表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/64

1 閃光(白)

 屋敷の中を閃光が駆け抜ける。純白の鎧を身に纏った1人の軍人が、待ち構えていた男たちを次々に斬り捨てながら屋敷の廊下を進んでいく。鎧には所々に血が付いているが、全て敵の返り血であり本人の血は一つもない。


「親父はやらせねぇぞ、帝国の犬が。」


 最奥の部屋の前に待ち構える男は、今までの敵とは明らかに別格のオーラを放っていた。

 一度立ち止まり、正眼に剣を構え臨戦態勢を取る軍人と、分厚いナイフを構える男。


 軍人は一つ息を吐いてから凄まじいスピードの踏み込みで袈裟斬りを放つ。

 男もギリギリで反応してナイフで受け、鍔迫り合いになった。そして、男がナイフに力を入れると片手にも関わらず軍人の剣は弾かれた。

 そのまま懐に入り込んだ男が突きを繰り出すが、軍人はバックステップでかわす。

 男に隙ができたことで、軍人は[縮地]の要領で再び距離を詰めて唐竹割りを放つ。

 その凄まじいスピードに、今度は男も完全に反応できずに、なんとか身を捻るも左目が斬られてしまった。

 男は痛みに耐えながら下がって体勢を立て直そうとするが、目の前に敵の姿は無かった。

 軍人は視界を失った男の左側の懐に潜り込み、渾身の突きを放つ。


 その瞬間、軍人の細い剣によって男は心臓を貫かれ、そのまま仰向けに倒れた。


「…山下の親父、すみません...ゴフッ」


 致命傷を受け死を待つのみとなった男は、最後に恩人である組長への謝罪を繰り返し、死亡した。


 軍人はその死体に軽く手を合わせて、誰にも聞こえない声で


「すまない」


と一言告げて目的の部屋に向かった。

 更なる返り血を浴び、紅く染められた鎧を軽く拭って部屋の扉を開ける。

 そこに居たのは豪華な椅子に腰掛ける高齢の男だった。


「俺のかわいい息子達は死んだか。俺の為によく頑張ってくれたな。すまん、俺もすぐ行く。」


 そう言って立ち上がった男は、上着を脱いで後ろにかかっていた日本刀を取り、構えた。

 それに応えるように、軍人も剣を構える。


「待たせたな襲撃者。ワシはこの山下組の組長、山下正二だ!この首、取れるもんならとってみい!」


「…覚えておく。では、行くぞ」


軍人も男の覚悟に敬意を表して、小さく呟いた。


「うおぉ!」


 勝負は一瞬だった。軍人は決死の覚悟で突進してくる男の斬撃をかわし、カウンターの横薙ぎで男の胸を切り裂いた。それは致命傷となり、男は力なく倒れる。


「ゴフッ!…かや...しあ…わせに...」


 胸を斬られ死を待つのみとなった男は血を吐きながら、最期にそう言い残し死んだ。


 軍人はその男の最期の言葉を聞いて再び小さく手を合わせた。


 

 仕事を終えた軍人は死体で溢れる屋敷を歩く。だが、閃光のように走り抜けてきた廊下も、帰りはその足取りが重い。

 その道中、ある部屋の中から物音が聞こえたので、立ち止まった。

 生き残りを警戒しながら部屋の中に入ると部屋の隅で小さくなって隠れている女の子を見つけた。血塗れの鎧を着たこちらに気づいた女の子は、その恐怖のあまり気絶してしまった。その際に、女の子が大事に抱えていた物を落とした。それは先ほど殺した高齢の男と、女の子が写っている写真だった。

 その写真を拾い上げ少し眺めると、倒れている女の子の近くに丁寧に置いた。


「すまない。」


 消え入りそうな声で、軍人は女の子に声をかけ部屋を後にした。



 屋敷を出ると、雨が降っていた。雨が血を洗い流し、純白の鎧が姿を表す。そして懐から携帯を取り出して、電話をかける。


「リミエルです。任務完了しました。」


相手の反応を待たずして、一方的に電話を切った。


「あと何人殺せば戦争を終わらせられる…」


 その声は雨音に掻き消され誰にも聞かれることは無かった。

 軍人は帰り道で、雨と血で濡れた兜を取った。すると中から出てきたのは長い金髪で、整った顔立ちの凛として美しい女性だった。

 本作品の戦闘シーンはこのように激しいアクションを言葉で表現します。文字だけでは想像が難しいと思いますので、何となくで読んでいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ