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19.優しい嘘

 高比良くん全然イメージと違ったな……。


 高比良くんがいたずらにキスをしたり冗談を言って笑ったりするなんて、今までなら想像することもできなかった。


 それだけ私がどうでもいい人間ってことなんだろうな……だからあんなことを平気で……。


 少し前まで好きだった人に乙女心をからかわれ、結奈の心は自分でも驚くほど深く傷ついていた。


 でもこれで吹っ切れた! 写真も消したことだし早く帰って優太くんに電話しよ!


 ファミレスから出た結奈が、優太くんのことを考えながら顔を上げたその時だった。



 え、なにあれ……嘘でしょ……?



 道路を挟んで向かい側の歩道に、今一番会いたい男の後ろ姿。



 優太……くん……?



 間違いない、あれは優太くんだ。


 そしてその隣には、同じ制服の女の子。


 二人は腕を組みながら親しげに会話をしていた。


 ど、どういうこと……隣の子は一体誰なの……?


 とっさに物陰に身を隠して、二人の様子を覗き見る。



 あれってもしかして……望愛ちゃん……?



 優太くんの腕に抱きついているのは、同じクラスの飯塚望愛だった。


 どうして……高比良くんのことあんなに好きだったのに……。


 見たことのない笑顔を見せる優太くんをぎろぎろと監視していると、今度は今一番会いたくない男に話しかけられる。


「あれぐらい許してあげなよ、どうせ飯塚さんが強引に誘ったんだって」


 ファミレスから出てきた高比良くんだ。


「なにもう出てきたの……? 高比良くんには関係ないでしょ、どっか行って……!」


「そんなに気になるなら電話で聞いてみたら? 優しい優太くんならこの状況のこと、正直に話してくれると思うけど?」


 性格の捻じ曲がった高比良くんのことなのでどうせ嫌味で言っているのだろうが、たしかに電話をすれば何があったのか確かめられるかもしれない。


 直接声をかけて状況を説明させる勇気もないので、何かの間違いであることを祈って優太くんに電話をかけた。


 すると、優太くんは思いのほかすぐに電話に出てくれた。


「もしもし……優太くん……?」


 よかった……出てはくれるんだ……。


 しかしその安堵も束の間のこと。


「結奈? ごめん今忙しくてさ、また後でにしてくれない?」


 優太くんの言葉が、心臓をキュッと締め付ける。


 こうなったらもう聞くしかない。



「優太くん……今なにしてるの……?」



 数秒、呼吸が止まる。


「あー、いやちょっと家族で外食しに行っててさ、まあ帰ったら連絡するよ」


 不器用なはずの優太くんは、私より何倍も自然に嘘を吐いた。


「そっか……楽しんで……」


「うん、じゃあね」



 優太くんは、電話を切るのも早かった。



 怒りの感情は微塵もない。


 あるのは深い悲しみだけ。


 私が悪いんだ……黙って一人で会いに行った私が……。


「さすが、優太くんは嘘も優しいんだね」


 涙ぐむ私を、高比良くんが口角を上げて見下ろしている。


「ねえ高比良くん……嬉しい……?」


 嫌味を言い返したわけではない、ただ純粋に気になったから聞いただけだ。


「なに言ってんだよ、嬉しいわけないだろ」


 高比良くんは笑いながら答えた。

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