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11.料理自慢

「はい、お待たせしました。グラタンは熱いから気をつけてね」


 銀の皿に盛られた料理が、湯気を立てながらテーブルに並んだ。


「わぁ、美味しそう! ねぇ彩人くん、写真撮っていい?」


「好きにしろよ」


「じゃあ遠慮なく」


 スマホを構えて、テーブルの上がうまく収まるような角度を探す。


「おい、俺は写すなよ」


「大丈夫、顔は見えてないから。じゃあ撮るねー」


 不機嫌そうな顔が入らないように、少し角度を下げてからシャッターを切った。


 めっちゃいい写真じゃん! 美味しそうな料理、そして左端でちらっと見切れる彩人くんの綺麗な手……。


 これだけでお腹いっぱいだよ!


「満足した?」


「うん! じゃあ食べよっか、いただきます!」


 香ばしい焦げ目ごとグラタンをすくい、軽く尖らせた唇で可愛らしく息を吹きかける。


 ちなみに彩人くんは一切見ていない。


「熱っ……んー! 美味しい!」


 わざとらしく目を見開いてアピールするが、彩人くんは黙々とエビピラフを食べるばかり。


「美味しいね! ね! 彩人くん美味しいね!」


 せっかく一緒に食べているのだから、せめて美味しさぐらいは共有してほしい。


「ん? あー、ごめんごめん。食事中に喋る習慣なくてさ。美味しいならよかったよ」


「そういえば、彩人くんが誰かとお昼食べてるところ、見たことないかも……」


 彩人くんは昼休み、いつも図書室で読書しているらしい。


 一度だけこっそりついていこうとしたとき、人殺しみたいな顔で睨まれたので、本当なのかは確かめられてないけど……。


「なんか、よその家庭の弁当見ると、気持ち悪くなるんだよね」


「えっ、なにそれ?」


 潔癖症みたいなこと?


「もしかして、人の握ったおにぎりとか食べられない?」


「うーん……食べたことないけど、まあ、そうかも」


 やっぱり潔癖症なんだ! まあ彩人くん清潔感すごいし、そこまで驚きはしないけど。


「じゃあ望愛が作ったお弁当なら、食べられるかな?」


「一番無理だわ、笑わせんな」


 彩人くんが鼻で笑う。


「なんでよ! 望愛、こう見えて結構料理上手なんだから! 卵焼きとかオムライスも得意だし!」


「やめてくれ……。頭の中にお前の料理のイメージが流れてくる。食事中なんだぞ」


 なんで食事中に料理の話をしちゃいけないの! 望愛が本当に料理できるってこと、ちゃんと教えてあげないと!


「そうだこれ見て! これ、望愛が作ったんだよ! 美味しそうでしょ!」


 スマホの写真フォルダから、自慢の手作りハンバーグの写真を見せた。


「へぇー……じゃあ、これは?」


 彩人くんもスマホを取り出して、画面をこちらに見せてきた。


「これ、この前作ったピザ」


「彩人くんも料理するんだ……。ん? この上に乗ってるのは何?」


「いちじく」


 いちじく!? 食べたことないけど、ピザに乗せて美味しいものなの!?


「ふ、ふーん……他には?」


「カレーとか、一時期ハマってたな。ほら、これとか」


 カレー! それなら望愛も作れる!


 ウキウキしながら画面を覗き込む。


「……なんかご飯、黄色くない? 変な葉っぱ入ってるよ?」


「キーマカレー好きなんだよね」


 彩人くんに手料理を振る舞うのは、まだまだ先のことになりそうだ。

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