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アンヌ:五十嵐を送ったあとのこと
アンヌは窓枠に立っていた享を見て、思わず渋い顔を浮かべる。
「……優一はちゃんと頑張ったのに」
「うっ」
享が胸を押さえ倒れる振りをする。いや、本当に机のカドに頭をぶつけて倒れた。
「仕方ないですヨ、こっちも準備が必要立ったんですかラ」
「準備、ねえ」
アンヌは呆れた笑みで彼を小突く。
「積る話があるから先に行っておく、と言ったのは誰だったかしら?」
「アタシですとも! でもよくよく考えたらアンヌが居ても困らない話でしたのでネ!」
追求を諦めた彼女は享を立たせ、辺りを風に包んだ。
「私達も行きますか」
「デスネ」
風が止み、目の前に広がるは、生き物による壁。
おぞましい数の異界の化け物に囲まれた二人は、笑って手を広げた。