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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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五十嵐&玲奈:ある日の病室


 話を聞かされた玲奈は、つまりと五十嵐を睨んだ。

「あたしを、差し置い、て、抜け駆け、か!」

「嫌、な、言い方を、する、な、阿呆」

 二人共に、さっそく常用語を使って練習している。

 しばらく勉強に時間を費やしていた二人だが、玲奈がぽつりと呟いた。

「戦とかになったらすぐ逃げや」

「当たり前だ」

 聞いていたバジルがふむと頷く。

「出立する旦那に声をかける妻の図、だな」

「お前!?」

「……ごめん今何て言うたんか分からん。もっかい言って」

 バジルにも練習として常用語を使ってもらっている。

 バジルがゆっくり話して、内容を理解した玲奈が爆笑する。五十嵐はその間も騒ぎ続けていて。

 回復した団長が顔を覗かせるまで、騒ぎは続いた。


「突然だが」

 その団長だが。

「二時間後出立することにした。行き先は故郷だ。具体的な地名は言わん」

 玲奈の元に緑香を伴って宣言に来た。

 そばで巨大辞書をめくっていた五十嵐の腕から本が轟音と共に落ちる。

「団長ッ!?」

「また何でですか!?」

「何故、と言われてもな」

 団長の顔は苦い。

「アンヌに言われた。正直、異界が全勢力を以て組織を襲撃した場合、ここは一日も持たないらしい。俺は殺されるのだと。だったら姿を眩ました方が良いだろう」

 答えられて黙り込む二人に、更に追い討ちをかける。

「ついでに緑香殿だが、もらっていくぞ」

「!?」

「ちょっと待ってくださいや団長!」

 玲奈が食って掛かる。

「何で緑香を!?」

「異界に顔を覚えられた。駆け落ちの形にはなるが、羽栗を抜けて俺と逃げ回っていた方が安全だ」

 これもアンヌに説得されたらしい。団長も初めは反対したそうで。

「にしても言いぐさってもんがあるでしょう……!」

「お前達の反応が見たかった」

 撃沈した玲奈である。団長は彼女と五十嵐の頭に手を乗せ、武士団時代と同じように撫でた。

「安心しろ。緑香殿は命に代えても守る」

「…………代えなくていいですから、団長も緑香も無事でいてください」

「そうする」

 団長が浮かべた久々の笑みに、玲奈の心配も解れる。少し三人で昔話をして、玲奈が泣く場面もあって。顔を覗かせた緑香と玲奈も少し話し込んだ。

 団長と緑香はいつの間にかいなくなっていた。

「行ったな」

「行っちゃったな」

 うん、と玲奈は頷き、己の傷んだ身体を睨む。

 もっと、強くならなければ。

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