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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第一章
43/117

後始末とこれから



 噂にされていた玲奈はくしゃみを立てる暇もなく、涙目で、ついでに悶絶していた。

「痛い痛い痛い痛い死ぬ死ぬ死ぬ死ぬつかむしろ死んだ方がマシやヒイイィィィ」

「おーい生きてるかー」

 バジルがぱったりと気絶した彼女の頬をつねっている。

「痛覚が無い……触られてるって感覚しかない。アレか、上限超えたんか……」

「あまりに痛がるので、神経を麻痺させたんじゃよ」

「玖楼さんありがとうございます!」

 治療を施していた玖楼がにっこりと笑った。手は水色に輝きながら、玲奈の足に包帯を巻いている。

「こちらこそ、じゃよ。ついでに意識も落とそうかのぅ」

「え」

 玲奈の首に玖楼の手刀が決まった。口を開けて気絶した彼女をよそに、玖楼はバジルに向き直る。

「しばらくは動かさん方がいいの」

「でしょうね」

 ちなみに五十嵐は病室の外に閉め出してある。

「しかし」

 玖楼の眉が寄った。

「この怪我じゃが、全て……人間に襲われたものじゃな?」

 異界の主でもなく、神無でもなく、バジルでもなく、ただの人間。

「……はい」

「それにしては少し、獣のような荒さじゃがの」

 獣。たしかに、あの状態の五十嵐は獣と呼ぶのが相応しいのだろう。

 黙り込んだバジルに気付いた玖楼は、目を細めた。

「何があったのじゃ」

「五十嵐が長剣を持たされて、狂いました」

 狂った、そう言葉にするのは容易(たやす)い。

 だが、彼のそれはもっと無機質だった。

 生きている全てを、この手で排除しようとするようにバジルには思えた。

「私が空に放り出したどさくさに紛れて、剣を叩き落としましたが。ちなみに本人に狂っていた時の記憶はありません」

 報告に、玖楼は溜め息をつく。

「異界の者より、なお悪いの」

「ええ。奴らには自我がありますから」

 バジルは五十嵐を組織に入れる危険性を示唆する。

「元々、鈴無とも離せんからのぅ……」

「そうなのですか?」

「うむ。五十嵐は戦場で鈴無から五メートル離れただけで死ぬのじゃと」

 また何てうざったい呪いだ。

「……いっそ何かある前に事故死で片付けましょうか?」

「今の会話、全て紅に話してもよいかの?」

「……止めておきましょう」

 アンヌ達に嫌われたくない。玖楼の否定に口を尖らせる。

「本人は気にしていませんでした」

「そうじゃの。じゃが」

 あっさり頷いた玖楼は扉を開ける。五十嵐が飛び込んできた。

「玖楼殿、玲奈は!?」

「五十嵐とやら」

 バジルの声に、彼は眉を潜める。

「やはりお前、覚えていないようだな」

「何をだ?」

「こいつが誰に、どうやって、傷つけられたのか」

 五十嵐は知る必要がある。

 己の異常性を。




投稿出来た!(雄叫)

これで第一章は終わりとなります。キリの悪い終わり方で済みません……


ちなみに第一章の

主題は「始まり」

副題は「鈴無玲奈と五十嵐優一の受難」でした。


第二章は約一週間後を予定しております。


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