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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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緑香:キナ臭い



 緑香は名前の分からない淡い浴衣の人から浴衣を借りて着ていた。元々の服は洗って干してある。

 そして現在、唯に連れ回されて「故郷」の様々な者に会っている。

 誰一人として名前を名乗らないのが、とても不思議だが。神無くらいだ、名前を聞いたのは。

「……唯さん」

「どうした?」

「どうして皆さん、名無しなんですか?」

 聞くと、彼は困った顔になった。

「……その、だな」

 花畑に着き、腰を下ろす。

「単刀直入に言うと、この故郷にいる全員が人間の言う『神様』だからだ」

 この際神様云々には突っ込まない。

「神様でも、名前ありますよね? 唯さんもほら、須王って名前が」

 うー、とまた困ったように唸る。

「須王は、人間のなかに溶け込みたくて、人間の部下につけてもらった名前だ。なんにせよ、元々持つ『名前』は無い」

「じゃあ、始神は?」

「あれは名前では無い。俺達を識別するために人間が付けた区別記号だ」

 元々必要無いからな。

 そう前置きした唯は、それに、と続ける。

「緑香殿が言うように、名前には言霊が宿る。よって、神で在ろうとも名前の言霊に縛られる。たいていの神はそれを嫌ってか、名前をつけようとはしない」

「じゃあ……えーと……どうしてアンヌさんは名前を付けたんでしょうか?」

 緑香が聞くと、彼は不思議そうに彼女を見て、首を傾げた。

「あの女は、生粋の神ではないぞ?」

「そうなんですか?」

「血筋としては入っているが、薄まっている。それにあいつの炎と風は、生まれつき持っていた訳ではない」

 初耳だ。ほーと緑香が聞き入っていると、唯はさらに教えてくれた。

「あいつの生まれつき持った力は、人間の言う『錬金術』だ」

「錬金術? あの、物体を作るっていう?」

「そう、あれだ。あいつの力は、その材料と量さえその場に揃っていれば何でも錬成……作り出せる。鉄クズがあれば鉄パイプや銃に、泥や土があれば固めて土壁に」

 テレビアニメで見たことはあったが、本当に実在するとは思わなかった。

「錬成陣とかは要るんでしょうか?」

「要る国もあるが、あの女が描いているところなど、見たことが無いな」

 それに、と唯は腹立たしげに呟く。

「あいつの錬金術はキナ臭い」

「……と、言うと?」

「時々、錬成する前の量と錬成した後の量が合っていない時がある。たいていは量が増えている。本来ならあり得ないんだが……」


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