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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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アンヌ:打診


 書類に埋もれる享を放置するアンヌは、バジルが土産を買うほど親しい彼を尋ねていた。

「貴方がハーモニアス君かしら?」

「そうですが…………何ですか俺食われますか」

 彼こと、アルファード・ハーモニアス。通称アル。大尉を勤めているが、剣術には目を見張るものがある。アルはアンヌのことを知っているのか、かなり警戒しつつも報告書に目を通している。退院したばかりだと聞いた。

「美味しそうではあるけれど、私は悪食(あくじき)では無いから。バジルに頼みなさい」

「そこで黒が出てきますか! 黒になら食べてほしいですけど」

 食べてほしいのかよ。

 アンヌの内心の突っ込みをよそに、アルはそれよりと彼女を睨んだ。

「何の用ですか? 忙しいんです、俺」

「今年度の登用試験に」

 アルの目に光が灯る。余所者がなぜ試験に介入するのだ、とでも思っているのかもしれない。

「丹洪の者が二人挑戦するわ」

「それが何か」

「貴方、武術試験の試験監督でしょう?」

 武術試験では、受験者と試験監督が戦う。

 何故知っているんだとばかりにアルがアンヌを怪訝に見た。

「二人を思い切り叩きのめして頂戴」

「…………何かお気に召さないことでも?」

(むし)ろ逆。それで、二人が合格した(あかつき)には、貴方の隊に入れたいのよ。もちろんロナンや享とも話したわ」

 アルの人徳には定評がある。年上で同じ階級の大尉……果ては左官でさえ従うこともあるぐらいだ。さらに戦場では文字通り最前線で戦う。二人を組織に慣れさせるにはうってつけの場所だ。

 そんなアンヌの考えを知ってか知らずか、アルは肩を竦めて頷いた。

「分かりました。覚悟しておきます。その二人は?」

「片方は病院で足だか腰だかの骨を折って療養中。もう片方は一足早いけれど、白虎探索に向かわせているわ」

 アルの手が止まる。

「…………療養っつーことは、噂の鈴無玲奈とかいう姉ちゃんじゃありませんかね?」

「有名なのかしら?」

「同僚が話してましたよ。アンヌ殿に物申した人間が病室にいるって」

 物申したとは、薄給の件だろう。

 アンヌはそっぽを向くことで応えた。しかしアルは全くめげない。

「で、白虎探索ですか……そいつは信用できます?」

「恐らくは」

「異界の者でしたらコトですよ」

「それは大丈夫よ」

 アンヌは呟く。

「でも彼、かなり落ち込んでいるのよね」



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