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五十嵐:と、紫の髪の少女
五十嵐が茂みをかき分けると、見事と言うか、何と言うか。
少女が猪のような化け物三体に襲われている最中だった。
「ギャー! こっち来んじゃねー!」
「……」
紫色の紙を三つ編みにして二つに分け、おろしている。目は明るいオレンジ色で、活発そうな印象を五十嵐に与えた。
その少女の口調が可愛らしい印象をブチ壊しにしていることはさておき。
五十嵐は少女と化け物の間に入り、化け物の角を押さえつつ意志疎通を試みた。
「ここでお前達が逃げたら俺はお前達を追わない。どうだ、退かないか?」
勢いは増すばかりである。
言語が通じない、つまり無理だと早々に諦めた五十嵐は少しばかりかじった経を口にしながら、化け物三体を痛みもなく沈めた。
「ちゃんと食ってやるからな」
死体に声をかけてから少女を向こうとした五十嵐だが、
「済まないが……がっ!?」
後ろから刺さった殺気に振り向いて見れば、短刀二本が槍に阻まれて、しかも短刀は見知らぬ青年が持っていた。
銀髪に五十嵐が目を向けた瞬間、猛攻が始まる。