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B 不動(黒)

時系列は、(白)と(黒)でほぼ同時に進んでいます。

「やぁ!」


 稽古場で、木刀を打ち合う音が響き渡る。打ち合うと言っても、女の攻撃を男が一方的に受けているだけである。女の攻撃は全て完璧に男にいなされ、男の顔には余裕が滲む。

 意表を突かんと、女は手に持った木刀を投げつけたが、男は簡単に弾く。その隙に女は腹めがけて蹴りを放つ。少し驚いた男は腕を入れてガードしようとしたが、女は蹴りの軌道を変え回転する要領で、回し蹴りを放った。しかしこの攻撃も男はしゃがんで回避した。蹴り終わりの大きな隙を見逃す事なく、男は女の顔に木刀を寸止めで突きつけた。


「勝負ありだな。」


「もう〜また負けたー!やっぱりおじちゃんは強すぎるよー。」


「それにしても、最後のフェイントは良かったぞ。相手が俺じゃなきゃ入ってただろうな。ただ、あの蹴りの一撃で相手を倒さなきゃ、無防備になって終わりだからな。リスクはかなり大きいな。」


「そうだねー。咄嗟に思いついてやったからそこまで考えてなかった。」


「やはり、お前の格闘センスはすごいな。あと15年あれば俺にも勝てるだろうな。」


「15年かー…よし!頑張るぞー!!」


 山下香夜は7年前の山下組襲撃事件の後、病院で目覚めた。あまりにショックが大きくしばらくは1人で塞ぎ込んでいたが、毎日のように病院に訪れる田淵に心開くようになった。

 彼らのいた山下組は実質的に消滅してしまったため、近隣の最大組織である柏木組に吸収された。

 田淵孝雄は近隣では有名人だった。『不動』の田淵と呼ばれ、彼が潰した組織は数知れず、小規模組織であった山下組が生き残ってこれたのは、彼の影響も大きかった。

 近隣組織として柏木組とも面識があり、何度かスカウトもされていた。そう言ったわけで柏木組に入った田淵に追従して香夜も1年前に柏木組に入門した。


「それにしても最近は平和だね。西から攻めてくる事もないし、このままずっと戦いも無いんじゃ退屈だよ。」


「馬鹿野郎、平和が一番だろうが。俺だって戦わずに済むならそれが一番だ。…でもアイツらは違う。帝国の軍人は血に飢えた奴らばかりだ。いつか必ず攻めてくるぞ。だから、そん時に誰も死なせねぇように強くなるんだ。」


「そうだね。お父さんとみんなを殺したあの『純白の悪魔』は私が殺さなくちゃ…」


 『純白の悪魔』とは、7年前に山下組を壊滅させた帝国軍人の事であり、その純白の鎧の特徴から付けられた二つ名である。要注意人物として柏木組でも名前が知られている。

 香夜は稽古場の隅に置いた刀に目をやった。刀身に山下と刻まれたその刀は父親の形見であり、亡くなった父親から受け継いでいた。


「ああ、あいつは親父の仇だ。絶対に落とし前は取る。でもな香夜、親父はお前に敵討ちなんか望んで無いと思うぞ。」


「…分かってるよおじちゃん。でも今の私にはこれしか無いの。晴らさねば前に進めぬ恨みもあるってお父さんも言ってた。」


「そうだな。でも今のままじゃまだアイツには勝てないだろうからな。修行あるのみだな!」


「うん!もう一本お願いします!」



 2人の修行は夜まで続いた。2人はまだ知る由もないが、戦いの期限は刻々と近づいていた。

 本作はダブル主人公となります。どちらにも優劣なく話が進んでいきます。


 話の全体図として、チェスが題材となっています。

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