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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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バジル:空野の警告


 バジルの力……能力は、未だ完全には覚醒していない。主は何か気付いているようだが、本人も主以外の人間も、一体何か分からないままだ。

 しかし、能力の一端なのか、バジルには幽霊が視える。

「女性……晶子(あきこ)殿は、うっすらと、透明で、向こうが透けて見えました」

「それはおかしい」

 そう言って眉を潜める空野。彼は一度生死の境をさ迷ってから、幽霊が視えるようになったのだという。

「幽霊は透明などではありませんよ」

「はい。様々な世界を見て、私も気付きました」

 そう。普通の幽霊は、はっきりと姿が視える。幽霊が視える者にすれば、人間と幽霊の区別は難しい。

 そのなか、女性は「幽霊らしく」半透明だった。

 そこで、空野が意味に気付く。

「その理由が、魂が半分しか無いから、ですか」

 そうなのだ。

「では、残りの半分は、無事に三途の川を渡って?」

「そこです、私がレキから聞いたのは」

 レキに問うと、彼は首を振って答えた。

「別のところ、恐らく寺にでも居るだろう、と、主が言っていました。そう、レキは」

「寺?」

 空野が眉を潜め、考え込む。

 バジルは彼をよそに、記憶を再生させる。

『寺に、知り合いが居んだってー』

『女性……晶子さんと、主の知り合いで、とくに晶子様の親友の一人でー』

『主は一度も彼らの元には行っていないって、神無さんが言ってたー』

『もし会いに行ったら、晶子の死体を奪われるかもしれないって主が言ってたよー』

 女性の死体を奪うには、異界の主と戦う必要がある。なのに奪われるかもしれないとは、よほどその親友は強いのかと思った。

 そして、この言葉に。

『親友の一人に、未来の大将候補が居るんだってー。彼とは何度打ち合っても、勝ったり負けたりするってー。凄いね!?』

 有り得ない。そう断言できた。

 将官の人事異動の方法は、至って単純明快だ。准将、少将、中将、大将と勝ち抜きで戦う。もし准将には勝って少将には負けた場合、准将に昇格できる。中将に勝てば、中将に。大将に勝てば、大将に。

 下克上の異動方法だ。

 そして、現大将は楓享夜。負けることなど見たことがない、誰もが恐れる最強の大将。彼に勝てるのは、唯一アンヌのみ。

 この事も空野に話すと、彼も有り得ないと断言した。

「あの人の強さは化け物ですよ。勝てる人間が居るわけがない」

「ですよね。……ですが、そのような人物が居るのであれば、是非組織に来てほしい」

「ええ。だが、寺、ではまだ情報が少ない」

 空野の呟きに、バジルは自分が何をするべきか悟る。しかしそれにはまたレキや神無を利用しなければいけなくて――――――神無を思い浮かべて胸がくうっと縮んだ。

「バジル?」

 いつの間にか、空野がこちらを見ている。表情を変えていなかったかと内心焦るが、そもそも何故焦るのかとまた一層焦る。

 まるで、まるで私が神無を好きでいるような反応だろうが!?

「バジル?」

「はいなんでしょうかっ!! 私は自分が神無を好きなのかなど悩んでおりませんがっ!!」

 墓穴を掘った。が、空野は突っ込むこともなく溜め息をついて背を向けた。

「俺も(つて)がありますから、今回はそちらを使います」

 ただし、今回のみ、なのだろう。そして今回は見逃してくれたのだろう。

 声は凍てつくように冷たく、低かった。

「君もさっさと割り切った方がいい。いつか足をすくわれますよ」

 絶句して、何か言い返そうと口を開いたときには、空野は消えていた。

 バジルは何を言い返そうとしていたのか、忘れてしまった。


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