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五十嵐:隠し事
五十嵐は思考から戻り、ペンを持ち直す。
宿に戻った三人は、歩行動物で乗り物にすることができるものをギン教えてもらい、書き留めているところだった。
改めて、ギンの知識量は尊敬に値する。
「凄いな、お前」
五十嵐の素直な賞賛にギンは、頭の後ろをかくことで応えた。
「知り合いのじっちゃんが教えてくれた。今も首都にいるはずだぜ」
「会ってみたい!」
トーラが元気にそう言い、ギンがからからと笑う。
「でもじっちゃん忙しいからなー」
どこか、五十嵐は違和感に身を震わせる。
まさか、ギンが嘘をついている?
「ま、会えたら会おうぜ」
「案外その知識人さんが知ってたりして!」
「実は隠し子でしたってか!?」
「んなわけ……」
トーラは言いかけて、口に手をあてた。
「……今、隠すって単語に、頭が傷んだ」
ギンが目を丸くして立ち上がる。
「記憶の鍵か」
「分からねー。でも、大事な気がする」
トーラは小さな紙に隠す、と書いて懐にしまう。
「何にしろ、一回会ってみたい」
「……だな」
五十嵐には、ギンが苦しそうに見えた。
何故だろうか。