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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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五十嵐:追い出し


 五十嵐はプレイフルを睨みながら、じりじりと槍を引き寄せる。プレイフルはそれを見てあのさ、と声をかけた。

「警戒されてるみたいだけどオレ、主から自由時間もらって観光してんの。邪魔しないでくれる?」

「観光だと?」

「そう、観光。そんでブラブラしてたら、この盗賊の親玉に会って、それでしばらく一緒にいないか? って誘われた」

「なんだよそれ。つかどーよそれ」

 ギンが呆れたように突っ込む。

「じゃあその親玉に言ってくれ。頼むから早く出てけって」

「まあいいけど、彼多分この宿のオーナーと金額交渉してると思うから、戻ってくるまで待って」

 なんだか友好的である。

「……随分と親切だな」

「誉め言葉として受け取っておくよ。別に人間見るのは嫌いじゃないしね。邪魔する人間がいるから殺すだけで」

 さらりと言われる内容に、やはり彼は異界の者だと思い知らされる。

「あ、戻ってきた」

 奥から雲突く巨大な男が顔を覗かせる。男はじろりと人質を睨んで、

「交渉決裂だ、全員殺せ」

 その瞬間、轟音とともにギンと五十嵐の側にいた客の頭が弾けた。ぞっと五十嵐が身を引くなか、ギンはナイフを抜きふらりと足を踏み出す。

「質問が三つ」

 銃と呼ばれる飛び道具がすべて賊の手から叩き落とされ、引き金を壊されている。それを一人でやってのけたギンは眠たげな空気を隠そうともせず親玉の男を見上げる。

「一、金額の交渉が決裂した理由は。二、お前らは何に乗ってここまで来た。三、お前の名前は」

「交渉決裂の理由は、俺らが欲しい額の金がこの店に無かった。移動手段は馬だ。俺の名前はバギー、人食いバギーだ!」

 バギーと名乗った男はギンに持っていた血塗れの包丁を振り下ろす。

「人食いバギー、って言ったら確か」

 ギンは包丁のすぐ横に立っていた。

「懸賞金、高かったよな?」

 ごとり、と男の腕と包丁が落ちる。

 ギンは笑わない目で口だけを笑みの形に歪めた。

「よかったなここが宿で。止血の糸があるぜ。誰にやってもらうのかは知らねーけど」

 男は慌てて仲間の賊を見回し、

「ああ、済まない」

 プレイフル以外の全員が気絶している事態に気付く。プレイフルも五十嵐によって首に短刀を突きつけられている。

 五十嵐は本当に済まなそうに言った。実際少し申し訳なく思っていた。

「彼らには助けを求められる前に気を失ってもらった」

「おかしら、たすけてー」

 至極面倒そうにプレイフルが言う。男はそれを震えながら見て、

「うわあああ!」

 逃げ出した。ナイフを仕舞ったギンはそれを見て肩を竦める。

「逃げられちまった。ま、しゃーねーか」

「オレって見捨てられたんだよね?」

 プレイフルが短刀を無視してコートを払っている。

「それから君、見たでしょ。オレの首にカタナ突き付けても意味無いって」

 プレイフルが組織に侵入したさい、首に鱗があり、刃物が通用しないのだとは認識している。

「だからあんたにした」

「買い被り? 一応敵ですけど?」

 鼻で笑った彼は短刀を押し退けて店を出ていく。

 からん、と店のベルが力無く鳴った。



 プレイフルはちんたらと町を歩く。青い髪が注目を引いていることも気付いている。

 そのとき。

『プレイフルって、君だよねー?』

 どこからか聞こえる、上司(・・)の声。

「そうだけど」

 肩を叩かれて、鳥肌が立った。

(いつの間に)

『いつの間にって、そりゃ今だよねー』

 振り返ると、白濁した目が笑っていた。

『プレイフル、仕事だよー』



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