第六話 描画顕現 その2
前話でスキルの使用が終わらなかったので、その2としました。
女神様からの紙切れを読み、僕は崩れ落ちた。
僕の異世界生活は、ここで終わ…るわけ無いよね!
筆がなくても鉛筆があるじゃないか!
色は塗れないけど。細かくできなくても、指で塗れるじゃないか!
今重要なのは何だ?そう!筆を描くことだ。
そんなに上手くなくても良い。絵がかけたらそれで良いんだから。
「さあ転生してからの1作目!『始まりの筆』、制作開始だ!」
まずは鉛筆で筆の持ち手の枠を描く。
そんなに複雑なもんでも無いから今回は下書きは無しだ。
そして、指で絵の具を混ぜて色を作る。あれ!?もう色できてる!
「流石はマジックカラーだ!作りたい色が勝手に作り出されるとはね。指じゃやりにくいから助かったよ。伊達に神託スキルの権能アイテムしてねえや。」
気を取り直して、持ち手に色を塗って、と。
指がグッチョグチョだな。水もないし、どうしたものか…。
お、あの権能、使えるんじゃないか?試してみる価値はある!
「手についた絵の具を消すことを考えて…『デリート』!」
やった!予想通りだ!今日の僕冴えてるぜ!
マジックカラーも消すことが可能なのか。顕現扱いなんだな、コレ。MP消費は1だった。
『デリート』の権能も使いながら、毛の部分をなんとか指でそれっぽく描くと…完成だ!
早かったな。まあシンプルにただの筆だからな。別に全然詰んでなかった。
「筆を使っていないにしては結構イケてんじゃないか?では早速…。いでよ『始まりの筆』!『物質顕現』!」
僕がそう言うと、キャンバスから筆が消滅した。
キャンバスから魔法陣が出て筆が生えてくるのか…!?なんて思ってたけどそんなことは起こらなかった。
キャンバスとかとは原理が違うのかもしれない。
「キャンバスから描いた筆が消えて…空中に虹色の渦が…!魔法じゃないとありえない光景だ。結構綺麗…か?めっちゃ派手にも見えるな。」
見た瞬間は魔法って感じの見た目に感動していたが、よく見ると主張が激しい見た目をしているのに気づき、ちょっと冷めてしまった。
いやね、我ながら冷たいとも思うけどね、あまりにもレインボウッ!って感じの絵の具の竜巻なんだもん。
めっちゃ派手で目立つんだよ、仕方ないよね。
と、やがて渦が消えると、そこには…やけにデカい筆があった。
「…。え?」
僕は、始めて顕現させた物体である、その筆を手に取った。
その筆は華奢な人の腕くらいの太さがあり、長さは、昔使った竹物差しよりも長いように感じる。
「なんで、なんで筆がこんな大きさなんだ?デカくない?めっちゃ重いし。両手で持つようなものだよね、コレ。」
なぜこんなことになったのか。僕はこの筆を作った経緯を思い出すことにした。
1.マジックキャンバス、マジックカラーをスキルで出した。
2.鉛筆、絵の具を駆使し、キャンバスに筆を描いた。
3.顕現させた。
こうだったよな。で、筆がこんなことになる要因は、2しかありえないそれしかない!
あの時僕は、指でもちゃんと細かくできるように、失敗しないように、筆をキャンバスの結構な面積を使って描いたよな。
で、この筆の大きさって…描いた筆と同じだな!
『描画顕現』は描いたままの大きさで顕現するのか!
普通に予想できたよな、過去の僕!
こんな簡単に想像できるようなミスをしてしまうとは、不覚!
よし、気を取り直そう。すぐに気持ちを切り替えられるのが僕の強みだ、多分。
前向きに考えるんだ。原寸大で描かないといけないことがわかったし、『デリート』はマジックカラーにも有効なことがわかったんだ。それで十分じゃないか!
ちなみに筆にMPは10使った。
キャンバスいっぱいの大きさにしたのが悪かったのかもしれない。ちょっと落ち込んだ。
「『始まりの筆』は…今のところは使い道が無いからしまっておこう。うん、出来は悪くないんだ。毛質も悪くないし!」
『始まりの筆』を『空間収納』にしまうと、僕はキャンバスに向き合った。マジックキャンバス、使い切りじゃなくて良かった!絵の具も見た所まだ残ってる。
「さて、ちゃんと普通に使える筆を描きますか!名前は…『仕切り直しの筆』でいいか。」
それから10分、僕は、今度は普通の大きさの筆を描くことに成功した。
女神様の言葉通りなら再度『サモン・カラーズ』をすることで筆を手に入れることはできただろうが、それはなんか…嫌だった。
だってなんか負けたみたいだもん!
ということで、僕は本気を出した。それはもう、全力だった。
筆にあんま関係ないとこにも力を入れた。例えばそう、持ち手のとこの、木目とか。
「やってやった!やってやったぞ!あとは顕現させるだけだ!『物質顕現』!…うおっ!」
なんだ!?さっき顕現させたときとは負担がまるで違う。MPは…まじかよ30減ってんじゃん!
それになにか、心無しか竜巻の自己主張が激しくなっている気がする。まさにパーーリィイ!って感じだ。やがて、渦が消えると、そこには理想的な形の筆ーー『仕切り直しの筆』が浮かんでいた。
ちなみになんやかんやあって残りMPは15である。筆しかできてないのに…。
何気にピンチだが、今はそんなことはどうでもいい!
「やった!成功だ!これで手がグチョグチョにならなくてすむ!ちゃんとできてるかな?見てみるとするか、『解析鑑定』!」
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名称:仕切り直しの筆
種類:絵筆
画力地:100/100
説明:異世界人が神託スキル『描画顕現』を使用して創造した筆。執念のようなものが感じられる。
プラスインフォメーション:無し
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うん、筆だな。画力値の比較対象が無いからよくわからんし。というか執念ってなんだよ!……まあいい。
そうだ、使ってない権能を使ってみるか。ちょうど欄があることだし、『プラスインフォメーション』を使おう。他のやつはまた今度だ。
「『仕切り直しの筆』に向かって、『プラスインフォメーション』!」
僕がそう力強く言うと、目の前にステータスプレートのようなものが現れた。
「えーっと、なになに?」
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対象:仕切り直しの筆
使用可能画力値:100/100
候補:高耐久化(10)、カラースプラッシュ(20)、水分凝固(30)、形状変化(40)、鋼化(50)
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最初のはともかく、絶対他のやつおかしいよね?これ筆だよ?鋼になったら意味ないし。
よくわかんないけど、これが普通の筆なわけない。それはわかった。
訂正
画緑値→画力値