。極道達の車は、逃げ道を塞ぐようにあえて坂の入り口付近に停めて、全員が一斉に車から降りてホールに向かって走る。

 しかし、ホールの周りには何人かの見張りがいた。


「な、なんだ!お前ら!極道か!!」


「カチコミか!全員殺せ!!」


「なんでここが分かった!?早くボスに報告…グハッ!」


 見張りが携帯を取り出す前に神保の風の刃が心臓を貫く。他の見張りに対しても右手を一閃し、全員胴体を真っ二つにした。

 入口の目の前についた極道たちはそこで一度止まる。そして、神保が地面に方陣を描き、舞台を発動させた。半径30メートル近くとなり、中の様子を確認する。


「…周囲に敵は16人。火薬の気配あり。おそらく時限式の爆弾です。」


 神保は周囲の様子を確認して、品川に報告する。


「分かった。俺たちが突入するから、援護を頼む。道草は中で舞台を起動しろ。爆弾の無力化も頼む。」


「了解ですぞ。」


「行くぞ!突入!!」


 その合図と共に極道たちは一気に中に雪崩れ込む。

 中では何人もの構成員が銃を構えていた。中の構成員たちも神保の舞台によって突入に気づいていた。


「死に晒せ!」


「死ね死ね!!」


「ウヒャヒャヒャ!」


 突入した極道たちに対して中の構成員が撃ちまくる。しかし、極道たちは一切避ける事なく突進する。弾丸は極道たちに当たる前に、起動がズレて全て横の壁に着弾する。神保の舞台上では、弾丸すらも受け流す強風が吹いている。しかし、至近距離では流石に銃弾の威力を減衰させる事が精一杯だが、至近距離まで詰めれば銃弾をかわすのは容易い。極道たちは一気に敵の懐を侵略し、全員を斬り捨てる。

 道草はその間に方陣を描き、舞台を起動させる。道草の舞台は温度を感知する事ができるため、爆弾の位置を見つける。


「そこのゴミ箱の中です!」


 そしてゴミ箱ごと即座に凍らせる。そして舎弟の1人がその氷を持って外に運び出した。


「テメェら、この調子で行くぞ!」


《はい!》


 全員で先に進む。目指すは会合が行われている巨大ホール。

 

 道中で様々な敵を倒して、爆弾を回収しながらホールの扉の前のエントランスまで来た。そこには大量の構成員が大挙しており、こちらに向かって大量の銃弾を飛ばしてくる。


「流石に数が多いな。神保、頼む。」


「分かりました。」


 再び舞台を起動させた神保は右手の平を前に突き出す。すると大量の敵の周囲に風が吹き始める。


「なんだ、このそよ風は!」


「雑魚が!こんなの無駄だ!」


 その瞬間、神保が右手を握る動作をするとその風が敵の中心に集まり始め、竜巻が発生する。その風圧はさすまじく、周囲にいた敵全員を吹き上げ、周りのソファや植木なども巻き込み、部屋のガラスも全て破壊される。


「ぐわぁあ!!」


「なんじゃこれは!!ガッ…」


「クソッ!抜け出せねぇ!ゴフッ!」


 竜巻に飲まれた構成員たちは中でミキサーの様に強烈にぶつかり合って次々に死んでいく。その彼らの血で竜巻がだんだん紅く染まっていく。

 それを遠くから見ていた香夜は驚愕の声を上げる。


「いやぁ、いくらなんでも強すぎでしょ。」


「相変わらず神保の兄貴は出鱈目な強さですな。私などまだまだです。ちなみにこの技は敵の血によって竜巻が赤く見える事から『死の赤乱雲』と呼ばれているそうですぞ。」


「この前、リスペルでやられたって聞いてたからそこまでなんじゃないかって思ってたけど…こんなバケモノ誰が倒せんのよ…」


 しばらくして竜巻が収まると、巻き込まれた構成員のバラバラ死体が地面に転がる。巻き込まれなかった構成員も、巻き込まれた構成員が持っていた武器や、ガラスの破片などが飛び散った影響で、ほとんど死亡していた。

 しかし、ホールの扉から再び構成員が出てくる。


「クソッ!さっきの轟音はなんだ!」


「って、おいおい!何人やられてんだ!」


「数はコッチの方が多いんだ!一気に行くぞ!」


 そうして大量の構成員が突っ込んでくる。


「おっしゃ、お前ら気合い入れろや!!こっからは白兵戦じゃ!!」


 品川の怒号によって極道も姿を晒して、敵に突っ込む。そして、大量の構成員対極道たちの大乱戦が始まった。



「ふぅ…これで7人目と。…えい!【あいつら殺してきて】」


 香夜も乱戦に混ざって、敵を着実に撃破していた。時々バレないように自身のロイヤルの能力を使い、敵を寝返らせて同士討ちさせたりもした。


「ハァハァ!オラッ!」


 南も善戦しており、小さい怪我を負いながらも2人目を倒していた。


「純平、大丈夫?ふん!」


「はい!やはり、みなさん流石です。敵の数もだいぶ減ってきたでしょうか。」


「そうだね。そろそろ中に突入しよっか。道草の兄貴!」


「待ってましたぞ!」


 そう返事する道草の周りには10体近い氷像ができており、周辺にも凍死体が何体も転がっていた。

 追加の構成員が現れなくなったところで、3人はホールの扉の前に立つ。


「私が先導しますので、気を付けてください。」


 道草が先頭で3人はホールの中に突入する。


「これは…」


「ようやく来たか、柏木組。待ちくたびれたぞ。」


 ホールの舞台の中心に立っている男は、舞台が暗くて顔はほとんど見えなかったが、南も見覚えがある黒と紫のスーツを着た男だった。


「田沼ぁあ!!」


 その男を見た南は激昂し、2人を無視して突撃していた。


「来い!雑魚が!返り討ちにしてやるよ!」


 舞台に上がった南はナイフを振りかぶって男に斬りつける。しかしすでに男もナイフを抜いており、南のナイフを受け、鍔迫り合いになる。


「甘いな!」


「うぉおお!!」


「何!?」


 南が腕に全力の力込めると、男のガードを弾き飛ばした。そして、南は即座に懐を取る。


「バカが!」


 男はナイフを持っていた手とは逆の手に既に銃を構えており、南に向けて速射する。

 南は完璧に懐に入りすぎてその銃弾を避けることは出来なかった。銃弾は正確に南の眉間を貫き、脳天を撃ち抜くはずだった。しかし、銃弾は南の額を少し抉っただけで、頭蓋骨を貫通する事は無かった。


「なんだと!?何故死なん!!」


「俺の防御力は親父譲りなんだよ!!」


 打つ手が無くなった男は致命的な隙を晒す。懐を取ったままの南はそれを見逃す事なく、全力でナイフを切り上げる。


「死ねぇええ!!」


「グハァア!!」


 南の一撃は男の胸を激しく切り裂き、致命傷を与えた。

 男はそのまま地面に倒れ、激しく吐血しながら死亡した。


「純平!大丈夫!?」


「あ、姉貴。俺は大丈夫です…グハッ!」


 南に駆け寄った香夜は、南が話している最中に思い切りぶん殴った。


「アンタね、無理するなって言われたばっかでしょ!?舎弟の分際で姉貴分である私の言う事が聞けないの?」


「す、すみません…ついカッとなって…ゴフッ!」


 再び香夜の鉄拳が南の腹を打ち抜く。


「これで私に逆らった事はチャラにしてあげる。でも、これからは私の言う事は絶対に聞きなさい。返事は!?」


「は、はい!」


(香夜の姉貴も、立松の姉貴の言う事を無視して脱走して怒られてたじゃないですか?なんて言ったら殺されるな。黙っておこう。)


 香夜は携帯のライトを取り出して男に近づき、ライトを照らして顔を確認する。そして、少し観察していると南が先に話しかける。


「香夜の姉貴…おそらく」


 南が言う前に香夜が答えを言う。


「コイツ…影武者よね?」

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