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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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空野:試す


 空野は帰り際に、バジルと出会した。

 アルと呼ばれているあの青年が考えていることは、大方想像がつく。

 妬いているのだろう。バジルの恋の相手が自分だと思って。

「空野殿」

 このように慕うから。

 迷惑極まりない。

 しかし頼ってくる者を邪険に扱えないのは、教師の悲しい性だ。

「……何でしょう」

「あの、このあいだはありがとうございました」

「このあいだ、とはどれの事でしょうか?」

 本当に思い当たることが多くて、首を傾げて聞き返す。

「……稽古をつけて下さったり、糸について話したり、色々。結局、地図も手伝ってもらいましたし」

「ああ」

 納得と同時に、笑みが漏れた。

「そんなに負担でもありませんでしたし」

 何かを志し己を鍛える人間は、嫌いではない。さらに真剣にやっているのだから、手を貸してやるのが道理というものだろう。

 それより、と普段は見せない悪戯心が尻尾を出す。

「バジル、レキと会っていましたね? あの森のなか、俺と会う、数時間前に」

 バジルの表情が強張った。

「俺は、アンヌさんに振りかかるかもしれない火の粉、それら全てからあの人を護る為に、存在しています。だからこそ、不確定要素は全て省きたいんです。改めて聞きます。一体、何を話していたんですか?」

 空野は、草葉の陰から見ていた。大体の会話は聞こえていたが、敢えて、尋ねた。

 彼女が本当に、組織に与しているのか。それを確認するために。

 全て話したら、組織(こちら)側。

 嘘をついたら、異界(あちら)側。

、バジルはしばらく迷っていたが、やがて、口を開く。

「強引に、腕を引かれました。そして、早く戻らないと隊長は主に殺される、と」

 眉を潜める。

「何故? バジルの存在は異界の主の計画に入っている筈です」

「別に、()でなくても良い。私の死体に吹き込まれた誰かであっても良いのです。死体に魂を吹き込んで、力を使えば良いことだから」

 納得し、同時に気付く。

 どうやらバジルの周りには、彼女に片思いしている男が大勢居るようだ。

 アル然り、神無然り。

 神無がレキに急かしたのだろう。

 会ったことも無い異界の主は、人間の女性に恋しているようだが。

「……と、そうだ」

 バジルが口を開いた。

「あの女性……異界の主が想っていて、蘇らせようとしている女性について、少しだけ、レキが漏らしていました。神無の受け売りだそうですけど」

 確か、と彼女はおもいだしたように呟く。

「主が、遺体と一緒についてきた魂は、半分だけだった、と。そのついてきた魂も、あの世とこの世を往き来しているのだと」

「半分?」

 訳が分からない。改めて聞き返すと、バジルは初めから説明を始めた。


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