第十一話 描画狼と進化
今、僕の目の前には、歯を剝いてうなる狼ーー描画狼がいる。僕、親なんだけど?
「なにが起こっているのかはわからんが、とりあえず『解析鑑定』!」
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名前:無し
種族:描画狼
地位:野生
Lv.1
画力値:600/600
説明:異世界人が神託スキル『描画顕現』を使用して創造したこの世界に本来存在しない狼。どう成長するかは作者次第。
プラスインフォメーション:無し
装備:無し
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画力値600とは、とんでもないな。
というか、そうか。僕は、「従魔」を生み出したんじゃ無い。「魔獣」を生み出したんだ。敵対していても当たり前か。
だが、僕には『プラスインフォメーション』がある!きっとなんとかなるはずだ!
うおっ!とびかかってきた!
「描画狼に向かって、『プラスインフォメーション』!」
すると、狼は動きを止め、僕の目の前には青白いプレートが現れた。
『プラスインフォメーション』は、言わば体の情報を書き換える行為だ。何かしらあっても不思議ではない。
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対象:描画狼
使用可能画力値:600/600
候補:従魔化(100)、威圧(10)、色彩変化(30)、身体強化(40)、拡大縮小(50)、色素吸収(70)、色素魔法(70)、部分鋼化(100)
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こいつはすごいな。ちょいちょい描画に関係ありそうな能力があるのも、描画狼だからだろう。
というか、鋼化は何にでも出てくるんだな。
『鋼化』と『部分鋼化』はおそらく違うのだろうが…。
画力値がやけに余るが、まだ使い道はあるのだろうか?とりあえず全部つけよう。思った通り『従魔化』もあるようだしな。
選択が終わると、描画狼の表情からは棘が抜け、僕の前におすわりの姿勢で大人しくしている。なんか可愛いな。
「落ち着いた、ようだな?一応見ておくか。『解析鑑定』」
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名前:無し
種族:描画狼
地位:アーティの相棒
Lv.1
MP:100/100
体力:50
筋力:73
守備:43
魔力:85
器用:15
俊敏:129
知力:40
画力値:130/600
スキル:威圧、色彩変化、身体強化、拡大縮小、色素吸収、部分鋼化
魔法:色素魔法
装備:無し
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レベル1とは思えないステータス…。流石存在しない魔物だ。
しっかし本当に相棒になってるな。ステータスも見れるようだし。
プラスインフォメーションが分けて表示されてるな、へー、『部分鋼化』があっても変化は見られないな。普通のスキルと同じなのかもしれない。
ん!?僕よりも知力が高い!僕が馬鹿だってのか?いや、こいつが賢いんだろう。にしても…
「お前、名前が無いのか?」
「ワフ。」
「ブフッ、『ワフ』って鳴くんだな。犬みたいだ。よぉしよし。じゃあお前に名前を付けてやろうじゃないか。女神様もああ言ってたわけだからな。」
さて、どうしようか。せっかくだからカッコいい名前にしてやりたいが、呼びにくいのはダメだな。
うーん、狼はウルフ、ヴォルフって言うよな。あとは、虹、レインボーか?んー…
あ!思いついたぞ!
「お前の名前は、『イレルフ』でどうだ?レインボーとウルフから取ったんだ。なかなか悪くないとは思うんだが…。」
「ワフ!ワフ!」
「おおそうか!それで良いか!よし、お前は今から『イレルフ』だ!」
僕がそう宣言すると、狼=イレルフが光輝き始めた。何事か!と思ったがその光は危険なものではないと、そう思った。
光が収まると、そこには2メートルくらいになった七色の狼がいた。
僕は今、イレルフに乗って爆走中だ。
何があったかと言うと、まず、イレルフは名付けにより進化したらしい。
進化したイレルフのステータスはこんな感じだ。
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名前:イレルフ
種族:描画魔狼
地位:アーティの相棒
Lv.1
MP:100/100→300/300
体力:50→100
筋力:73→147
守備:43→81
魔力:85→218
器用:17
俊敏:129→250
知力:43
画力値:130/600→430/900
スキル:威圧→覇気、色彩変化→変幻自在、身体強化、拡大縮小、色素吸収、部分鋼化→部分鋼武器化
魔法:色素魔法
装備:イレルフの鞍(防御力100)
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なんで序盤っからこんなチート従魔を連れてるんだろう。
どうやらイレルフは描画狼から描画魔狼に進化したらしい。ステータスもヤバいくらい上がってるし、スキルもめっちゃ強化されてる。
どうやら画力値も増えたらしい。画力値って画力の値だよな?増えて良いの?と思ったが気にしないことにする。
あと、しれっと付けている『イレルフの鞍』はあの後イレルフに乗るために創った物だ。
乗れれば良いかなーと思ってサラッと描いたら『防御力増加』と『落下防止』の能力が付いたので、ありがたくそれを使っている。
これがあるからこそ、こんな速さでも僕はふっ飛ばされたりしないのだ。
で、何をしているのかと言うと、街、もしくは村、それでも無いなら小屋を探している。
もう太陽が沈みかかっているのだ。野宿なんかしたくないから、早く見つけないといけない。
幸い、イレルフにビビっているのか運が良いのか、魔獣には遭遇していない。
まあ魔獣どころか何も無いというのが真相だが。
「ワフ!」
お、イレルフがなんか言ってるな。
「どうかしたのか?」
「ワフ!」
イレルフは前を向けと言っているようだ。すまんすまん、よそ見しちゃってね…ん?
「あれは!街だ!」
イレルフが指し示した方、そこには、この世界で初めて見る街、街の外壁が見えていた。