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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第一章
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異界の主


 飛び出した先は、一面が(あか)の世界だった。

 昔、玲奈が迷ったときと変わりもなく。

 ただ、在り続ける世界。

 絶句する玲奈をよそに、五十嵐は眉を潜めていた。

「まだ、部屋の中だ。それに誰か寝ている」

 我に返った玲奈を引っ張り、五十嵐は歩み寄った。

 ベッドに、女性が寝かされている。


 いきなり現れた人間にボロクソ言われた神無は、むしゃくしゃしながらバジルの元を訪れていた。

 バジルが弾かれたように彼を見る。

「組織の匂いだ……お前も戦ったのか?」

「いえ、私は異界から出ていない……」

 不意に思い出したことに神無は納得し、バジルを見た。

「出ていませんが、組織の者が二人ほど異界に忍び込みました」

「えっ」

「遭遇しましたが、逃げられました」

 あからさまにほっとする彼女に、少し嫉妬が燃える。ちょっと意地悪になってみた。

「二人はあなたを探しているようでしたね。ですから、彼らはここに来るでしょうね。待ち構えてやりましょう」

 バジルが落ち込む様子に、悪戯は成功したと内心喜ぶ神無だった。


 女性を見て、玲奈はほうと溜め息を漏らした。

「美人……」

 黒い長髪がベッドに流れ、白い肌は潤いに満ち溢れている。肌を傷付けないようにと配慮してあるのか、服は絹だ。

 しかし。毎秒ごとに、女性の心臓に赤い染みが浮かび、部屋の空がまた一段と朱に染まると絹の染みは消える。

 幻想的な風景だが、彼女は動かない。

 五十嵐が眉を寄せ、女性の口元に手をやった。

「息をしていない」

「何をしている」

 鋭い声をかけられ、二人は強張る体を抑えて振り向いた。

 白い長髪に翡翠の瞳。左頬の痣は消えることなく。

 異界の主が、立っていた。

 主は五十嵐の手を見やり、彼を睨む。

 圧倒的な威圧に全身が震えた。

 殺される。



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