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3 沈黙(白)

 ヴァルスは将軍の部屋に向かう道中で、1人の男に声をかけられた。


「よう、ヴァルス。さっき隊長殿がすごい速さで走って行ったけど、なんかあったのか?」


 声をかけてきた男の名前は、ナルキ・ジュバン。ヴァルスの先輩であり、同じ部隊のメンバーだ。


「あの人、また将軍閣下との約束忘れてて、それで急いでたって話です。」


「ウチの隊長殿にも困ったもんだな。あんなに強くて美しいのにポンコツなんだからな。」


「全く、いつも大変なんですよ。昔から、朝は全然起きないし、すぐに部屋の物を壊すし、俺が忘れ物を何回届けたことか。」


 今はいないリミエルの事を、2人で笑いながら話していた。


「……聞いていたぞ、お前たち。よほど死にたいらしいな。」


 2人の背後から急に声をかけたリミエルの顔は微笑んでいるようで、目が全く笑っていなかった。


「た、た、隊長。将軍とのお話は終わったんで、ですかますか?」


 ナルキは恐怖で振り向く事すら出来ない中で、意味不明な敬語を使いながらその一言を絞り出した。


「ああ。そんな事より、今から2人とも私が直々に稽古をつけてやろう。もちろん真剣でな。」


 そう言って、剣を抜こうと腰に手を当てるがリミエルの剣はヴァルスが持っているため何の感触もない。


「私の剣は……少しここで待て、逃げたら殺す。」


 疑問に感じたリミエルは、少し黙って考えると思い出したかのように少し顔を赤らめてこう言った。その直後とんでもないスピードで先ほどの稽古場の所に走って行ってしまった。


「ここにあるんだけどなぁ。」


「はぁ、殺されるかと思った。ヤベェよ、今のうちに逃げようぜ。」


「そうですね、早く逃げないと追いつかれてしまいます。」


 その後、普通にリミエルに捕まった2人は、一日中ボコボコにされた。



ーー少し前ーー


 将軍の部屋では、2人の男がテーブルを挟んでソファで座っていた。1人は白髪で髭を生やし、貫禄たっぷりで葉巻を吸っていた。もう1人は、30代前半と思しき見た目でどこか妖しい瞳の男だった。


「閣下、いよいよですね。」


「そうだな。今回こそは奴らを叩き潰して、セントラ地域を我がモノとしたいものだ。」


「それにしても、リミ…レトローム隊長の部隊を先鋒にするとは意外でした。いくら彼女が強いと言っても、少し戦力的に厳しいのではと思いますが。」


「それも計算の内だ。ヤツの部隊を単独で最初にぶつけ、敵を削った後で本命の軍を一気に送り込んで制圧するという戦法だ。あの女は強さだけは本物だからな。敵の幹部も何人かは始末してくれるだろう。」


「…しかしそれでは、彼女の部隊は危ういのでは?」


「まぁそうなるな。あわよくば、敵の大将まで始末してくれれば良いが、ヤツに生きて帰られると俺の立場が危うい。この戦いは皇帝陛下直々の勅命だからな。派手な戦果を上げればヤツが将軍へ昇格ということもあり得る。それだけは避けねばならん。」


「…なるほど、流石は閣下です。では、後続の部隊の指揮官は私がという事ですね。お任せ下さい。敵を殲滅し、その功績を全て閣下のものとしましょう。」


「そうだな、頼んだぞ。それと、もしあの女が生きていたら、裏でコッソリ始末しておいてくれ。」


「…それは追加料金でお願いしますね。」


「ああ、分かった。」



部屋を出て将軍と別れた後、若い方の男は1人ごちる。


「さて、どうなることやら。まさかあの程度の戦力で柏木組を落とせると本気で思っているのでしょうかね。あの男もここで終わりですかね。…おっと、」


そう言って男はどこかへ向かって歩いて行った。


 普段と変わらない日常の裏で、黒い陰謀が渦巻いていた。

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