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AC 暗殺者(黒)

「なんか私ってさ、最近気絶させられてばかりじゃない?」


「それはお前の自業自得だ。殺されなかっただけ感謝しろ。」


 目覚めた香夜は、立松に話しかける。


「速すぎて全く見えなかった。あんなの勝てるわけないよ。」


「当たり前だ。あの人は、東西含めた大陸最強の男と言われているからな。お前が勝てるはずあるまい。」


「差がありすぎると、悔しさとか全く湧かないんだね。あれだけの大口を叩くだけあるよ…それで、あの人はもう帰ったの?」


「ああ、暇があったらまた来ると言ってたぞ。それと、大兄貴が次の『議会』にお前を参加させてくれるらしいぞ。」


「そっか…大兄貴も私の力を利用したいのかな。」


「あの人はそんなくだらん事はしない。実力で全て黙らせる人だからな。それよりも、約束通りお前はしばらく入院だ。勝手な事をしたらまた全身麻酔にするからな。今度は完治するまでずっとだ。分かったな。」


 香夜はあの時の恐怖を思い出して顔が引き攣る。


「わ、分かってるよ。早く治して復帰する。」


 そのタイミングで組の警報が鳴り響いた。いきなりの出来事で2人も同様する。


「姐さん!これは!」


「『憚』か、帝国軍か、どちらにせよ迎撃だ。私も行くが、お前はここで大人しくしてるんだぞ。」


 そう言って立松は急いで部屋から出て行った。

 緊急のサイレンが鳴り続ける中、1人病室に残された香夜は部屋に置いてあったボールペンを手に取って外を眺める。


「暇だなぁ。みんな戦ってるのに、私は寝てるだけなんて。」


 香夜はしばらく外を眺めていると、妙な気配がした。


(足音?にしてはあまりにも小さい。足音を消して歩いて来ている?もしかしたら!)


 その瞬間、部屋の扉が少しだけ開き、何かが投げ込まれる。それは香夜のベッドの足元に転がり、起爆する。ギリギリで気づいた香夜も耳を手で塞ぐが、間に合わなかった。


キィイイイン!!


 香夜は平衡感覚を失ってベッドに倒れる。


(音響兵器か!クソ!耳をやられて何も聞こえない!)


 耳をやられた香夜はもう一つのモノが投げられた事にも気付かなかった。追撃を警戒して扉の方を凝視していた香夜の視界が一瞬で真っ白になる。香夜はそれをモロに見てしまい、視力を奪われる。


(閃光弾!気付かなかった、これはヤバい!)


 視覚と聴覚を奪われた香夜は敵を警戒して壁際に寄る。しかし、襲撃者はもう香夜の目の前まで距離を詰めていた。

 襲撃者は香夜の右腕に細い六角を突き刺す。


「グゥ!そこね!」


 痛みを受けた香夜は咄嗟に蹴りを放って男を突き飛ばす。

 何も見えない中、右腕に刺さったろっかくを口で抜いて右手で持ち、武器に変える。そして、蹴り抜いた方向にそれを投げようと腕を振り上げるが、突如全身が硬直した。握力もなくなり、持っていた六角を地面に落として、そのままうつ伏せに倒れる。


(やられた、さっきの六角に何かの薬が塗ってあったのね。急所ではなく右腕を狙った時点で、私を誘拐するのが目的か!)


 全身の力が抜けた香夜に襲撃者が近づいてくる。香夜は抵抗しようと腕を振り上げるが、腕は力なく地面に落ちる。

 それを見た襲撃者は念を入れて香夜の首筋に注射を打つ。


(クソッ!…ヤバい…全身の感覚が無くなる…これはあの麻酔薬か!)


 即効性の麻痺薬によって全身の自由を奪われた香夜は指一本動かせなくなった。

 襲撃者は全身が全く動かなくなった香夜を肩に担いだ。

 しかし、それによって香夜の身体が男に触れた。担がれた香夜はニヤリと笑って声を発する。


【止まれ】


 その瞬間、男は歩き出そうとしていたが身体が硬直する。それどころかバランスを崩して担いだ香夜ごと倒れる。香夜は男を下敷きにして倒れたまま話す。


「痛いわね。もっと優しく下ろしなさいよ。」


「な、何が!身体が動かん!何をした!」


 うつ伏せに倒れたままの男が声を上げる。少しだけ聴力が回復して来た香夜は男に再び命令する。


「うるさいわね。それより早く私を【解毒して】。」


 命令された男は立ち上がって懐からもう一本の注射器を取り出して香夜の首筋に注射する。

 香夜は徐々に動けるようになり、立ち上がった。


「はぁ、何回も首に注射すんじゃないわよ。普通にめちゃくちゃ痛いんだから。んで?あんた何者なの?」


 立ったまま動けない男に香夜は質問する。


「…俺は何も喋らんぞ。」


「あっそ、なら【知ってる事を全て話して】。」


 香夜は男に触れながら命令を下す。男は一瞬身構えるが、何も起きずに笑う。


「はっ!話すわけねぇだろ。このチビが!グヘッ!」


 香夜の地雷を踏んだ男は思い切りぶん殴られた。


(身体の自由は操れても、自白させたりはできないって事ね。まぁ、後で色々聞かせてもらおうかな。それより、お仕置きしなきゃね。)


「私がいいって言うまで【静かに腕立て伏せしてなさい】。これでよしっと。」


「何だと!っ!」


 そして、抗えぬ男は部屋の隅で静かに腕立て伏せを始めた。


「コイツには情報を吐かせなきゃね。それにしても病院に入られるなんて、みんな何やってるのよ。それに、私の病室を知っていたって事は、もしかして…」



 香夜はベッドに戻ってくつろいでいると、立松が戻って来た。


「香夜!大丈夫か!」


「姐さん、びっくりさせないでよ。私は大丈夫だから一度落ち着いて。」


「受付が倒れていたからまさかと思ったが、お前耳から血が…すぐに先生を呼ぶ。」


「うん、ずっとキンキン言ってて、聞き取りづらいの。」


 立松は部屋の内線電話を手に取って医者を呼んだ。


「それにしても、コイツは何だ?」


 立松が指差したのは部屋で腕立て伏せをし続ける男。立松が来るまでのおよそ15分間、休む事なく腕立て伏せをし続けた男は全身汗だくで、腕も震えていた。腕の力が抜けて、何度も倒れるが、休む事は許されず即座に腕立ての姿勢に戻る。それでもすぐに地面に倒れ、再び戻る。さながら生まれたての子鹿のようだった。


「ヘェヘェ…ガハッ!ハァハァ…もう、許してくれ…死ぬ!ガハッ!ヘェ、うぉおお!」


「私を誘拐しようとした罰よ。首も耳もめちゃくちゃ痛かったんだから。」


「ふむ、コイツに襲われたんだな。そして香夜の能力で筋トレさせられ続けているというところか。香夜を誘拐したいなら、意識を完全に奪うか、口を塞ぐべきだったな。」


「あと3時間ぐらいそのままにしとこっか。」


「頼む!ハァハァ、グハッ!早く助けてくれ…何でも話すから…はやく!!」


「何でもねぇ…嘘だったら死ぬまで腕立てやらせるからね?」


「嘘じゃねぇ!!ハァハァ、早く!!」


 香夜は男に近づいて、男に触れながら【自由にしていいよ】と命令する。


「ハァハァ…ハァハァ、ありがとうございます…それにしてもとんでもねぇ力だ…」


 限界を迎えた男は力無く床に倒れた。


「では私から質問させてもらう。お前は『憚』だな?お前の目的はなんだ?」


「ハァハァ…ふぅー。俺は『憚』の幹部、岡部だ。混乱に乗じて山下香夜を誘拐する算段だった。この通り失敗してしまったがな。」


 岡部は腕が動かないため、床に寝そべったまま答えた。


「幹部…では、香夜を誘拐しようとした理由はなんだ?」


「そいつは次期組長候補だからな。人質にして、柏木組の内部を混乱させるために拐おうとした。」


「なるほど、お前たちの目的はなんだ?なぜ私たちを攻撃する?」


「俺たちはいずれ『五木』全部を倒して、連合を乗っ取る。先ずは弱ってるお前らからって事だ。」


 岡部が口にしたのはとんでもない計画だった。


「連合を乗っ取る…随分と舐められたものだな。我々に手を出せば待つのは死だ。」


「少し前に、街中に火をつけて、そこで2人の組員を襲ったのはアンタ達ね?そいつらについての情報を話して。」


 香夜は怒気を込めた声を発する。


「…それはボスと幹部の堂島だな。先日、ハンマーを振り回す極道を殺したと聞いたから、おそらく間違いないだろう。」


「で?そいつらはどこにいるの?」


「ボスがどこにいるのかは俺たち幹部ですら知らねぇ。あの人は完璧主義だからな、痕跡も絶対に残さないし、移動にも細心の注意を払ってる。ボスといつも一緒にいる堂島の事も知らん。」


「そう…」


 香夜は少し残念そうにため息をつく。


「さっきの襲撃でウチの組員が5人死んだ。お前もヤツらの仲間なら、悪いがここで死んでもらう。」


 そう言って立松は懐からナイフを抜いて、男に近づく。しかし、岡部はニヤリと笑ってこう言った。


「だろうな…だが、ここで死ぬワケにはいかん。俺は最悪のケースをいつも想定している。この部屋に来る前からな。」


 次の瞬間、病室の外で何かが爆発した。2人は咄嗟にそちらを見るが、その隙に岡部は懐から煙玉を取り出して地面に投げた。辺りは煙に包まれ、何も見えなくなる。


「クソッ!香夜!大丈夫か!?」


「私は大丈夫だから、姐さんはアイツを…ってもういないか。」


 岡部の反撃を警戒し、立松は香夜を守るように警戒していたが、煙が晴れた頃には病室の窓から岡部は逃走していた。


「逃げられたか…だがヤツの様子から先ほどの情報は真実だろう。」


「うん、アイツほんとに優秀だったわ。それより追わなくていいの?」


「ああ、狙いがお前である以上、罠の可能性もある。今お前を1人にするわけにはいかん。それより早く医者に診てもらおう。」



ーー憚のアジトーー


「すみませんボス。誘拐は失敗しました。」


「お前がしくじるとはな。その女、それほどの強者だったのか?」


「いえ、その女は大した事ありませんでしたが、立松という女幹部にやられました。」


「その両腕…いくら幹部とて、お前がやられるとはヤキが回ったな。流石は『暴君』と呼ばれた女だ。で?失敗したお前はどう責任を取るんだ?俺がここで殺してやってもいいぞ。」


「ボス、勘弁してください。その代わりですが、山下香夜に発信機を付けました。身体の中にありますので、外される事もないかと。」


「ふん、まぁいいだろう。追加の兵隊と、幹部を2人やるから引き続きその女を狙え。」


「了解です、ボス。」


 岡部は部屋から出て、自宅に帰った。


(腕がまだ痛むな。あのチビ、次会ったら許さんからな。それにしてもあの能力…おそらく『真なる王』だ。あの人に連絡せねば。)


 岡部はとある人物に電話をかける。


「もしもし、岡部です。少しお話ししたい事が…はい、山下香夜という女についてなんですが…ええ、()()さん、実は…」

世界一の情報屋である桜田はあらゆる組織にスパイを潜り込ませています。『憚』や柏木組はもちろん、帝国にも何人ものスパイがいます。

スパイである岡部は田沼に香夜の能力を敢えて話しませんでした。しかし、田沼は岡部がスパイである事には気づいていますが、敢えて放置しています。


ロイヤルの能力ですが、自殺させる事などの自身の本能に明らかに反する行動はさせる事ができません。また、他者を好きになると言った精神的な行動も不可能です。ただし、洗脳状態であれば話は別ですが。

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