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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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五十嵐:銀髪の彼



 戦闘に引きずり込まれた五十嵐は、苦戦していた。

 会話をすれば和解できると思うのだが、口を使っている暇が無い。更に、強い。防戦一方など、玲奈や団長、鈴無当主と手合わせしなければできない体験だ。

 相手の姿など見えず、銀色の残像しか目には映らない。もはや反射神経や本能に近いもので槍を扱っている。

 そして玲奈を頭に思い浮かべた瞬間に心はもう揺れていて、

『お前だ、こいつをここまで破壊したのは』

「……あ」

 手の動きが、一瞬、遅れた。

 槍が弾け飛ぶ。槍が飛んだ先を確認する余裕など無く、残像は五十嵐の首に向かって動き、

「止めろギン! そいつはオレの恩人だ!」

 ぴたりと、少女の声で、短刀は首に触れる直前で止まっていた。

「……マジ?」

 短刀を首に突き付けたまま表情を引きつらせた青年は、銀髪に黄色の眼を光らせる。

 少女が慌てて短刀を首から退け、大真面目に頷いた。

「まじ、だ。そこで死んでるバケモンにオレが殺されかけてるときに、間に割って入って助けてくれた」

 驚き慌て始めた青年をよそに、五十嵐は餓死の心配は無くなった、ついでに命の危険も無くなったようだと考えている。

 そして、思い出した言葉を思いの奥に押し込めようと、躍起になってもいる。

 青年が短刀を放り出し、五十嵐の肩を掴んで頭を下げた。

「おい、お前! 悪い! 殺しかけた」

「いや、実際問題死ななかった、それでいい。それより」

 五十嵐はこれ幸いと地図を取り出し、二人に見せた。

「首都に行きたいんだが、どちらの方向に向かったら良いのか、教えてもらえないか?」

 青年と少女は顔を見合せる。




 ギンと名乗った銀髪青年と、トーラと名乗った柔らかい紫の髪を持つ少女。二人はシギ国の最西端にある村から来たのだという。

 そしてもう一つ。

「こいつについて、何か知らねーか?」

 こいつ、のところでトーラを指差したギンだが、初めて会った相手の事など何も知らない。

「全く」

「だよなぁ。……こいつ、記憶失った状態で村に倒れてたんだよ」

「記憶もカラッポで、口調すら覚えちゃいねえ。だから、今はギンの口調を真似てんだ」

 トーラの可愛らしくない口調はこのせいらしい。そして二人は彼女の記憶を取り戻すために旅をしているのだという。

 納得はしつつも、五十嵐は聞かずにはいられなかった。

「どこか、当てはあるのか?」

「無い!」

「だから近くの村を片っ端から訪ねてみようと思ってよ」

 五十嵐がシギを調べたときに知ったが、シギ国の住民は殆んどが銀髪なのだという。

「だが、彼女は髪からしてシギ国の人間では無いだろ?」

「ま、そうなんだろうよ」

 ギンはあっさり頷き、だからと地図の一ヶ所を指した。

「知り合いの行商人がここ、商業都市で待ってる。おっさんは各国を回ってるから、何か知ってるかも知れねえし」

「そこが当面の目的地なんだな」

「おう」

 現在地を教えてもらった五十嵐はじゃあ、と槍を担ぎ直した。

「お前達も頑張れよ」

「おう……って!」

 トーラが慌てて五十嵐の手を握る。

「方向一緒だろ?」

「そうだが……」

「なら一緒に行こうぜ!」

 にっこりと笑うトーラと、快活に笑った玲奈の顔が、被った。

「……………………」

 黙り込んだ五十嵐を、彼女は心配そうに見上げる。それにギンは苦笑を浮かべ、彼の額を突いた。

「旅の仲間がいて困る旅か?」

「……少しだけ」

「理由は?」

「お前達が傷付くかもしれない」

「バーカ」

 突然暴言を浴びて眼を白黒させた五十嵐にギンは、にっと意地の悪い笑みで睨む。

「オレは、お前を殺しかけた男だぜ? オレの方が強い。むしろ必要なんじゃね?」

「………………トーラは!」

「オレが護る」

 根拠の無い自信に、五十嵐は彼を見た。

 彼は目を丸くしたトーラに笑っている。

「驚いた?」

「驚いた」

「オレに惚れた?」

「そこまでは行ってねえ」

 ばっさり言われて落ち込んだギンだが、五十嵐をちらりと見て、笑みを戻した。

「何かを理由にして、何かから逃げてんのか。何にしろ、旅のお供は必要だぜ」

 不意に飛ばされた言葉に目を丸くさせる。

 この男なら。

 五十嵐は頭を下げた。

「二人とも、頼む」





 さて。

 出発した五十嵐を待っていたのは、

「絶対こっちだっての!」

「いーや! こっちだ!」

 超絶方向音痴の二人による翻弄だった。

「……どっちも違う」





 五十嵐らが近くの村に辿り着いたころには、あたりはすっかり暮れていた。

「お前ら」

 五十嵐の一睨みにぎょっと飛び上がる二人。二人とも、頭の上には真新しい、さらに巨大な瘤が見える。

「もう方角に口を出すな」

「はい」

「済みません」

 そう。散々な目にあったのだ。

 おかげで通常なら二時間で進める場所に五時間も使ってしまった。

 二人を置いていくことを真剣に考えた五十嵐である。

 しかし彼らを放置した場合。

「……とりあえず、宿屋を探すか」

 二人がそのまま餓死しそうで怖いのだ。

「おう!」

「任せとけ!」

「そしてお前ら二人とも同時に別の場所に行こうとするな」

 五十嵐の旅はまだ始まったばかりである。



調子に乗ってかなり投稿しました。また数日投稿できそうにないので、その分ということでお願いします…………

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