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団長(唯):混乱
唯は目を押さえた彼女を見て、慌ててそばに駆け寄る。
「どうした!?」
「もうちょっとだけ……寝かせてもらってもいいですか?」
「好きなだけ寝るといい」
じゃあ、と緑香は唯の手を掴んだまま横になった。
どきどき。どきどき。
視線が、彼女の指から離れなくなる。
細くて少し節のある指。何気なく握られて、彼の心臓は高鳴っている。高鳴る理由が分からず、一人混乱した。
頑張って視線を指から逸らして見れば、今度は緑香の寝顔に吸い寄せられる。
(どうした、俺?)
混乱はまだ収まらない。
ふいに、脳裏に副団長こと浮草を発見したときのことを思い出す。
あの時あいつは物影に隠れて女に唇を重ねて――――
「どぉう、彼女の容態は?」
入ってきた彼に飛び上がった。
五十嵐もヘタレだけど、団長はもっとヘタレ。