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30 間属性(白)

2話続けて情報量が多いですので、後書きにまとめています。

「お待たせしたね。俺が情報屋の桜田慎吾だ。よろしく頼むよ。」


 桜田と名乗ったその男は残った向かいの席に座って、レムナに話しかける。


「久しぶりだね、レム。元気にしてたかい?」


「…うん…また強くなった…おにいにも勝てるかも…?」


「ははは、将士さんに勝つのはちょっと厳しいんじゃないかな?でも、俺は応援しているよ。」


「…うん、頑張る」


 桜田は気を取り直して真面目な表情でレムナに話しかける。


「それで?早速要件を聞こう。まぁ大体の予想はつくけど、一応教えてくれるかな?」


「…次の『議会』の日程が決まった…11月20日…場所はいつも通り…」


「うん、分かった。それで、あさ…母上は今度こそ来るのかい?」


「…分からない…多分来ない…と思う」


「ははは、そうだろうね。教えてくれてありがとう。これだけの為にわざわざすまないね。付き添いの皆さんも本当にありがとうございます。レムは昔からドジだから、1人じゃ心配で。」


「…にいさまひどい…私はドジじゃない」


 そうすると、セルタスが席を立って口を開く。


「初めまして、私はこの5人のまとめ役をしております、セルタスと申します。是非お見知り置きを。さて、レムナ様からの伝言も終わりました。かの高名な情報屋である桜田様にせっかくお会いできた事ですし、いくつか聞きたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」


 そう言われた途端に、桜田の顔が変わる。


「俺はプロの情報屋だ。情報を金で売って生計を立てている。タダで何かを教える事はできないな。」


「やはりそうですか。では、コチラも対価をお支払いしますので、情報を売っていただけますか?」


 そう言ってセルタスは懐から札束を取り出す。それを見た桜田は少し驚いた後、先ほどの笑顔を見せて話し始める。


「うん、ありがとう。試してごめんね。

本来なら、タダで何かを教えることは俺のポリシーに反するけど、今回は特別に3つだけ、無料で情報を提供してあげよう。」


 そう言って桜田は指を三本立てる。


「ここまでレムの面倒を見てくれた感謝と、これからもよろしくという事で1つ。

 先ほど、君たちをここに連れてくるまで、誘拐するような真似をして怖がらせてしまった慰謝料として1つ。

 そして、その子が妹たちの友達になってくれた事への感謝で1つ。」


 桜田はリシェルの方を見て笑顔でそう言った。


「雷葉に聞いたのね。でも、別に私は対価が欲しくて友達になったわけじゃないわ。2人のことが好きだから友達になったの。そんな感謝はお断りよ。」


 しかし、リシェルはそれを拒否する。


「おいリシェル、せっかく情報くれるっていうんだから余計な事言うなよ。」


 横で聞いていたヴァルスはムキになるリシェルをなだめる。


「貴方は黙ってて!私は金の為にレムナや雷葉と友達になったと思われるのが嫌なの!」


 全員の前でそう言い放ったリシェルに対して、感極まったレムナがリシェルに抱きつく。


「…リーシェ…大好き」


「ちょっ!こんなところで抱き付かないで!もう、離してってば!」


 リシェルが振り解こうとするが、レムナの強靭なパワーでホールドされているため、リシェルの力では逃げられなかった。


(らい)から聞いていたけど、本当にいい子だね。これからも妹達をよろしく頼むよ。」


「貴方に言われなくてもそうするわよ。2人は私にとっても唯一の友達なんだから。ちょっ!いい加減離れてー!」


 リシェルに抱きついたレムナは離す気配が全くなかった。

 そのままで桜田が再び話し始める。


「本人もこう言ってるので、申し訳ないが2つだけにしよう。その代わり、私が答えられる範囲なら何でも答えるよ。」


 それを聞いたセルタスはヴァルスに視線を送る。

 ヴァルスはその意図に気付いて最も知りたかった質問をする。


「では俺から…単刀直入に書きます。東西の戦争を終わらせる方法を教えてください。」


 それを聞いた桜田は顎に手を当てて、少し考えを巡らせた。


「そうだね…この世界中では様々な場所で戦争が起きているけど、君が言いたいのはソメイ帝国による侵攻って事かな?」


「はい。俺たちは帝国軍人なんですが、俺はとある人との約束で戦争を終わらせたいんです。」


「それは元第二軍隊長のリミエル・レトロームとの約束かな?ヴァルス・アラムドくん。」


 自己紹介もしていないのに既に亡くなっている姉の事まで知られていた事に少しだけ驚きを見せる。


「やはりご存じでしたか…そうです。俺はリミ姉の意思を継ぎたい。そのための方法を教えてください。」


 それを聞いて桜田は再び少し考えてから話し始める。


「中々に難しい質問だね。…誰でも思いつく手っ取り早い方法としては、皇帝を暗殺する事かな。戦争を主導しているのは彼だから、あの人を殺せば必然的に戦争は終わるはずだよ。」


 それに対してヴァルスが答える。


「いえ、それは知っています。ですが、陛下を暗殺するのはあまりにも現実的では無いと聞きました。他に手段はありませんか?」


 その質問を遮るようにリシェルが質問する。


「ていうか、桜田さん?は皇帝と同じ『上院』議員なんですよね?桜田さんから説得して頂くことはできないんですか?」


 それを聞いた桜田は少し笑いながら答える。


「確かに俺は『上院』に所属してるけど、あの人とは対等じゃないんだ。俺にはあの人を止められるほどの発言力はないよ。」


 それを聞いたセルタスも反応する。


「なるほど、『上院』にも序列があるのですね。」


 再び桜田は顎に手を当てて思考を巡らせ始める。

 しばらく考えた後、結論を出した。


「そうか…他の方法か…帝国を国ごと滅ぼすとか、逆に帝国が全てを統一すれば戦争は終わるんだけどね…被害が少なく、現実的な手段で言うと…うん、君たちに2つの可能性を教えよう。」


 今度は二本の指を立てる。


「先ず、1つ目は『帝旗(ていき)』を破壊する事。『帝旗』とは、帝国で受け継がれる国宝の事だ。これによって、歴代皇帝は支配の能力を強力なものとし、国民を洗脳できるんだ。あれが破壊されれば、皇帝の支配は完全なモノでは無くなり、不満を持った君たちのような人たちが勝手に革命を起こすだろう。それによって多くの血が流れるだろうが、戦争は終わる可能性はあると思うよ。あくまで可能性に過ぎないがね。」


「『帝旗』は帝都の中心にある帝国城の玉座の間にあるあの旗ですね?私も何度か帝都に行った事がありますが、あそこに行くと陛下の事で頭がいっぱいになります。帝都を出ると正気に戻るのですが。」


「うんうん、帝都に行くと陛下の顔がずっと頭に浮かんで離れないんだよねー。それに、陛下の声を聞くと、何故か涙が出てくるほど感動しちゃうんだよねー。」


 帝都に行った経験を持つ2人の話を聞いて、それについて桜田が話す。


「それは彼の特別な能力を『帝旗』で広範囲に影響を与えているからだね。聞いた話だと革命派の面々も、帝都に入ったら最後、味方を簡単に売ってしまうらしいからね。君たちも気をつけた方がいいよ。」


「革命派…もしかしたら…お父さんも…ちょ、レムナ、今真剣な話してるからじっとしてて。」


 話している最中にもレムナはリシェルの小さな胸に顔を埋めていた。


「皇帝の能力とは一体何なのですか?」


 他者を洗脳する皇帝の能力について、ヴァルスが桜田に質問する。


「それは二つ目の質問かな?これで最後になってもいいなら答えるけど。」


「それは…いえ、やめておきます。」


 ヴァルスは質問をやめた。そして、セルタスが続きを聞く。


「なるほど、では2つ目は?」


「2つ目は皇帝を説得できる可能性を持つ人物を動かす事だ。俺が知っている人物を2人紹介しよう。

1人目は極道連合の盟主、鈴木将士。

2人目は『灰の街』の女王。

現状でこの2人が皇帝を説得できる可能性のある人間だよ。将士さんはちょっと怪しいけどね。」


 何かに気づいたリシェルが、抱きついたままのレムナに質問する。


「『灰の街』の女王って、まさか…」


「…うん、私たちのおかあさま…」


「それに俺の母親でもある。まぁ、誰も血は繋がって無いんだけどね。」


「極道連合の盟主…極道どもの親玉ですか…昔聞いた話では、とんでもなく強いと。」


「まぁね。あの人の強さは次元が違うよ。レムナを含めた帝国十傑が極道との戦争に参加しないのは、彼1人が動かない代わりに、10人全員が戦争に参加しない事を条約として結んでいるからだね。」


「…あの人はとにかく強い…私は何度も挑んだけど…いまだに勝てない…悔しい…慰めて」


 そう言ってレムナはリシェルをぬいぐるみのように抱きしめる。


「ちょ、強いって!苦しい!」


「あー、レムナ様ずるーい。私もリシェルちゃんとイチャイチャしたーい!」


 リシェルも必死に抵抗したが、力の強い2人からは逃げられずコアラのように抱きつかれてしまった。


「ハァハァ、2人とも見かけによらず力強すぎよ。もういいわ。勝手にしなさい。」


 諦めたリシェルは何事もなかったかのように座り直す。それを見て呆れたセルタスがため息を吐きながら聞く。


「はぁ…つまり、その鈴木と言う男を力づくで言うことを聞かせるのは不可能という事ですね。もう1人の女王という方は、いかがですか?リシェルくんと、レムナ様は知り合いのようですが。」


「私は会ってないから何も知らないわ。」


「…おかあさまは…ずっと寝てるから会えない…それに、説得するのは多分無理…」


「まるでお前みたいだな、リシェル。」


「うるさいわね。私は1日18時間が限界よ。それに、私は素直だから話はちゃんと聞くわよ。」


「18時間は十分バケモノだろ。にしても素直?俺の耳がおかしくなったのか…病院行かなきゃ…イタ!」


 リシェルは隣にいたヴァルスの頭を無言で叩く。


「やはり、交渉は難しそうですね。レムナ様の母親に会う機会があればダメ元で頼むとしましょうか。」


「そうですね。ところで、セルタスさんは何でそこまで俺に協力してくれるんですか?」


 それを聞いてセルタスは不機嫌そうに話し始める。


「くだらない事を聞かないでください。私は金の為にしか動きません。貴方を手伝えという、友人との約束を守っているだけです。既に大金をもらっているのでね。」


「あれー?隊長に友人なんていましたっけ?」


 セルタスが過去に浸っている時に、ンレナが口を挟む。


「ンレナくん、帰りは私が運転しますから、君はここから走って帰って来なさい。」


「冗談ですよー。隊長には私という親友がいるじゃないですかー。」


「貴女と親友になった覚えはありません。離れなさい。」


 懇願するように抱きついてきたンレナをセルタスは無慈悲に引き剥がす。


「これで答えになったかな?では、2つ目の質問を聞こうか。」


 戦争について聞きたい事を聞き終えたので、次にセルタスが口を開く。


「では、私から。複数の属性の能力を使える人間に心当たりは?」


「あるよ。何が知りたい?」


 桜田は、今度は即答した。


「彼の能力について、教えて欲しいんです。彼も複数の属性の能力を行使できます。それに、属性が不明な能力も。」


 そう言われたヴァルスは左手で電撃を発動しながら右手の人差し指を光らせる。それを桜田は興味深そうに見つめていた。そして、驚愕の表情を見せながらヴァルスに問いかける。


「これは驚いた。まさかこの世界にまだいたなんて。いや、君はどう見ても男だ…君、実は女だったり、性転換手術を受けたり、心臓を移植した経験は?」


「何言ってるんですか。俺は生まれた時から男です。心臓は…元々あったのが潰されて、2つ目?の心臓が動いてるそうです。」


 それを聞いたリシェルが横から口を挟む。


「貴方、頭大丈夫?普通の人間に心臓が2つもあるわけないじゃない。」


「いや、俺だって信じられないけど、本当にあるんだって。ですよね、セルタスさん。」


「ええ、私も体内の写真を見せていただきましたから、おそらく間違いないでしょう。」


 その言葉に桜田は驚愕する。


「心臓が2つ!?それに男なのに()属性を…あははは!」


 何かを理解した桜田はいきなり笑い始める。


「いやぁ、すまない。僕も直接会ったのは100年ぶりでね。間違いなく、君が今回の『特異点』だね。中々情報が上がってこないと思ってたよ。やっと見つけた!」


 意味不明な単語に4人は疑問の表情を浮かべる。


「何ですか、その『特異点』って。」


「ん?知らないのか。そうだねぇ、この世界では100年に一度、世界の法則を逸脱したバグの様な存在が生まれてくるんだ。前回の周期とその異常な能力の事を考えて、君がその『特異点』だって分かったって事。」


「…おかあさまと一緒…」


「レムナ何か言った?」


 2人を無視してセルタスが質問を問いかける。


「『特異点』については分かりました。能力についてもう少し詳しく教えて頂けませんか?」


「うん、いいよ。彼の属性は間属性(かんぞくせい)。200年前の『魔女戦争』については知ってるかな?彼女たが持っていた特別な能力である事から『魔女の血筋』とも呼ぶ学者もいるかな。その能力は、無属性を除く4属性の能力を使える事と、間属性固有の能力が使える。固有の能力ってのは、君がさっき見せてくれた指のヤツだね。白は空間を操る能力だ。空間を抉り取ったり、空間転移などが主な能力かな。君はまだまだ出力が低いけど、心臓が動き始めたなら、身体に特質が馴染み始めるからね。最近、波動量が一気に増えた気がしない?」


「確かに、この右手の指の能力も、最初は30秒が限界でしたが、今では3分程度できます。」


「この程度の出力で3分か…あの人がおかしいとは言え、波動の総量が少なすぎるね。もっと訓練をするといい。そうすれば、右手全体で使う事もできるようになると思うよ。」


 自分の属性を理解したヴァルスは驚きの表情を浮かべる。


「間属性ですか…なんで俺なんかにそんな能力が…」


「残念ながら『特異点』が発生する条件は全く分かっていない。分かっている事は、東西で1人づつ生まれる事と、必ず男と女1人づつである事くらいかな。つまり、東側にも君と同じ『特異点』の女がいるって事。」


「間属性が一般的にこの世界で浸透していないのは何故ですか?」


「それは単純に数が少ないからだよ。少ないどころか、おそらくヴァルスくんを除けばこの世界で1人しかいないと思うよ。」


「何故、そんなに数が少ないのですか?」


「理由は2つある。

 1つ目は200年前の『魔女戦争』で数が激減した事。戦争に参加しなかった間属性の女性たちも、戦争後に魔女だと言われて大多数が処刑されてしまったからね。

 2つ目は、単純に生まれにくいんだ。通常の遺伝と違って間属性は、母親が間属性かつ、父親が王属性である場合の女児にしか遺伝しない。女児だとしても、遺伝する確率はおよそ5分の1。つまり、放っておいても滅びてしまう欠陥属性なんだ。まぁ、父親が王属性の中でも超特殊血統である「真なる王(ロイヤル)の場合、男ならロイヤル、女なら間属性が確実に産まれてくるんだけど、ロイヤル自体も圧倒的に数が少ないからあまり意味はないんだけどね。」


 それを聞いたセルタスは、ニヤリと笑う。


「なるほど…強力な属性であるが故に、非常に希少だと…ふふふふ、これは思わぬ拾い物をしました…」


 そう言ってセルタスはヴァルスの方を見ながら、笑みを浮かべる。


「ヴァルスくん、君は私にいくつも借りがありますね?これからも私の下僕…コホン、部下としてよろしくお願いしますね。」


「は、はい。それはもちろんです…」


「貴方、すごい人だったのね。私の目を見ても嫌悪しなかったのはそれが関係しているのかしら?」


「『特異点』は世界のバグだからね。互いを嫌悪するという世界のルールからも逸脱しているのでしょうね。それにしても、男の間属性の遺伝子を持った子供はどうなるんだろうか…非常に気になるね。ヴァルスくん、子供が産まれたら是非紹介してくれ。」


「はぁ…そんな日が来るとは思えませんが、分かりました。」


「ありがとう、これで俺の話は以上でだ。満足していただけたかな?」

非常に情報量が多い2話でしたので、まとめます。


上院

第三席 皇帝 ケーリオンノイン

第四席 極道の盟主 鈴木

第六席 情報屋 桜田


特異点

100年に一度誕生するバグ。東西で男女が一人づつ、今回はヴァルスと香夜。


真なる(ロイヤル)

王属性の特殊血統。ロイヤルの子供で男にしか受け継がれない。(確率は2分の1)

他者を支配、洗脳する能力を持つ。


間属性 『魔女の血筋』

他の属性とは一線を画した強さをほこるチート属性。その代わりに、遺伝させるのが非常に難しい属性で、女にしか受け継がれない属性。全ての属性の能力と、空間を支配する能力を行使できる。(白)


レムナの家族について

お母様(母親) 灰の街の女王 (いつも寝ている)

桜田(長男) 共和国の情報屋 (共和国の裏のトップ)

雷葉(長女) 灰の街の管理者代理

凛花(次女) 鈴木の妻

レムナ(三女) 帝国十傑

血の繋がりがあるのは雷葉、凛花、レムナの三つ子の3人だけ。実はもう少し複雑ですが、現時点ではこれだけです。レムナは帝国にいるのでカタカナ表記ですが、本名は神山玲無奈です。



特質とは、心臓から巡る波動に肉体が晒される事で少しずつ進化していくものです。ヴァルスは元の心臓を潰されるまでは、無属性の波動しか流れていなかったので特質がありませんでしたが、間属性の波動が流れ始めた今では、少しづつ特質が発現し始めています。

 香夜には発動条件不明の洗脳能力と、本来の王属性の能力が、ヴァルスには器と王属性の能力があります。


間属性(白)の特質は、波動総量と出力が通常の10倍以上に増える事です。


この作品の能力はチェスをオマージュしているので、やっと最強のコマであるクイーンを出せました。最初は無属性→ポーン、器属性→ナイトという読み方にしようと思いましたが、なぜかやめました。

さて、[間]属性と言う事で、白は[空間]を操る能力でした。とすると黒は…

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