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第十話 『生物顕現』

これからは、多くとも1日に1話にすることにします。

200pv行きました!ありがとうございます。こんな初心者が描いたものでも、暇つぶしになっていれば幸いです。

 さて、困ったことになった。

 女神様が言うには、僕は弱いと。

 それもそこらへんの子供よりも。


 確かに、考えてみるとそうだ。

 子供とはいえ、この世界で逞しく育っているのだ。

 外で駆け回ったり木に登ったりして遊んでいるだろうし、親の農作業を手伝ったり、歳によっては冒険者になって魔獣を狩ったりもしてもいるだろう。


 それに引き換え、僕はどうだ?


 高校生のときは、運動能力はクラスで中の下くらい。それからほとんど運動なんかしてないから、退化もしているだろう。

 画材を持って外に出ることはあったかそれだけだ。

 この26年間、筆しか握って来なかったんだ。子供に負けるのも納得だ。


 しかし、このままじゃまずいな。絶対すぐ死んじまうな。

 さっきの戦闘?もまぐれだろうからな…。魔獣でも探してみるか?

 でも、大声を出して強い魔獣を呼び寄せるのは嫌だからな…どうしたものか。


 周りを見渡しても何もいない。だからと言って、当てもなく歩き回るわけには行かない…。

 あ!『描画顕現』に『生物顕現』があったじゃないか!


 女神様の話的に、この世界には従魔の概念がある。つまり、動物を手なづけていても問題は無いはずだ。

 仮に手懐けられなくても、『デリート』すれば良いんだからな。あんまりしたくはないけど。


「そうと決まれば善は急げだ!周囲の様子を探ってもらうのだから、知能はあった方がいいし、足も速いほうが良い。そうだな…狼あたりがいいだろう。種族の名前は…、良し決めた!『描画狼(びょうがろう)』制作開始!」


 僕は、『空間収納』に仕舞っていたマジックキャンバスとマジックカラー、そして『仕切り直しの筆』を取り出し、制作に取り掛かろうとした。

 だが、僕はとある問題に気付く。


「キャンバス、小さいよな、コレ。狼ってもっとでかいもんな…。キャンバスデカく召喚できないかな?もうちょい大きいやつが出てくることを想像して…、『サモン・キャンバス』!」


 最初の時よりなんか多く持ってかれた気がする。成功して何か変わったのだろうか?


「お、魔法陣が出てきたな。おお、成功だ!狼がちゃんと描けるくらいの大きさだ!スキルって意外と自由が利くんだな。後で色々試してみるか。」


 キャンバスも準備できた所で、気を取り直して、今度こそ制作開始だ!


 狼を確実に顕現させるために、狼の横姿を描くことにする。


 狼の大きさは、このキャンバスをいっぱいに使うくらいだ。つまり、だいたい1.5メートル。デカい犬って感じだな。


 できるだけ強く、そして、自分しか従えていない特別な存在になってほしいので、顔は凛々しく、そして、体の色は…虹色だ。

 描画狼の名に相応しく、たくさんの絵の具が混ざったような色にする。


 めっちゃ目立つが、『描画顕現』には『プラスインフォメーション』がある。

 ここまであからさまな見た目にしたら、きっと望みの能力も出てくるはずだ。

 画力値が結構いるかもしれないし、できたら相棒にしたいので、時間がかかっても今できる最高のクオリティに仕上げよう。


 まずは鉛筆であたりを付けて、狼の形を作り上げていく。

 イラストレーターの仕事の中では動物を描くというのはよくあることだったから、なるべく質を上げられるように生き物の構造は良く覚えるようにしている。インプットもアウトプットも良くしていたから、狼の形をとるくらい、造作もないことなのだ。


 問題があるとすれば、毛並みを表現すると同時に色を前述の通り虹色にしなければならない。

 だが!20年以上絵を描き続けてきた僕はへこたれないィィィッ!


 絶対に世界一の狼にしてやるからな!


 ーーーーーーーーーーー


「ふぅ、こんなものかな。」


 どれだけ時間が経ったのだろう。さっきまで太陽は天頂にあったはずなのにもう夕日が見えている。絵を描いていると没頭して周りが見えなくなるよな…。

 まあそれはそれとして、僕の渾身の狼が完成したのだ!

 迫力のある凛々しい佇まいに表情。そして、毒々しいと言うより美しいと言える空に顕現する七色の橋のように鮮やかな毛並み!

 まさに最高傑作と言えるだろう。


 だが、途中で問題も起きた。

 始めた頃には気付かなかったが、絵の具を使い始めて気付いたのだ。そういえば筆洗(ひっせん)が無い、と。

 筆を描いている時は、余裕が無かったからか気にもとめなかったが、筆洗が無いのはまずい。(キャンバスを使っているが、この絵の具は油絵の具ではなく、水彩だと思う。気軽に描くなら水彩の方が慣れているので、僕が好む水彩絵の具になっているのかもしれない。)

 いちいち『デリート』を使っていると、MPが持たないのだ。


 そこで僕は、使っていないもう一方のキャンバスで、筆洗を描くことにした。

 色は、そのときたまたま付けていた、黄色だ。虹色の中でも、薄い色を先に使う気だったのだ。

 筆洗なら、一色でもそこまで関係ないし、多少色が混ざってもそこまで違和感も無いだろう。

 ということで、そこまで時間をかけずに、リアルな筆洗を書き上げ、『物質顕現』で創り出した。

 名前はキャンバスや絵の具に習い『マジック・ヒッセン』だ。『プラスインフォメーション』を使った後の筆洗はこんな感じだ。


 ーーーーーーーーーーー

 名称:マジック・ヒッセン

 種類:器

 画力値:5/80

 説明:異世界人が神託スキル『描画顕現』を使用して創造した筆洗。無限に水が湧き出る神秘の魔道具と化した。

 プラスインフォメーション:水操作、無限給水

 ーーーーーーーーーーー


 この世界で、無限に水が湧き出るのがどれほどの価値を持つのかは知らないが、便利なのに間違いは無い。

『水操作』は、水を思い通りに動かす他に水を消すこともできる。汚れた水も消せるってわけだ。

 ちなみに、また『鋼化』があった。『サモン・キャンバス』で考えるに、スキルは使い手の意志に左右されるのかもしれない。

 僕はなんでもかんでも鋼の像にしたいのだろうか…、あ、昔金属で立体アートを作るのに憧れてたな。それかもしれない。


 と、まあそんなこともあり、狼を描き上げたというわけだ。サッと描いた筆洗で、画力値が80もあったんだ。200くらい行っても不思議じゃないよな。


「よぉし、ようやく完成したんだ。絶対に僕の相棒になってもらうんだからな!『生物顕現』!ぐおぉ!?」


 僕のMPがごっそりと無くなった感覚があり、空中には今までで最も大きく迫力のある虹色の球が浮かんでいた。


「はぁ、はぁ。ここまで来ると、荘厳、だな。」


 やがて、球が霧散するように消えると、そこには、こちらを睨む(・・・・・・)七色の狼が佇んでいた。


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