表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/22

第一五話 食べ物

ちょっと久しぶりです。

ーー女神様にこの世界に転生させてもらったんだーー


これは、僕がドーガに言った言葉だ。信用できる、ほとんど直感でそう思った僕は、ドーガに正体を明かしたのだ。


「そうかそうか、俺の耳がおかしくなったんだろうな。で、なんだって?」


あれぇ?ドーガがめっちゃ汗だくになってるな。


「おかしくなんかなってないよ。向こうで死んで、女神様に会って、この世界にやってきたんだ。」


あ、ドーガが吹っ切れたようなイイ笑顔をしている。厳ついおっちゃんのイイ笑顔、これはなんとなく胡散臭い。


「そうか、そうなのか。俺はとんでもない秘密を共有しちまったようだな。だが、俺に相談したのは正解だったぜ?」


「やっぱとんでもない厄ネタだよね、コレ。で、なんでドーガに相談したのが正解なんだ?」


「お前さん、女神教のことは知っているかい?」


「ああ、今日の昼頃、女神様に神託で教えてもらったよ。その名の通り女神様を信じていて、争いを好まない教義なんだよな?」


「おう。その認識で間違いない。だが、神託まで授かったのか、ますます正解だぜ。アーティ、お前はこれからどうしたいんだ?」


「これからか。そうだな、各地を旅をして、異世界生活を満喫したいところだな。」


「じゃあ、女神教の神父なんかに、お前の素性がバレたらどうなると思う?」


「ええと、僕は女神様と直接会っていて、神託も授かっているよな。あと、『神託スキル』ももらってるから…」

「『神託スキル』までもらったのか、すげえな。バレたら女神様の使徒ってことで教会で祭り上げられるだろうよ。そうなりゃおめぇ、気ままに旅なんかできねえってこった。」


「なるほど、確かにちょっと考えてみりゃわかることだな。」


「だろ?まあ俺はただのしがない門番だからな。そんなことはしないさ。」


「それはありがたい。せっかくの異世界なんだ。満足行くまで冒険しないと損だってもんだからな。」


「羨ましい話だぜ。俺も長期休暇が取れたらついて行ってやってもいいぜ?」


「ハハ、その時はよろしくな。さて、次はさっきも言った『神託スキル』のこt…」


スキルについて話そうとしたら、僕の腹が盛大に音を立てた。


「お?なんだアーティ。もしかして今日なんも食ってねえんじゃねえだろうな。兵士も冒険者も身体が資本。食わなきゃ命に関わるんだぞ。」


「実は、そのとおり何も食べていないんだ。転生したのがだだっ広い草原だったから、何もなかったんだよ。」


「そうか、それは気の毒だな‥。今から夕飯の支度でもしようと思うんだが、一緒に食うか?」


「ああ、そうしようかな。すごい助か…いや、まてよ?この機会に、僕の『神託スキル』を見せて説明してもいいか?」


あれから時間も経ったし、何個かなら食事を描いて出すくらい問題ないだろう。


「スキルの説明?まあ遅くならないならいいぞ。」


「合点承知だ。じゃあ始めるぞ。」


そう言って僕は、『空間収納』から、マジックキャンバス、マジックカラー、マジックヒッセン、仕切り直しの筆を取り出した。


「これは…絵を描くための道具か?『空間収納』ならもう知っているんだが。」


「ノンノン、これからが説明なんだよ、ドーガ。僕が授かった『神託スキル』は『描画顕現』。これに描いたものを現実とする能力だ。これから僕は、僕の世界の料理を描いてみようと思うんだけど、なにか希望はある?」


「国が国なら王に一生監禁されるやつだな。あ、この国の王は聡明な(かた)だから大丈夫だと思うぞ。リクエストは…そうだな、肉料理がいいな。」


「そっかぁ。なあ、ここってどんな調味料があるんだ?」


「塩と香草くらいだな。金持ちになったら胡椒なんかも使えるそうだが、普通の門番に手が出せるはずがない。他はよく知らないな。」


どうやらここにはあまり調味料が無いらしい。それなら、味が濃いもののインパクトは強いだろう。


「じゃあ、肉のステーキにしようか。」

「ステーキ?わざわざスキルで作らなくても、ボアやブルの肉でも、ただ焼いたらできるだろう?」

「いやいや、僕の予想では、この世界ではあまり味わえないであろうモノにするつもりなんだ。」


会話的に、ドーガが食べているステーキは、きっと塩をかけて焼いたくらいのものだろう。だが、僕の描画顕現なら…!あと、ついでにあの権能も試してみるとしよう。


「時間が惜しいな。『地球のステーキ』作成開始だ!」


ドーガに部屋の隅を貸してもらったので、そこで作業をする。

まずは鉄板を描く。普通だったら上に乗っているものから描くだろうが、『マジックカラー』は割とどうにでもなる。まるでデジタルのイラストアプリでレイヤーを重ねているかのように、塗ってある色を混ぜるか混ぜないかは、自分の意志で変えられる。故に、鉄板を先に描いても、後に描くステーキに影響しないのだ。

そして、何故そこまでして鉄板を単体で描くか。それは、画力値が重要となってくるこのスキル、たとえ鉄板でも細かく描写することで、モノとしての格が上がるのではないか、と考えたのだ。質のいい鉄板ならドーガにあげても良いだろうしね。


鉄板を描き終わったら、メインとなる肉を描く。大の大人でも足りるように、巨大なやつだ。僕的には、良いステーキと言えば分厚くて赤い部分が残っているレアというイメージがあるので、それを描いていく。そして、乗せるのは胡椒とバターだ。本当に乗っているのはあまり見たことがないが、何故かそういうイメージがある。胡椒をわざわざ描くのは、胡椒をちゃんと反映させるのが目的だ。


「よし、できたぞ!」

「これがお前が言うステーキ…?何か乗ってるように見えるんだが。」

「大丈夫!ちゃんと旨いさ…多分。よし、我がスキルとくと見よ、『物質顕現』!」


僕が権能の名を唱えると、テーブルの上に七色の渦が現れた。

渦が消え、そこには湯気を上げ、香ばしい匂いと音を立てるステーキが1皿あった。


「なんだと!?何も無いところから絵に描いたままのステーキが現れやがった!」


実は、温度大丈夫かな、とか、『物質顕現』で大丈夫なのかな、とか思ったが、見た感じ大丈夫そうだ。が…


「一応確認しておくとするか、『解析鑑定』」


僕の目の前に青い電子板のようなものが現れると同時、ドーガがブツブツ言い始めた。。


「『解析鑑定』?『鑑定』関係のスキルなら持っている者もそこそこいるが、『解析鑑定』は聞いたことがないぞ?」


おそらく食事後に質問攻めに合うだろう。だが、今はステーキだ。


ーーーーーーーーーーー

名称:地球のステーキ

種類:肉

画力値:110/110

説明:異世界人が神託スキル『描画顕現』を使用して創造したステーキ。胡椒やバターなどの、この世界では貴重なものが多く使われている。十分店で勝負できる味をしている。

プラスインフォメーション:無し

ーーーーーーーーーーー


今の僕がそこそこ丁寧に描いたら画力値は100前後になるのかもしれないな。


「どれどれ、一応見ておこう。ステーキに向かって、『プラスインフォメーション』」


ーーーーーーーーーーー

対象:地球のステーキ

使用可能画力値:110/110

候補:防腐(10)、毒化(30)、筋力一時増強(40)、鋼化(50)

ーーーーーーーーーーー


毎度のように『鋼化』があるのはいいとして、間の2つがやばいな。デバフとバフをかけられるようになるとは、流石チートスキルだ。まあよっぽどのことがないと『毒化』は使わないだろうが。

僕が色々考えていると、ドーガが話しかけてきた。


「なあアーティ、次のやつは作らねえのか?コレを目の前に待たされるのはかなりキツイんだが。」


「ああ、作るよ。だが、上手く行けば一瞬で用意できるぞ。」


新しく描かずにステーキを創造する方法、それは、僕がまだつかっていなかったとある権能にある。

その名も『コピー・アンド・ペースト』だ。説明によると、魔力を消費して、画力値を下げた複製物を創造する権能だという。


「さあやってみるぞ。ステーキに向かって、『コピー・アンド・ペースト』!」


僕が権能の名を言うと、『地球のステーキ』を『物質顕現』させた時と同じくらいの魔力を消費し、今あるステーキの隣に、もう1枚ステーキが現れた。


「偽物だったらまずいからな。『解析鑑定』」


ーーーーーーーーーーー

名称:複・地球のステーキ

種類:肉

画力値:70/70

説明:異世界人が神託スキル『描画顕現』を使用して創造したステーキ…を複製したもの。胡椒やバターなどの、この世界では貴重なものが多く使われている。十分店で勝負できる味をしている。

プラスインフォメーション:無し

ーーーーーーーーーーー


名前に「複」が付き、画力値が110から70に下がったらしい。人間の数分は揃ったが


「コレで3個目になっちまうが、コレが成功すれば、永久食糧も夢じゃない!『コピー・アンド・ペースト』!」


僕は、『地球のステーキ』に向かって、再度権能を発動させた。

結果は上々で、『複・地球のステーキ』と全く同じモノが出来上がった。

こっそり味見をしてみると、オリジナルも複製も味は同じだったので、オリジナルを残して複製し続ければよいだろう。


「さて、僕とドーガの分ができたな。そろそろ食べ…あ、イレルフもステーキ食べるのか?」


ずっとドーガと話していたから、うっかりイレルフの存在を忘れていた。そこで僕は、ステーキを机に並べながら背中の方に居るイレルフに聞いた。すると予想もしなかった返答が(・・・)帰ってきたのだ(・・・・・・・)


「はい、ぜひともお願い申し上げます。我が主人よ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ