第18章 終わらぬ夜
嵐の夜、研究所の廊下は水気を帯びた冷気で満ちていた。
レイジ(48歳・探偵)とジョー(47歳・刑事)が備品室の扉を確かめているあいだ、相馬達也(25歳・実験補助スタッフ)は一歩遅れて後ろを歩いていた。
胸ポケットから覗く小さなメモ帳を指先で撫でながら、彼は落ち着かない目を左右に泳がせる。
「……やっぱり……遺体の位置、少し違ってた気がするんだよな……。あのままじゃ、ドアが閉まらないはずで……」
その声に、レイジが振り返ろうとした。
だが次の瞬間、背後の闇が音もなく動いた。
「えっ……だれっ……?」
相馬は振り向きざま、目を見開いた。
「ひっ、な、なんで……お前が⁉ うわぁぁぁ──!」
悲鳴は雷鳴にかき消され、同時に首筋へ鋭い痛みが走った。
相馬の手からメモ帳が滑り落ち、床に散らばった紙片を湿った風が揺らした。
倒れ込む彼の瞳は驚愕に見開かれたまま、やがて光を失っていった。
◇ ◇ ◇
駆け寄ったレイジとジョーが目にしたのは、虚ろに横たわる相馬の姿だった。
首筋には、赤い痕がくっきりと残っている。
「……やられたか」
レイジの低い声に、ジョーが奥歯を噛みしめる。
「くそっ……次は、俺たちかもしれねぇ」
雷鳴が再び轟き、闇はますます濃さを増していった。