五十嵐:提案
生まれ育った村の皆が惨殺されたこと。
後遺症なのか、剣が持てないこと。
バジル曰く、剣を持つと気が狂ったように敵味方関係なく殺そうとすること。
先ほど、謎の子供に会ったこと。
五十嵐はこれら全てを話した。話し終えて、トーラは目を丸くして彼を見、ギンは静かに五十嵐を見据えている。
「……要するに」
ギンが口火を切った。
「お前が剣を持ったときに二重人格みてーなのが現れて、人を殺しまくると。で、そいつはお前が怖くなった時に出てくる。そう言ったんだな?」
「ああ、そうだ」
ギンは椅子に沈み込み、指を組んで考え込む。その沈黙を埋めるように、トーラが問いかけた。
「ユーイチ。そのバジルって人が、お前の相方なのか?」
「違う」
否定すると、彼女は眉を潜めた。
「何で、相方はこうなるって言わなかったんだ?」
気付いている。
自分が、不甲斐ないからだ。教えられないほど、自分が弱いからだ。
悔しい。そう思われていて、本当にそうだったことが、悔しい。
また、涙が頬を流れた。気付いたギンがまた一層、思いっきり眉を潜めた。
「お前さあ、泣きすぎだろ」
「昔は全く泣かなかったんだけどな……」
「じゃあ、アレだ。昔に溜めた分も一緒に噴き出してんのか。それでも泣きすぎだ」
頭に、手が乗る。
「男が人前で泣き面晒すのは、あまり感心しねーぞ」
「自分でも思う……」
だが、止まらないのだ。それぐらい、無念で悔しくて、腹立たしいのだ。
「悔しい」
ギンの黄色い瞳を見ると、顔を歪ませた自分の顔が映っていて、思いの外怯んだ。
「何が?」
透き通った声に促されて、また口を開く。
「俺は無力だ。それが、悔しい!」
「どうすりゃ、無力でなくなる?」
それが分かっていれば、苦労しない。
表情から読み取ったのか、トーラが話し出した。
「だったら、そいつが外に出ないようにするか、外に出ても敵味方が区別できるようにすりゃーいいんじゃねーの?」
「だな」
よし、とギンは立ち上がった。
「ユーイチ。今からもっかい、真剣で勝負すんぞ」
「だが、怪我をさせてしまうかもしれない」
そこまで言って、あることに気付いた。
誰が、自分の身体を気絶させてこの部屋に放り込んだ?
「オレだ」
ギンが屈託のない笑みを浮かべる。ナイフをちらつかせ、おどけるように。
「お前よりオレの方が強えーよ。だから安心して剣持て」




