五十嵐:事後処理
五十嵐は目を開けて、宿の天井を見た。
「今回は起きんの早かったな」
ギンが笑いながら椅子を持ってくる。
「あいつが観光に興奮していた」
「興奮なぁ……」
彼はくっと笑う。
「想像できねー」
「無表情で目が輝いている、とでも言えばいいか?」
「あ、分かった」
そんなことを話していたら、トーラが顔を出した。
「トーラ、もう終わったのかよ?」
「おう。医者が来てくれた」
「医者?」
五十嵐が首を傾げたところで、ギンは渋い表情を浮かべる。
「強盗騒ぎ。ほら、人喰いバカーってやついただろ? 宿の亭主があいつに足刺されてて、その治療がいるから医者呼んでたんだ。それと、バカー本人の治療。ちょっと行ったところで気絶してるところ発見してよ、じゃー治療して警羅に団体で突き出そうぜと。お前が気絶させた奴らも縛ってるしな」
五十嵐はそれを頭で理解して、
「内容は分かったが……バカーなんて名前だったか?」
「名乗ってた覚えはあんだけどな……忘れた。悪いな誰か」
まあどうでもいい。
五十嵐は観光で買ったらしい干物を取り出したトーラに聞く。
「他に怪我人は? 俺も強盗も結構暴れたと思うが」
「ユーイチの中のあいつと戦ったのはギン一人だ。しかもギンは軽傷で済んでら。強盗の被害は……」
トーラの顔が曇る。
「銃で頭を撃たれた人間一人、死傷」
ああ。
人間はこんなに簡単に死ぬ。
「と、ギン。アテがあるって言ってた葬儀屋に連絡はついたのかよ?」
トーラは事も無げに、至って冷静に話している。対するギンも、当たり前に頷いた。
それに、五十嵐は違和感を覚えつつも話を聞くことが先決だと思って黙る。
「おうよ。アテってのはあれだ、商連」
「「商連?」」
思わず二人で聞き返してしまう。
「酒屋のおっさんに、一番近くの葬儀屋を探してもらったんだよ」
「……探せたんだな?」
「そういうこった。金はユーイチの金から出したぜ。到着は明日になるんだと」
「それでいい」
五十嵐も頷き、僅かに騒がしくなった下の音を聞く。人喰い強盗の「勘弁してつかぁさいー!」という悲鳴が聞こえる。葬儀屋より先に警察が到着したらしい。
「強盗は警察に受け渡す。宿の亭主は医者に診せる。死んじまった奴は仕方ねーが、せめてあの世まで葬儀屋に送ってもらう。これで、一件落着」
パチンと、ギンは指を鳴らして笑った。
閑話休題。
やっと本筋に戻れました!
いつも読んで下さっている方、ありがとうございます(土下座)
もうちょっと続きそうです。どうぞお付き合い願います。