第二十三話 襲撃
10/3、投稿した日よりもpv付いてる…WHY?
それはともかく900pv突破しました。ありがとうございます!
あれから4日後の、転生してから7日目である。
けたたましい緊迫感のある鐘の音が響いたのは、丁度僕らが『モーニングセット』ーーベーコンエッグとパンーーに舌鼓を打ち、食器を片していた頃、つまり、似つかわしくない朝っぱらだった。
「食後で悪いが、行くぞアーティ、これはかなりヤバい警報だ。それも、街の危機レベルのな。」
マジで??
呼び出しの意味があるという鐘の音により、街の冒険者がギルドで一同に会していた。
最近厄災級のバケモンと遭遇してるけどまさかソレじゃないよね?よね?
ギルマス開口!
「皆に集まってもらったのは他でもない、緊急事態だ。何らかの理由で、暴走した悪魔の光がこの街に向かっている。」
はい!そのマサカじゃーん。手ぇ出したのはどこの馬鹿だよ!たぶんもうお亡くなりでしょうけど。
だがそんな災害みたいなやつ、どうするというのだろうか?
「悪魔の光を討伐、もしくは無力化することは、残念ながら我々には不可能だろう。故に、苦しいことだが、アレーファを放棄し、避難する。我ら冒険者は、無力な民を一人でも多く生存させるため、殿を務める。」
「やはり…か。俺達にもっと力があれば…。」
「クソッ!この街は俺の生まれ故郷だってのに!」
「俺の冒険者人生もこれまでか。他人を護って死ねるっていうんなら悪くない死に方だぜ…。」
そこかしこから声が聞こえる。悲しみに暮れる者、運命に怒る者、逆境の中奮起するもの。このままではほぼ間違いなく死ぬというのに、諦めている者はいない。やはり誇り高き冒険者なのだろう。
だが、このまま終わらせる訳にはいかない。この街で過ごしてまだ一週間だが、僕はこの街に、この街の人達に救われた。他の街だったらここまで楽しく暮らせなかっただろうとすら感じる。
「ギルドマスター、ギルド長室へ。」
女神の使徒とも言えるこの僕がどうにかしなくては。
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「で、わざわざココに来たっつうことは、何か策があるんだな?」
「はい。確実ではありませんが、予想通りに上手くことを運べれば、街を守りきることも可能かと。知っての通り、僕の神託スキル『描画顕現』は、無限の可能性を秘めています。世界最強の存在を創り出すことだって、できるかもしれないのです。」
そう、僕は、あの厄災に対抗できる存在を創造する気でいる。だが、Sランク並の魔獣に匹敵する魔獣を創るとなると、どれほどの魔力を消費するかわからない。自分の絵の腕と想像力を疑う気はさらさらないが、まだこのスキルには謎が多い。どういう法則で消費MPを決めているのかもわからないのだ。例えば仕切り直しの筆だと30減り、描画狼の時は100ほど減った。今回はそれらよりも間違いなく格が上なので、そもそも今のMPで足りるのかも怪しい。まあそこは『ルッキング・チェンジ』でも対応するが。(あれから僕は、料理や生活道具を創造するのに忙しく、)
「なるほどな。よしわかった!お前さんに賭けてやるよ。何が必要なんだ?」
「ありがとうございます。では、そこそこ広く、人に見られない屋外の場所と、MPを補充できるものをお願いします。」
「あいわかった。MPならマナポーションを支給する。作業なら訓練場を使うといい。壁に囲まれていて上は空いているし、人払いをするのも楽だからな!」
「ありがとうございます!」
準備の準備は大方できた。街のために全力を尽くすとしますか!
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場所はギルドの訓練場。いるのは僕だけ、一人だ。イレルフのこともあるから、大きさを変えられるスキルを付けることができる可能性は高いが、そうはいっても手のひらサイズにするわけにはいかない。よって、ある程度大きくする必要があるーーそれも、今までで最大の大きさに。
「出よ、大いなる礎!ジャイアントサモン・キャンバス!」
この呪文は、僕がレベル5になったときに『描画顕現』に追加されたものらしい。詳細を確認したらなんか増えてた。
眼の前に巨大な魔法陣が現れ、高級カーペットのような大きさのキャンバスが横たえられて出現する。これくらいあれば問題ないだろう。
「仕切り直しの筆」は、『形状変化』により書道パフォーマンスで使うような大きさになり、形は完全にハケだ。画材も用意した。スタミナ切れにならないように『ルッキング・チェンジ』により吸血鬼にもなっている。準備は万端だ。
「|天の陽光【ゴッドレイ】、『ホーリィ』制作開始だ!」
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「見えてきたぞ!悪魔の光だ!」
「アーティが作った置物通りだ、なんて禍々しく恐ろしいんだ…。」
場所はアレーファの街の門、時刻は夜。僕とドーガが出会った場所。冒険者と兵士達は初めて目にする本物の伝説的魔獣を前に、竦み上がっている。
「怯むな!我らが身を呈さねば、アレーファは滅びると思え!」
「敵を倒すんじゃない!民が逃げる時間を稼ぐんだ!」
檄を飛ばすのは門番のドーガと兵士長のライオスだ。二人ともここを死地と定め、守り切る気でいる。
「敵は上空っ!伝承によると、暴走状態のヤツは、視界に入った生命体、生命体の居そうな所に容赦なく襲いかかるという!我らで食い止めるぞ!」
勇敢な戦士達の先頭に立つのは我らがギルマス、ダルゲインさんだ。彼には戦いの余波が街に届かないように皆を指示してもらうようお願いしてある。
そして僕は今、門の上の、兵士がいつも居る場所に、一人でいる。顔をイケメン吸血鬼に変えた上でローブを着てフェイスヴェールとベネチアンマスクを付けて。紛うことなく変人である。
これはみんなに納得してもらうため!僕のこれからの人生を!尊厳を守るための措置なのである!断じて趣味ではない!DA・NN・JI・TE・DA!
それはもちろんこれから放つ口上も同様であぁぁぁぁ⤴るrrrrrぅ!
塀に足を掛け叫ぶ!
「我が名はシャッラール!女神様に神獣を授けられし存在にしてッ!アレーファの危機に馳せ参じし勇者であぁぁルゥゥゥッ!出よ!神獣ホーリィィィ!」
仮の僕の印象を変な方向に吹き飛ばすことで、正体をバレないようにするための策である。心臓が持ちそうにないがそれはどうでもいいとして、
背後から現れるは純白の神獣。神々しく光り輝く巨大な身体に、天使の羽を思わせる翡翠色の模様を輝かせる翼の如き胸鰭。聖槍のように輝く鋭い尾を持つその魔獣は|天の陽光【ゴッドレイ】、『ホーリィ』。僕が先程描き上げた新しい従魔だ。
これほど悠々と登場しているが、誕生したときはかなり可哀想なことになっていた。
まず、イレルフの時にもあったように、やはり野生状態だったので敵対状態だったのだが、そのときはスキル・魔法が『聖属性魔法』しか無かったのだ。陸に上がってきたマンタって感じだった。端的に言えば、敵対しながらビチビチしていた。あと息ができてなかった。闇の方は不死者だから大丈夫だったのだろう。
魔力がごっそり200ほど持っていかれてしんどかったが、すぐに獣魔化し、『水陸両用』のスキルを付けてやった。危なかった。
で、肝心の能力だが
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名前:ホーリィ
種族:|天の陽光【ゴッドレイ】
地位:アーティの相棒
Lv.1
MP:800/800
体力:250(750)
筋力:100(300)
守備:150(450)
魔力:350(1050)
器用:2
俊敏:150(450)
知力:60
画力値:610/1200
スキル:発光、飛行、水陸両用、サイズチェンジ、身体強化、速度強化、超過駆動、部分鋼化
魔法:聖属性魔法
装備:無し
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というように、イレルフを超えるチートっぷりである。かっこの中の数値は、『サイズチェンジ』により、最大の三倍の大きさになった時の数値であり、現在の数値でもある。イレルフの『拡大縮小』のように魔法のサイズだけを変える、みたいなことはできないが、ステータスが変わるという点で違いがある。というかこっちの方が普通だよな。イレルフ意味わからん。
異彩を放つ超過駆動というスキルは、画力値を消費して、一定時間ステータスを上げるというスキルだ。これを使うのは本当にやばいとき。まあ相手は災厄急の魔獣なので、多分今だ。倒せそうになかったら指示を出す。
で、我が格好についての弁解をさせて頂くのだが、着ているのは、
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名称:正体隠匿のローブ
種類:法衣
画力値:0/160
防御力:120
説明:異世界人が神託スキル『描画顕現』を使用して創造した、フェイスヴェールとベネチアンマスク付きのローブ。その法衣は着用者の正体を決して晒さない。
プラスインフォメーション:高耐久化、防御力上昇(強)、形状自動調整、隠匿
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で、顔を変えたのは、声帯ごと変えて、声でバレないようにするためである。弁解終わり!
「誰だ!」
「なんだあの奇妙な口上とアタマのおかしい格好は!」
「イタイ、心が (以下略)」
ヒドイ!異議は無い!
「我が名はシャッラール!汝らを助けに参った者だ!我らが彼の魔獣を打ち倒してやろうぞ!征けホーリィ!」
「キュルァァ!」
僕の指示と共に、ホーリィは空を泳ぎ、一直線に飛び出す。進行方向にはもちろん暴走する悪魔の光だ。そして放つは聖なる光線。聖属性魔法『ホーリーレイ』だ。光は一直線に光速で突き進み、瘴気の塊にぶち当たった。
「ギシャァァァッ!」
これだけ離れているというのに、絶叫が空に大きく響いたのが聞こえる。どうやら進行速度も上がったようだ。ホーリィを同格の敵と見定めたらしいな。
「これが開戦の狼煙だ!アレーファの街を守り抜くぞォ!」
今夜、光の鱏と闇の鱏の闘いが始まる…!
一応感覚で決めてるものではありますが、ホーリィの残存画力値にミスがあったので修正しました。2025/10/6