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2 姉弟(白)

「はあぁぁ!」


 稽古場で、木刀を打ち合う音が響き渡る。打ち合うと言っても、男の攻撃を女が一方的に受けているだけである。


「ふんっ!こんなものか!」


「クッソォ!」


 男の攻撃は全て完璧に女にいなされ、女の顔には余裕が滲む。


 しばらく打ち合った後、女が攻撃を弾いて横薙ぎを放つ。


「はぁっ!」


「うぉっ!」


 女の凄まじい速さに男は全く対応できず、その一撃が腹に直撃し膝をついた。


「グハッ!…クソ〜やっぱり勝てないか。」


「まだまだだな。」


 腹を押さえながら悔しがる男の名前はヴァルス・アラムド。

 そして、笑みを浮かべながら、膝をつくヴァルスに手を差し伸べる女の名前はリミエル・レトローム。




 ヴァルス・アラムドは孤児だった。物心つく前に両親は戦争で死んだそうだ。その後、見知らぬ男に拾われて孤児院で育てられた。だから両親の顔も名前も知らない。でも逆にそのおかげで誰かを恨んだらという事は全くなかった。顔も知らない両親がどうやって死んだか、誰に殺されたかなど、孤児院で育ったヴァルスにとってはどうでも良かったのだ。

 そんなヴァルスを孤児院から引き取ったのが、目の前にあるリミエルだった。本当の家族の愛を知らないヴァルスは、共に生活する中で彼女を姉のように慕っていた。リミエルも家族を失っており、共に生活するヴァルスを本当の弟のように接していた。

 リミエル・レトロームは軍人である。西側の大陸の中央部に位置する大国、ソメイ帝国の東軍に所属している。そんなリミエルはその才能と弛まぬ努力によって、若くして『沈黙の剣姫』の名で知られる、帝国最速の剣士になった。その二つ名は音をも置き去りにするほどの剣の速さを『沈黙』と表現し、細い剣で美しく戦場を舞う姿から『剣姫』と名付けられた。若くして戦場で武功を上げ続けた事で、今では第三軍の軍隊長を任されるにまで至った。

 そんな彼女に憧れたヴァルスは1年前に東軍に入隊し、今も彼女の部隊に所属している。


()()()は速すぎるんだよ。リアルに残像が見えてる。」


「何度も言わせるな、皆のいる場所ではそう呼ぶな。隊長と呼べ。」


 そう言ってリミエルは木刀で軽くヴァルスの頭を叩く。

 共に生活する中で、ヴァルスはリミエルをリミ姉(りみねえ)と呼び、外でもたまに素が出てしまう。


「まぁ、いいでしょ。今は2人きりなんだしさ。…あれ、何か忘れてるような…」


 ヴァルスが突然、思い出したかのように問いかける。


「あっ!そうだ!リミ姉、確か今日は将軍閣下に呼ばれてるんだろ?行かなくていいの?」


「ん?何を言って……はっ!も、もちろん行く。時間は...うっ!早く行かねば。こ、これは決して忘れていたわけではないからな!!勘違いするなよ!」


 絶対忘れてたな、と内心で思いながらもヴァルスは温かい目を向ける。


「うんうん、分かってるって。そんな事より早く行きな。また怒られちゃうよ?」


「おい、何故私が以前も怒られた事を知っている!!誰から聞いた!!」


「あっ、適当に言ったら本当に当たっちゃった…えぇっと…何と言うか…イデッ!」


 リミエルは顔を真っ赤にしながら照れ隠しでヴァルスの頭を木刀で叩く。


「私を揶揄うのもいい加減にしろ!!後でキツく説教してやる…って、こんな事をしている場合ではない!!早く行かねば!!」


 リミエルはそのまま走り出して行ってしまった。そのスピードは先ほどの横薙ぎよりも速く見えた。


「イテテ…全く、すぐに暴力を振るのは辞めてほしいなぁ…にしても、将軍殿に怒られなきゃいいけど…ん?」


 休憩しようとベンチに腰掛けた時に、違和感に気づいた。そこにはヴァルスの剣と、リミエルの剣が置いてあった。


「リミ姉、自分の剣を忘れてってるじゃん。はぁ〜めんどくさいけど、届けに行くか。」


 ヴァルスはため息を吐きながら、自分の剣とリミエルの剣を手に取り、リミエルの後を追って将軍の部屋に向かった。

しばらくは(白)が続きます。

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