4 アイーシャの護衛ちゃん
「メソっちってさぁ、なんでバイトしてんの?」
日曜日、2人は何をするでもなく街を歩いていた!
「妾はアイーシャじゃ。何を言っておるレイカ、前にも話したじゃろう。メソポタミアに戻るためじゃ、その旅費を稼いでおる」
「あー⋯⋯うん言ってたね。でも今メソポタミアに行っても2023年のメソポタミアに行くだけじゃない?メソっちのいた頃とは違うというか」
「んー⋯⋯難しい事はよくわからんのじゃ! そこに行けば何かあるじゃろ。妾の魔法がこんなにも弱くなってる理由も知りたいしな」
「テキトーだね、てかその魔法弱くなってたんだ」
「テキトーではないのじゃ。妾だって色々考えておる」
「えー、そうかな」
レイカはおもむろにスマホを取り出し、現在のメソポタミアの様子を見せてあげた。
「いやここどこじゃ? なんか縦にでっかい建物あるし。全然違うのじゃ」
「そりゃ何千年も経ってるからね」
「でも妾がいた時の建築物も負けてないのじゃ。でっかい神殿建てた事もあったぞ。まぁそれで国の金無駄遣いしたって事で民から反乱起こされたのじゃがな(笑)」
「いや(笑)じゃねぇし。反省しろ」
「ん?なんじゃと?」
「なんでもない。気にしないで」
「そ、そうか? いやあの時は大変じゃったぞ。妾の護衛1号が王宮に詰めかけた民を目の前にして失禁しよってな」
「何それかわいそう」
「ピエーーなんて泣き喚いて、妾を盾にしよったわ。そして気づいたら現代日本に⋯⋯あ、なんか思い出したら腹立ってきた。あいつぅ⋯⋯今どこで何をしてあるんじゃ」
「もう死んでるでしょ」
「いや意外と妾と同じで今の日本に転生しとるかも」
「いやないない。メソっちみたいなのは1人で十分だから」
「なんか棘のある言い方じゃな」
レイカは更に古代メソポタミアについて調べる。
「あー、メソっちの王国、その後滅亡してるわ」
「なっ⋯⋯! 何ゆえっ!」
レイカの手からスマホを奪うと、食いつくように読み始めた。
「なぬ! な、なぜじゃ!」
「なんか民衆によって打ち壊されたらしいよ」
「妾の作った神殿がー⋯⋯おわあぁぁぁ! なぜじゃ、何故それで王国自体が滅亡するのじゃ!」
更に記事を読み進める。
『アイーシャ王は、民衆の反乱を前に、召使に盾にされ死亡。その後王国は衰退し滅亡した』
「あいつのせいじゃねぇか!」
アイーシャはスマホを思いっきり叩いた。
「あっ、ちょっと。スマホ壊れちゃうよ」
「えぇい! 煩いのじゃ! 許せぬのじゃ! 成敗してやるのじゃ!」
「いやだからもう死んでるでしょその人」
「カンケーねぇーのじゃ! 大体妾はあわつの事が気に食わなかったのじゃ。いつもメソメソ泣いてやってからにぃ!」
「護衛なのに頼りがいねぇな」
「いつもいつも泣きべそかいておったわ⋯⋯ほら、丁度いま道端で蹲って泣いてるその女子みたいに⋯⋯」
電柱のそばでうずくまっている女の子を指差すと、アイーシャは思わず叫んだ。
「おい! てめぇナディラ! なんでこんなとこにいるのじゃ!」
「ひっ! ア、アイーシャ様っ⋯⋯!」
そこにいたのは、アイーシャの護衛1号ちゃん、ナディラだった!