第十九話 初めての冒険者の仕事
600pv突破、感謝でございます!
「第五話 描画顕現」の話の、『ルッキング・チェンジ』の説明を変更しました。今話中に説明も出してるので、読み返して貰わなくても構いません!
冒険者に登録した僕達は、何か依頼を受ける事にした。僕がFランクでイレルフがBランクで、それぞれのランクの上下1ランクの間での依頼を受けることができる。つまり、AランクからGランクの依頼全てを選ぶことができるのだ。Sランクの依頼なんて滅多にないそうだから、要するにオールオッケーと言う訳だ。
僕が掲示板を見ていると、指名手配犯の手配書が貼ってあるのを見つけた。貴族を暗殺した狼人族の男やら、実験と称して一街滅ぼしたダークエルフやら、物騒な輩もいるもんである。おや?この顔には見覚えがあるぞ?村々で女子供を中心に虐殺して回ったゴブリン…?『始まりの筆』で倒したアイツじゃねえか!
ビリっと手配書を剥がし報告所に向かう。
「あのー、すみません。」
「どうしましたか?ここは依頼を達成したことを報告する場所ですよ?貴方は確か先程登録なされたばかりだとおもうのですが…。」
「実はおそらくこの依頼、もう達成してるんですよね。」
「確認しますね…殺人ゴブリンの手配書ですか、何か証明できるものはあるでしょうか?」
「はい。この街に来る前に襲われまして、返り討ちにしたのが『空間収納』に…。」
「なるほど、ここではマズいでしょうから、こちらに参りましょう。」
そうして僕は、職員に連れられて教会の方に進んだ。女神様の話によると、教会の神父が『審判』とのことなので、恐らくソレだろう。
「すみませーん神父様ー手配書の報告だそうですーっ」
軽っ
「おやおや、そうですか。貴方が報告者ですね、ここに貴方だけが来て、咎人の姿が見えないということは、そういうことなのでしょう。私のスキルで確認しましょう。」
職員が軽い感じで呼びかけると、教会の奥の方から、好々爺然とし、豊かな白髭を蓄えた、白いローブを着た老齢の男性がゆっくりと進んできた。
「おや、黒髪のお方とは珍しい。初めましての方ですね?私はカラル・ワードルと申します。」
「初めまして、僕はアーティと申します。」
「ホッホッホ。礼儀正しい方ですなぁ」
「カラルさんは女神様に認められたすごい御方なんですよぉ。」
へぇ、世界の名前「ワードルド」に似ていると思ったら、そういうことなのね。
「じゃあ『空間収納』から出しますね。」
そう言って、僕は殺人ゴブリンの死体を取り出した。
「見た目は、手配書の通りですね。」
「確認してみましょう。『審判』。」
カラルさんは、ゴブリンの少し上の方を、見て、悲痛な表情をして頷いている。おそらく罪の情報を見ているのだろう。
「ふむ、この者が咎人で間違いないようです。殺人に強姦、暴行に強盗ですか。嘆かわしい…。」
「これで依頼達成ですね、ありがとうございました。」
これで、僕の最初の依頼が完了したのだった…
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これで終わるとでも思ったか!初めての依頼が死体の報告だけなんか嫌だ!報酬は結構良くて金貨3枚だったけど!
ということで受けたのがこちら!「憑きの羽熊の討伐兼採取」だ。憑きの羽熊とは、Dランクの魔物の羽熊の死体に悪霊が憑いた魔物で、ランクはCランクだそう。最近件の魔物による被害が多発しているらしいので、それによる討伐依頼だ。何故採取も付いているかというと、悪霊がつくことにより不死化すると、牙や爪が毒を帯び、薬や毒の材料になるから、だそう。
夜中の草原に出没するそうなので、今のうちに準備をしておこうと思う。とりあえずドーガの家に戻ることにする。
さあやってきました、ドーガハウス!本日試す権能はこちら!『ルッキング・チェンジ』!
なんやかんや残るのはコレと『リペア』だけになったので、丁度いいと思ったのだ。というか、イレルフは強いが僕自身が驚くほどに弱いので、どうにか戦力、というか身を守れるようにならなければならないのだ。
画材を取り出して実験を開始するとする。対象はザッツソウ少量だ。ちなみに僕は何故かMPの回復が結構早いようなので、バンバン使っても意外と問題無い。
ちなみに『ルッキング・チェンジ』の説明はこんな感じ。
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ルッキング・チェンジ⋯物、生物の見た目を描いたものに特性ごと置き換える。「解除」と念じて唱えると、元に戻すことができ、1度使用した「化けの皮」は何度でも呼び出すことが可能。
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特筆することもなく、僕は普通に釘を描いた。そして、ザッツソウ目掛け、能力を発動させる。
「『ルッキング・チェンジ』!」
僕がそう言うやいなや、カッと光が爆ぜ、後には数本の釘が残っていた。
「感触と強度は、釘に相違無い。見た目も問題無いようだ。大きさは、僕が思った通りになっているな。」
4本あった長さのまちまちな長さの草は、一つも違わず同じ大きさの釘と化している。『物質顕現』と異なるのは、魔力消費が少ない、サイズが自由、ということだろう。実際、これらの釘のサイズは僕が描いたものよりも遥かに小さい。他にも違いが無いか、細かく見てみるとしよう。
「『解析鑑定』」
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名称:ザッツソウ
種類:釘
元の種類:植物
画力値:30/30
攻撃力:20
説明:異世界人が神託スキル『描画顕現』の『ルッキング・チェンジ』を使用して、ザッツソウを変化させて創造した釘。鉄製。
プラスインフォメーション:無し
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普通に創造するよりは画力値が低いが、一応プラスインフォメーションは使えるらしい。何より、物の本質を変える、ということが確認できたのが収穫だ。
「えーっと?念じて唱えたら戻せるんだな?釘のうちの1本に、『解除』」
今度は光を発さずに、塗料が溶け出すかのように1本の釘が溶け、後には1本の草が残った。つまり、一度『解除』を発動しても、全てが解除される訳では無い、ということ。範囲指定できる、ということはこんなこともできるかもしれない。説明の通り、一度使用したものは再び使用できるらしく、使おうとするとプレートが出てきた。詠唱する時に名称を付けたらいいらしい。
「『ルッキング・チェンジ:釘』」
僕はこの権能を、自分の肉体ーー左腕に使用した。そして、左腕が先程のように輝き出したかと思うと、僕の左手があった場所には、腕と置き換わるかのようにして巨大な釘がくっついていた。ただし、金槌を打ち付ける平らな部分は関節のように丸くなっており、腕として釘を動かすことができるようになっていた。このスキル、ある程度の条件下なら思ったとおりに色々できるらしい。左腕と置き換わること、動かせること、腕がもげないこと。これらを思ってやったのが実現した、ということだろう。
僕が釘の腕を動かしたり、ザッツソウを突き刺したりして遊んでいると、イレルフがすっごい狼狽えていることに気が付いた。
「どうしたんだ?イレルフ。」
「どうしたもこうしたもありません!どうしたのですかその腕は!本当に大丈夫なのですか!?完全に金属になっていますし、ご主人の腕力では危険ですよ!」
「ん?あれ?そういえば…。」
この腕は釘だ、それも鉄製の。しかもこの大きさときた。僕は今肩の関節で直接長い鉄の塊を振り回しているに等しい。普段の僕なら、普通に肩が外れているはずだ。
「確かに不自然だ。見てみよう、『解析鑑定』」
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名前:アーティ
顕現種族:改造人間「鉄」
顕現種族効果:筋力+100、守備(左腕)+100、俊敏1割減、左腕鉄槍化(刺突攻撃力80)
元の種族:人族
地位:絵師、転生者、冒険者
Lv.3(10)
MP:100/120
体力:12
筋力:15→115
守備:12→12(左腕112)
魔力:43
器用:120→121
俊敏:7→6
知力:25
装備:無し
スキル:言語理解、空間収納、ステータスオープン、解析鑑定、描画顕現
空間収納:マジック キャンバス(中)、マジックカラー、仕切り直しの筆、異世界の服、始まりの筆、ジャイアントライノの角…
魔法:無し
使役魔獣:描画魔狼 (イレルフ)
プラスインフォメーション:無し
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……おっと?これはやばいぞ?
我は宿題に追われているというのに…!なぜ今更新を!
皆様はこのようにならぬよう、お気を付けください!