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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第一章
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副団長と団長について


 彼が集合場所に戻ると、他の団員から労いを示される。

毎度毎度(まいどまいど)、ご苦労様です」

「これも仕事のうちだからな」

 溜め息をついた彼に、後ろから肩を叩いた人物がいる。

 黒髪に水色の瞳の美男、この武士団の副団長にあたる浮草だ。

 体つきはひょろりとしており、普段の服装からは軍人だとは気付かれない。普通にしていれば、まるで詩人のようだとの話も聞く。

 では、何故そのような非力な見た目で副団長になったのか。

 ひとつは、急先鋒を務めようとする団長を抑える役柄として、後方で指揮をとる彼を据えようといった話になったらしい。冷静に物事を見極め、歯止めの聞かなくなった団長とも対等に渡り合える。

 もう一つ言えば、実力の問題だった。

 非力に見えると()べたが、実際はそんなはすがない。普段は後方で剣を抜くことは滅多にないが、弓をひくことはよくあった。

 そう、彼は弓の名手だった。遠くからでも外したことのない、そして馬を早駆けさせても決して誤ることのない腕前が、この人にはあったのだ。

 その腕は、団長でさえ舌を巻いたとの噂もあるほど。玲奈や五十嵐では太刀打ちできるはずもない。

 五十嵐は何をされるか分かっていながら、諦めて振り返った。

「お疲れ様」

「…………」

 彼の頬に指を突き刺した副団長は笑い、親指で兵舎の方を指差した。

「やっぱり寝坊してたかい?」

「はい」

「ありがとう。これで賭けはオレの勝ちだね。団長に銀貨五枚貰ってこよっと」

 呆れ返った五十嵐だった。

 そんな彼をよそに副団長は鼻歌混じりに団長に近づき、嬉しそうに話している。団長は至極嫌そうに応対し、賭けの代金だろう、銀貨を数枚払っていた。

 その五十嵐の背中に、慌てて駆けてきた玲奈が飛び付いた。

「遅うなってほんまにすみませんでした!」

「部屋に時計でも置いておけ」

 金色の目をすがめばっさりそう言った団長が騎乗し、手綱を持つ。

 やっと空が明るくなってきた頃だ。

 風にあおられ、団長の鮮やかな金髪が、燃えるように揺らめく。

 それは少し神がかっているように見え、五十嵐のとなりにいる玲奈が息を呑んだ。

 彼の出自を知るものはいない。数年前ふらりと丹洪に現れ、国王に目をつけられ抜擢された旅人としか聞いたことがない。

 しかしそれにしては、強すぎた。全てに突出した実力を見れば、たとえ国王でなくとも腕前に惚れ込んでしまっただろう。

 それで顔も性格も良いのだから、神は彼に余程甘かったようだ。

 内心溜め息をついた五十嵐をよそに、団長は一言、はっきりと命令を下した。

「西に向かい、国王軍と合流する」



次から長くなるかもです。

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