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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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五十嵐:出立


 翌日、玲奈に挨拶を交わした五十嵐は出立にアンヌの元を訪れた。ロナンとアンヌ、どちらかを探していたら、たまたま彼女を先に発見したからである。

「享に言われた通り、三日で済ませたみたいね。正直これほど早くできるとは、思ってもみなかったわ」

 常用語で、しかも早口の(なま)りを加えて言われた言葉に、五十嵐も難なく頷く。

「ド忘れした時の為に、予め生活で必要になりそうな単語は紙に記しておきました」

 それらと水筒と方位磁石と組織に帰れる護符と携帯食料やその他もろもろを入れたリュックサック。手には槍を握っている。

 五十嵐なりに、シギ国について図書館で調べていた。シギは漢字で信じる事を貫く、と書く。未開の森林地が多く、人間が住めない土地の方が多く、故に生活が成り立たず盗賊が闊歩する地域も多い。だからこその水筒だ。ちなみに金銭は何も持っていない。食える生き物も調べたが、あまり詳しく記されていなかった。現地の人間に聞くつもりだ。

 アンヌは笑みを浮かべ、手のひらで彼の目を覆う。

「行ってらっしゃい」

 手のひらが離れた瞬間、五十嵐は森のど真ん中に立っていた。



 五十嵐はとりあえず、と人間を探していた。このさい盗賊でもいいから誰か出てきてくれ。

 アンヌに森林に送られてからずっと歩いているが、日の動きを見る限り、二時間は動いているように思う。その間、人里はもちろん生き物すらお目にかかっていない。

 緑の間に見える樹皮を、紫色の液体が流れ落ちている。気味が悪い。

 とにかく暑い。水を持ってきて良かった。森にも液体は色々と流れているが、飲めるのかは分からない。

 戦云々の前に、餓死で倒れかけて組織に帰る可能性が見えてきた。

「それだけは勘弁したい……と」

 五十嵐の耳に、僅かな叫び声が聞こえた。

「誰だ?」




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