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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
58/117

玲奈:勝手に診断


 一休みした玲奈が目を開けて始めに見たものは、

「確かに、どこからどう診てもただの人間じゃな」

 自分を見つめる骸骨かと思うほど痩せた謎の老人だった。

「うぉうっ!?」

「こりゃ、耳元で大声を出すな!」

「す、すみません……って違うッ!」

 玲奈はとっさに魔剣を探して、

「ハイどーぞ」

「あ、ありがとうございます……違ッうわ出ギャァァァァァァァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 謎の金髪男を指差した。

「出た、とは失礼ナ。アタシはそんな不審者じゃありませんヨ?」

「いや、怪しいけど大した者じゃありませんって前に言ってたやろ!」

「それアタシじゃないし。私だし」

「言ってることが訳分からんやないか!」

 ギャアギャア叫んでいると、アンヌが中に入ってきた。

「あら玲奈、元気ね」

「はいアンヌさん! この二人は何者ですか!?」

「私の知り合い」

 簡潔に答えたアンヌはそれで、と魔剣に視線を移す。

「どう、剣は持った?」

「へ?」

 金髪男に渡されて手に持って。

「……軽い……」

「要らん錆を落としたからな」

 老人が胸を張っている。

「ありがとうございます」

「俺も珍しいもんが見れたからな。代金はそれでいい」

 それだけ言った老人はアンヌの背によじ登る。

「よし嬢、この病院の責任者に会わせろ!」

「あら。じゃあ……あの話は受けてもらえるのかしら?」

「会ってから決める!」

 唯我独尊らしい老人をアンヌが背負って出ていった。

 そして今。目の前で金髪男が玲奈を観察している。

「……貴方は」

「アタシデスカ? アタシは楓享夜と言いマス。アンヌの古い友人……もはや義兄弟デスかネ」

「義兄弟!?」

 思わず叫んで、集団病室だと思い出して慌てて口を押さえ辺りを見回したが、誰もいない。

「ああ」

 玲奈の考えを読んだのか、享がニタリと笑った。

「君を(あやかし)の爺様に診せるため、個室に移しました」

「あの老人ですか?」

「ハイ。昔は神医と呼ばれていたんデスヨ。文字通り神様に雇われてたかラ」

 沈黙。

 玲奈には沈黙が痛かった。

「……あの。アタシやら私やら、何が何だかさっぱり……」

「そうデスネェ……」

 考え込んだ享は目をつむり、力を抜く。

 彼の姿がぼやけ始めて、

「いっ……!?」

 二重に享の姿が浮かび、実体を持った。

「これで分かったかナ?」

 片方が笑う。もう片方も笑う。

「アタシは原型。能力を行使した側」

「私は分身。能力で造られた側」

「戦っているときに、この力が発現しましてネ」

「昔々の話デス。それからずっと、私はアタシの中にいる」

「何か用がある時に、でもアタシに外せない用事がある時に私を出しテ」

「私はアタシの用を片付けに来る」

 分かりましたか? と同時に尋ねられて、玲奈は反射で頷いた。

 とりあえず、ドッペルゲンガーを中にしまってほしい。同じ人物が二人並んでいると、気分が悪くなってくる。

「あら」

 アンヌが帰ってきた。二人が一斉に彼女を見たので、玲奈はややほっと肩をおろした。

「また出ているのね」

「ハイ。(うず)君に私の存在を説明していましてネ」

「玲奈のことは渦と称するのね」

「存在がそんなもんデスから」

 そう言ったドッペルゲンガーがゆらりと消える。

 玲奈がドッペルゲンガーの言葉を考えているうちに、享はアンヌに尋ねた。

「お爺は?」

「玖楼と交渉中よ」

 アンヌはにやりと笑う。

「案の定、食い付いてきたわ」

「よしよし」

 ……何やら腹黒い大人の世界を見た気がして、玲奈は目を閉じた。


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