五十嵐:葬儀
ことは、翌日の葬儀の際に起きた。
戒めを兼ねて、強盗を火葬のそばの木にくくりつけ、葬儀に参加させたのだ。葬儀も形式的なもので、男が無事天に昇って行くようにと祈るためだけにある。
そして葬儀屋と呼ばれた男が祝詞だが呪いだが経だかを口にした瞬間、
「ぐっ……あああ!!」
強盗の一人が異常に苦しみ出した。
「どうした!?」
「助けてくれ……助けてくれぇぇえええ!!」
訳の分からない悲鳴。葬儀屋は集中しているのか、その言葉を止めない。
彼が言葉を言い終わったそのとき。
さらさらと砂が崩れるように、強盗の彼は風化して砂になった。
「な……!?」
死んでいる。何故と聞く相手もいない。
ぞっ、とした。
「何が、起きた?」
ギンが呆然と砂を掴んでいる。
警羅が騒ぎ出した。
葬儀屋の男はただひたすら、驚いていた。それはもう、凄まじい勢いで。
死んだ強盗が、何かを伝えようとしていたからだ。
「一体、何が」
肩を叩かれて振り返る。
知り合い……今回の仕事を斡旋してくれた、商連の知り合いだ。
「何か騒ぎが起きたみたいで?」
「はい。私が祝詞を詠んでいると、強盗の一人が砂になって死にました」
「おや」
砂を見た知り合いは、低く笑う。
「これは奇特な。遂にこの国にも蔓延り始めましたか」
「何か、知っておりますか?」
知り合いは、葬儀屋に笑みを向けた。
「あるところに、丹洪という国があります。我々はそこでも商売をしているのですが、あるとき同じ症状の者が現れ始めた。主に、首都で蔓延を始めましてね」
さあ、お立ち会い。
「今その丹洪は、牙を抜かれて丸腰状態。辛うじてどこからか調達した軍で間に合わせているだけ。おかげで商連は武器に人材派遣にと、大儲け」
にんまりと、知り合いは笑う。
「さて、この国はどうなるんでしょうね」
「おい」
かけられた声に、ひやりと感じた。二人が振り返ると、真っ先に駆け寄った銀髪の青年が二人を睨んでいる。栗色の髪をした青年がこちらを視ている。
「今、タンコーって言わなかったか?」
「さあ、どうでしょう?」
銀髪青年が眉を潜め、睨む。
知り合いは朗らかに笑った。
「答えます。ですが、あなたも次会った時、答えて下さいね?」
知り合いは彼の耳に顔を寄せ、何かを囁く。聞いている青年の顔が、強張っていく。
知り合いは、ふらりと出ていった。




