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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第一章
38/117

狂乱?

残酷な描写有です


 瞬間、待ち構えていた異界の生き物の首と胴が離れた。手も切り刻まれている。

 彼から一番離れた距離にいた玲奈とバジルは、五十嵐の腕が生き物のように動く様を目の当たりにする。

「何だ、あれは」

 バジルが呆然と、表情の欠落した五十嵐を見て呟いた。

「分からん。前は手から刀を叩き落とすまで、敵味方関係なく周囲の者を()り続けてた」

 ゆらりと五十嵐は歩み寄り、レキの喉笛を狙う。レキは斬られる直前に逃げた。

 五十嵐がゆらりと二人を向いたことで、気付く。

 生きている者の中で一番至近距離にいるのは、二人なのだと。

 玲奈が魔剣を床に置いて立ち上がる。五十嵐に斬られた異界の化け物が持っていた刀をとる。

「お、おい、何故愛剣を放置する」

「五十嵐を傷つけかねへん」

 言い捨てた彼女はバジルを見やり、魔剣を指差した。

「そうそう、あたしの剣に触ったらあかんで。曰く付きやからな」

 しかし、と渋るバジルを遮り、玲奈は問い掛ける。

「異界の出口、どこなんや?」

「すぐそこだ。レキが立っていた側の壁に黒い染みがあるだろう? それに触れてくれ、日本国に出てくるから」

 染みを確認し、距離を確かめた。

 彼女が向き直ると、五十嵐が首を傾げる。

 不意に、短刀が玲奈の首目掛けて飛ぶ。玲奈はそれを鞘で払い、返す刀で五十嵐に斬りかかった。



 間一髪、彼の刀から逃れたレキは、彼に宛がわれている個室で一息ついていた。

「……流石に死ぬかと思ったー」

 玲奈の太刀はまだ持ちこたえられたが、もし五十嵐のまで受けていたら、この異質な肉体でも消滅を余儀なくされていただろう。

 それより。

「オレにとっちゃあ、鬼門、鬼門、鬼門だねぇ」

 血の臭いに、血相を変えて駆けつけてきた神無に手を振る。

 神無が不意を突かれたところも、水晶玉で視ていた。彼はまだいい。気を抜いただけなのだから。

 しかし、レキはもう二人と戦えない。

「神無さん。オレ、あの二人、無理」

「何故ですか? まだ死招(しまね)きもやっていないようですし、やりようはあるのでは?」

 神無の質問に首を振る。

「影が薄い兄ちゃん。彼、もう死んでるはずの人間。死相、変えようがない。元気ハツラツな姉ちゃん、兄ちゃんと関わりすぎたせいで死相が定まってないから、オレ、座標を下ろして殺せない」

 死招きと神無が呼ぶレキの術は、寿命を縮めることで相手を殺す。その為には相手がいつどこで死ぬ筈なのかを知る必要があり、またその手段として、顔に浮かぶ死相を読むことが多い。

 絶句する彼の背後に、異界の主が立った。

「死んでいるはずの人間だと?」

「ハイ。村皆殺しのはずが、何かが起きて彼だけが生き残ったみたいで」

「興味深い。さきほど適当に送らなければよかったな。誰を向かわせようか……」

 そう言って考え込んだ彼は、ややあって眉を潜める。

「殺られた」

「はい?」

 主は忌々しげに虚空を睨みながら、硬直した二人に告げる。

「白虎探索に向かわせていた三番、東部殲滅に向かっていた二番と四番」

「……彼らが?」

「たった今だ、三番は朱雀に、二番と四番はあの男に殺られた。そして五番があの女と相対している」

 主と彼らは繋がっている。生死の確認も、容易い。

「神無」

「はい」

「五番を救出し戻って来い。何体使っても構わん」

 神無は一度だけ手をこめかみにあて、敬礼のかたちをとって部屋を飛び出した。

 レキは主を不安げに見つめる。

「主、隊長を連れていこうとしている二人は……」

「俺が出る」



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