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白と黒の特異点〜互いの家族を殺した2人が出会うまで〜  作者: 福岡へむ
第一章 二人と二人
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E 襲撃(黒)

「おお〜我が女神よ。こんな所におわすとは、私はこの地球上で一番の幸せものです!」


「げっ、道草の兄貴。」


 香夜が出勤の為に家を出ようとした時、道草と遭遇した。


「こんなところで会うとは、偶然とは恐ろしいものですな。我らが始祖様に感謝せねば。」


「いや、ここ私の部屋の前なんだけど、絶対待ち伏せしてたよね?いつからいたの?」


 非常に広い敷地を持つ柏木組本部には、組員が宿泊する施設があり、若い組員はそこで生活している。香夜も入門してからは田淵と離れて、そこで生活している。道草は朝早くから香夜の部屋の前で待ち伏せしていたのだ。


「そんな事はどうでも良いではありませんか。事務所に行かれるのでしょう?ご一緒させていただきましょう。」


「はぁー。分かりましたよ。でもこれ以上話しかけないでくださいね。鬱陶しいので。」


 朝からテンションの高い道草を鬱陶しく思った香夜は辛辣に返す。


「なんと辛辣な!でもそれがいいんです。やはりあなたはとてもお可愛い。」


 道草の言葉を無視しながら事務所に向かった。

 少し歩いて事務所へ到着した。


「はい、事務所まで来ました。それじゃあ、さようなら。」


「いえいえ、私も今日はここで仕事ですからね。ご一緒させていただきますよ。」


「えぇ…めんどくさ…」


 とはいえ、兄貴分である道草を追い出すワケにもいかないので香夜は仕方なく事務作業を始めた。


 道草からの時折来る奇妙な質問に答えながらしばらく仕事をしていると、突然凄まじい警報が鳴り響く。それは、敵襲を知らせる緊急の警報だった。初めてだった香夜は動揺を隠せない様子だったが、道草は落ち着き払っていた。


「む!?ようやく来ましたか帝国軍。女神よ、一度中で待機しましょう。指示を待ちます。」


「まさか…はい、分かりました。」


 いつもはふざけている道草だが、敵襲と聞いて表情は硬くなる。2人は急いで事務所内のソファに腰掛け、いつでも動けるように指示を待つ。周りでは事務員たちや若い組員が走り回っており、皆が混乱していた。

 少しすると敷地全ての館内放送が鳴り響く。


「西からの敵襲あり。現在、周辺組織が交戦中。A区画とE区画にいる組員は即座に援軍に行け。指揮は柴田と岸に任せる。B、C、D区画の組員は本部の防衛だ。情報が入り次第また連絡する。幹部陣は各々その場の組員の指揮をとれ。武運を祈る!」


 最低限の情報と指示だけ伝えて放送は終わった。それだけ本部も混乱しているのだろう。

 D区画にいた香夜と道草は本部の防衛が任務となった。


「道草!香夜!!」


 放送が終わると同時に田淵が2人に駆け寄ってきた。


「2人ともここにいてよかった。…聞いたな、敵襲だ。俺は正門近くのA区画へ行く、道草は裏門のE区画だ。香夜は…E区画の本部屋敷でカシラの護衛だ。」


 幹部である田淵は即座に2人に命令を下す。


「了解ですぞ。」


「待って田淵の兄貴!!…いや、おじちゃん!」


 しかし、香夜は納得がいっていない様子だった。


「護衛って…おじちゃん、私もおじちゃんと戦うよ!そっちの人数も全然足りてないでしょ?それに、もしかしたらアイツもいるかもしれないし、とにかく私も正門に行く!」


 香夜の必死の訴えを聞いた田淵は少し考えた後、答えを出す。


「香夜…はっきり言ってお前は足手まといだ。乱戦の経験がないお前は正門に来ても邪魔なだけだ。俺の言う通りに従え。」


 駄々をこねる香夜に対して田淵は真剣な表情で答えた。これには、香夜を危険な目に遭わせたくないという私情も入っていた。


「ワタシも同意しますぞ。それに、カシラの護衛は非常に重要な任務ですぞ。頼みますよ女神。」


 道草も田淵の優しさを察して香夜を諭す。


「でも、でも!!アイツは私が!!」


 それでも香夜は引き下がらない。


「香夜、これは命令だ。兄貴分である俺たちの命令が聞けないなら、約束通りお前は破門だ。いいな?」


「うぅ…それは…」


 田淵は香夜が柏木組に入ると言い出した際に猛烈に反対した。父親を戦争によって失っている香夜に同じ道を辿ってほしくないと言う田淵の優しさだったが、頑固な香夜は一歩も引かなかった。そして結局は口の立つ香夜に言いくるめられる形で田淵が折れた。しかしその際に田淵は香夜と一つの約束をした。いざとなった時に自分の命令に従えないのなら、即座に極道を辞める事。香夜もそれに同意して極道になったのだ。

 田淵はこんな時に香夜が暴走する事を危惧してその約束をしたのだが、ここに来てやはりその心配が現実となった。だが約束を香夜が思い出した事によって、香夜はこれ以上何も言えなくなってしまった。そしてしばらく葛藤した後、結論を出す。


「……分かりました。カシラは必ずお守りします。」


 そう言って強く拳を握る香夜の姿を見て、田淵は香夜の頭を撫でる。


「安心しろ、ヤツがいたら俺が必ず殺る。お前の分もヤツに恨みを刻み込んで来てやる。だから、それを拝むまではお前も死ぬんじゃねえぞ。いいな?それじゃ道草、行くぞ。」


「はい!では女神よ、失礼致します。


 そう言って香夜はエントランスから出ていく2人の背中を見送った。そのまま香夜も急いで組長室があるE区画へ向かった。


 そうして運命の歯車は動き出した。

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