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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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須王団長:名も無き感情



 緑香と過ごして三日経つ。

 団長は早くも彼女の扱いに困っていた。

 例えば、今である。

 緑香を抱えて走っていた。

「言った筈だ! 植物であろうと何であろうと、俺に確認をとってから触れろと!」

「すみませんー!」

 自分たちの後ろに憑くのは巨大な口を開けた植物のような物体だ。例えるならハエトリグサが巨大化したような。緑香がそれをつついて、食われかけた。彼女を助けると、そいつは自分ごと食おうと起き上がり追いかけてきたのだ。

 彼女は良くも悪くも好奇心旺盛だった。そして現在、緑香を一言で表すならと聞かれたならば、自分は『トラブルメーカー』と断言できる。

 それより、今だ。

 本気で走れば余裕で振り切ることができる。しかしそれをすると、力を発動するため異界に自分たちの居場所が割れる。よって人間の姿で、足に強化を施さずに走るしかない。しかし、もう足は悲鳴をあげている。

 ハエトリグサに食われて世界が消滅。……………………笑えない。

 息を短く吸い、緑香に問いかけた。

「受け身はとれるな?」

「はい!」

 肯定と共に投げる。彼女が地面に激突する前に剣を抜き、植物を断ち切っていた。

「またつまらないモノを斬ってしまった」

 前に副団長が見ていた劇の台詞を真似してみる。

「わー、真っ二つですね」

 緑香に無視されて、少し落ち込んだ。

「須王さん?」

 しかもわざとではないところが、むしろ酷い。

「……何もない。それより緑香殿」

 玲奈を叱るように、頭に拳を落とす。

「もう、やらないな?」

「……………………はい。多分」

「多分、だと?」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

 彼女の頭を腕で固めて拳でぐりぐりとこする。五十嵐いわく結構痛いらしい。

 解放すると緑香はじっとこちらを見上げてきた。

 その口を尖らせた表情に、上目遣いに。

 くらりと、心が揺れる。

 ああ、彼女が側にいてよかったと。

 残酷なことを考えてしまう。

 まだ、この感情に名前はついていない。


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