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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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五十嵐:お金が無い


 干物屋にて、五十嵐は黙々とノートに食べ物を列挙していた。ギンとトーラは五十嵐に干物の名前を教えつつ、どれを買うか相談している。

 メモを終えた五十嵐も二人に加わったが、ある疑問がわき上がった。

「おい」

「何だよ?」

「色々選んではいるが……金は持っているのか? 期待するなよ、俺は無一文だ」

 トーラがうっと詰まる。だがとなりのギンはニヤニヤと笑みを浮かべたままだ。

「俺さ、トーラと会った村でバイトしてたんだよ。で、これが!」

 五十嵐に財布を投げつける。

「俺の金だ!」

 胸を張る彼を無視して開けた五十嵐は、

「おい」

 ギンにそれを投げ返す。

「てめっ! 何しやが……」

「中身、見ろ」

 彼は言われるままに覗き込んで、

「はっ!?」

「それで金があると?」

 すっからかんの財布に顔を青くした。

「…………………………何で?」

「酒だろう。昨日の」

 つまり、昨日の酒で全財産を使い果たしたと。

「嘘だあああああああああああああああぁぁぁぁぁ!?」

 干物屋に悲鳴が響くなか、五十嵐とトーラは選んだ干物を棚に直していく。

「短い夢、だったな」

「ああ。で、どうすんだよ。食い物」

「少しだけ、考えた事がある。……この世界でも通じるかは分からないが」

 五十嵐はごそごそと鞄をあさった。中に入っていたのは、

「…………オレを襲った化け物の牙?」

「ご名答」



 五十嵐はトーラを引き連れて、村人に聞いた店に向かっていた。トーラはギンを引きずっている。

「いい加減歩けよおい」

「金が、俺が一ヶ月働いて貰った金がぁ……!」

 ついに彼女はギンを無視することに決めたらしい。

「それでユーイチ、どこに行くんだ?」

「この国では商連(しょうれん)と呼ばれる団体の支店、だな」

 丹洪時代、よく狩った獣を商人に買い取ってもらった。足がつかないよう、なるべく知らない商人を訪ねるようにしていたが、そのうち初めて会う筈の商人がこちらの事を知っている、という事態が起き始めた。

 その理由が、この「商連」だ。

「ショウレン?」

「商人達の組合だ。正式名は商人連携組合。宿の親父に聞いた」

 いわば商人達による連絡網、情報網のようなもので、この組合のなかで取り決めが成されており何を幾らで売る、もしくは買うといったことが統一されている。

「各地に支店がある。恐らく世界中にだ」

「そこで買い取ってもらおうと?」

 その通り、と五十嵐は頷いて立ち止まり、ギンを呼んだ。

「あ?」

「簡単に答えてくれ。こいつだが」

 獣の牙を見せる。

「珍しいか、珍しくないか」

 難しい顔でギンは黙り込んだ。

「……獣自体は珍しくないが、ここまで綺麗な牙はあまり取れねー、と思う」

「歯切れ悪いな」

「だって分かんーし! でもあんまりこの牙が店頭に出てるのって見ないんだよ!」

 叫んだ彼は店の前で立ち止まる。

「ここか? 古びた酒屋にしか見えねーが」

「合っている」

 普段は酒屋、しかし。

 五十嵐は酒屋の扉を開け、奥から出てきた店主に笑いかけた。

「灰色の大地に白銀の稲穂が生い茂るにはどうすればいい?」

 店主は微笑み、ギンは呆然と目を見開く。

「なんで」

「どうした?」

 五十嵐の問いに答えず、ギンは彼の胸ぐらを掴んだ。

「どこで知った!?」

「!?」

 何が、と聞こうにも彼は動揺している。店主も何事かと目を潜めているが、ギンを止める気は無いようだ。

「この問い、か?」

「そうだ!」

「宿の親父に聞いた、が」

「何でおっさんが知って、」

 ギンの言葉を、店主が遮った。

「それはですね。貴方の養い親であるご老人が合言葉にすると決定されたからですよ。ギン・クラウン殿」

 彼がそんな、と力無く呟く。店主はまだ言葉を続ける。

「元々、この商人連携組合は養父殿によって作られたものですから」

 さて、と店主は三人に椅子を勧めた。

「商人連携組合にようこそ。何をお求めですか?」




やっと進んだような進んでないような。

でも村から全く移動しない…………


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