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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第一章
7/117


 丹洪の武士団が、いつもの鮮やかな攻撃をして来ない。さらに、目立つ金髪の指揮官が前線にいない。側で豪槍を振り回す栗毛の青年も、狂ったように刀で斬り込む黒髪の女も、見当たらない。

 丹洪と交戦している指揮官は、まずそのことに気付いた。側に控える副官もそのことに眉を潜めている。

「腹でも下して、今回の戦には行けなくなったとか?」

「んなことがあり得るか、阿呆(あほう)

 埋伏兵(まいふくへい)から連絡は来ていない。間蝶(かんちょう)からも、物見(ものみ)からもだ。

 あり得るとすれば、長期戦に持ち込むつもりで、武士団及び丹洪軍の主力を温存しているということ。

 丹洪の国王は前線より少し引いたところで全体を見ている。前線の兵を一気に敗走させ、国王に肉薄すれば討ち取ることもできる。

 さらに、側に埋伏兵の潜む草むらがあるはずだ。

「……だとすれば」

 主力が出てくる前に、軍を瓦解(がかい)させる。

 指揮官は馬腹を蹴った。

「俺が出る。突撃!!」

「私も出ます。大将」


 副団長は顔をしかめた。

「あーあ……来ちゃいましたよ。ロールエとか言う指揮官。と、その副官」

 隣に立つ国王が笑う。

「当然だ。来てもらわなければ困る」

 そう言って、彼は側に潜む三人プラス隊員を見た。

「その為に、わざわざフードを被っているのだからな、須王?」

「全くです」

 団長が溜め息をつく。同じく目立つのでフードを被っていた五十嵐、玲奈も頷く。

 国王はそれに改めて笑い声をあげ、副団長を見た。

「どうだ浮草、奴らはもう射程範囲に入っているか?」

「失礼ですが、とっくの昔に」

 副団長はいつの間にか、従者から弓を受け取っている。彼の弓は、大の男三人がかりて張ったという噂まであった。それほどデカい。故に副団長の腕力なら、矢はどこまでも飛んでいく。

 彼は弓で副官を狙い定めながら、口角をはっきりと吊り上げた。

「それじゃ、狼煙(のろし)を上げましょうか」

 次の瞬間。矢は敵軍副官の胸に吸い込まれていった。



 ロールエ指揮官は、隣で何かが落ちる音に振り返り、目を見開く。

 副官の胸に矢が刺さっている。矢は胸と背中を貫通し、矢尻が背中から突き出ている。丹洪の国王を見れば、隣にいた柔い男が笑っている。

 手には、弓。男の目は、水色。

「武士団副官、浮草……!」

 辺りは静まり返っている。

 副団長は指揮官を見据えたまま、手を伸ばした。

 何故だろう。彼の冷ややかな声がはっきりと耳に届いた。

「久野武士団。突撃」

 前線が割れる。フードを被った一団が飛び出し、瞬く間に進軍していく。

 不意に風が吹き、戦闘の男が鬱陶しそうにフードを払い退けた。

 髪の色は、金。

 声を上げる間もない。気が付いた時には、一団は目の前にいた。また、腹心の部下が豪槍で吹き飛び、袈裟懸けに斬られる。

 そして最期に指揮官は、金色の煌めきを見た気がした。




短いです。

やっぱり戦闘シーンは難しい…

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