表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/58

23.現実逃避

 急に何を言ってるんだこの子は……。


 とても朝っぱらから玄関先でしていい話じゃない。


「と、とりあえず中で話そうよ」


 彩人が家の中に招き入れると涼風ちゃんは何も言わずにローファーを脱ぎ、まっすぐリビングの方まで歩いていった。


 リビングまで招き入れるつもりは、なかったんだけどなあ……。


 長いため息を吐きながらスニーカーの紐緩めていると、リビングから涼風ちゃんの話し声。


 誰かと電話してる……?


 重い足取りでリビングに向かい、聞き耳を立てる。


「一年B組の安達です……はい……体調不良で欠席します…」


 おいおい嘘だろ……。



 体調不良だったのかよ……!



 どうりでいつもと雰囲気が違うわけだ。


 現実から逃げるように踵を返す。


「はい……はい……失礼します……」


 仕方ない、帰りにコンビニでスポーツドリンクとゼリーでも買ってきてやるか。


 それじゃあ、お大事に……。



「彩人くん、どこ行くの……?」



 背後からナイフを突き立てるような冷たく鋭い声。


 うんまあ、そりゃさすがに無理だよね。


「私じゃダメってこと……?」


 涼風ちゃんの声が震えている。


 このままでは本物のナイフを突き立てられるのも時間の問題だ。


 困ったなあ……。


 今日は金曜日、涼風ちゃんと一緒に休んでしまえば、次の川澄さんと繋がりを持てないまま、月曜日までの三日間を無駄にしてしまう。


 遅刻でも早退でもなんでもいいが、出席だけはしておきたい。


 でも大丈夫、こんな時はこの顔面に頼ればいい、適当なことを言ってキスでもすれば、大抵のことはどうにかなる。


 安易な考えのように思えるが、実際それで十六年間どうにかなってきた。


「不安にさせてごめんね、帰ったら涼風ちゃんの好きなこと、全部してあげるから」


 いつもの優しい笑顔を作って、涼風ちゃんを抱きしめる。


「行っちゃうの……?」


「早退して昼には帰ってくるよ、お昼ご飯は涼風ちゃんの好きなものなんでも作ってあげるから、一緒に食べよ」


 目を合わせると涼風ちゃんの表情が少し柔らかくなっていたので、すかさずポケットから取り出した家の鍵を握らせる。


「だから少しの間だけ、お留守番お願いしてもいい?」


「うん……わかった……」


 すっかり涼風ちゃんは甘えた幼い声で喋るようになった。



 はい、俺の勝ち。



 キスするまでもなかったな、まあでもせっかくだし参加賞ぐらいはくれてやるか。


「ありがと、じゃあいってくるね」


 涼風ちゃんの前髪をそっと分け、丸いおでこにキスをする。


 こんな短時間のうちに、いってらっしゃいのキスと、いってきますのキス、両方をする人間はそうそういないだろう。


「あ、そうだ涼風ちゃん」


「なに……?」


 いや、わざわざ言わなくても、普通そんなとこ見ないか……。


「えーっと、あれ」





「鍵、ちゃんと閉めるんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ