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18.ごっこ遊び

「ドリンクバーだけでよかったの? アイス美味しいよ」


 騒がしいファミレスの店内で、高比良くんがバニラアイスを食べながら呑気に聞いてくる。


「そんなのどうでもいいから、写真消して!」


「キスの写真? 消しちゃうの?」


「消して! 私の目の前で!」


「しょうがないなぁ……ほら、自分で消したほうが安心でしょ」


 写真のアプリが開かれたスマホを手渡される。


 なんだ、思ったより話わかるじゃん。


 画面を確認すると、たくさんの料理の写真の中に私の顔が並んでいた。


 こうしてあらためて見てみると顔面の格差がひどすぎるな……早く消そ……。


 忌まわしきツーショットの写真を削除して、高比良くんにスマホを返す。


「ねぇ、一つ聞いていい? なんでこんなことしたの?」


「喜ぶと思ってさ、ほら岡野さん前まで俺のこと好きだったから」


 なぜそのことを!?


 い、いや待て……誰にも言ってないのにバレるわけがない……どうせかまをかけてるだけだ……。


「なに言ってんの? 私は昔からずっと優太くんのことが好きだったんだけど?」


「え、そうなの? みんな俺のこと好きだから勘違いしちゃった、あいつそんないい男なんだ」


 みんな俺のこと好きって……普通それ自分で言うかね? まあ、あながち間違いでもないんだろうけど……。


「優太くんは高比良くんと違って優しいからね! 私は内面を重視するタイプだから!」


「へえー、じゃあ結婚できる?」


「結婚!? そ、そんなのまだわかんないよ!」


 私まだ十五歳だよ?


「まあそうだよね、高一の恋愛なんて所詮ごっこ遊びだもんね」


「な、なにが言いたいの……!」


 すると突然、テーブルに置いていた手を握られた。



「恋愛ごっこするなら、俺よりいい男いないよ」



 高比良くんがいやらしく指を絡めてきたので、急いでテーブルの下に手を引っ込める。


「いい加減そういうのやめて!」


 どれだけからかったら気が済むの……人の心はおもちゃじゃないんだよ……?


「初めてがあんなやつでいいの?」


「急になんの話してんの!?」


「キスの話だよ、まだしてないでしょ?」


「キ、キスって、なんでそんなこと高比良くんが知ってるのよ!」


「ほっぺにキスしたぐらいで怒ってるからだよ、クォーターの俺からしたらあんなの挨拶なのに」


 クォーターだったの!?


 たしかにそれなら、この日本人離れしたスタイルと顔にも多少納得がいく。


「初めて知った……どこの国なの……?」


「わかるかな? シンジュクってとこなんだけど」


「日本じゃねぇか!」


 くだらない、少しでも信じた私がバカだった。


「もう付き合ってらんない、私帰るからドリンクバー代は払ってね、それでキスのことは許してあげるから」


「それはまたずいぶん良心的な値段だね、百倍払うからホテル行こうよ」



 この男、最低だ。



 高比良くんがこんな人だなんて知らなかった……早く帰ろ……。


「今帰ったら後悔すると思うよ」


 もう高比良くんの言葉に耳は貸さない。


 結奈は足を止めることなく、そのままファミレスを後にした。

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