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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第一章
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互いについて


 緑香の肩を借りた団長は、しばらく何も話さなかった。それでもいい、と緑香も沈黙を守る。

 耐えきれなくなって、声を出したのは、団長だった。

「……何故」

 緑香はわざと聞き返さない。少し怯んだようだが、彼は声を振り絞った。

「何故緑香殿まで、反対する」

「反対、ですか?」

 溜め息をつく。それに少し団長がむっとして体を動かした。

「何だ」

「須王さんは忘れているのかもしれませんが。バジルと言う方が今も捕まっているんでしょう? こんなところで貴方がグダグダとだだをこねている暇があるんですか?」

 反撃に詰まった団長が黙り込む。それを良いことに、緑香は追撃(ついげき)に出た。

「確かに反対してますよ。ここで会ったも何かの縁。しかも聞いていれば、どうやら貴方に姉は恩義があるらしい。タンコウ、ですか? 国のことだから何も言えなかったみたいだけど、泣きそうな顔だったんですよ。お姉ちゃん」

 緑香はあの中で一番、何も知らなかった。

 だったら、知らないなりに足掻(あが)いてやる。戦みたいだから、知ってる人間の命だけでも助けてやろうじゃないか。

「ええ、私は何も知りません。でもできることはあります。私にとってこれがそうだし、貴方にとっての出来ることは『仲間を見守る』でしょう? それくらい割り切ってくださいな」

 これ、の部分で貸している肩を指す。

 絶句していた彼を、着いた病室のベッドに放り込む。

「側にいますから、とりあえず寝てください。疲れてるんだか何だか知りませんけど、目の下のクマ、凄いことになってますよ。まるで心が()んでる人みたい」

 返事をせず団長はふいとそっぽを向いた。

 キツいこと言っちゃったかな、と頬をかいていると、小さな声が耳に届いた。

「……済まなかった。寝る」

 緑香はにっこりと笑う。

「お休みなさい」



 本当に彼女が玲奈の妹なのか。それが、団長須王が羽栗緑香を始めに見た感想だった。

 マイペースな所は姉そっくりだが、あどけなくて、のほほんとしているところは姉と正反対である。

 そう、思っていたのだが。

 中々どうして、姉と同じく気丈(きじょう)で、強かで、少しひねくれているらしい。さらに言葉を選ばない。

「側にいますから、とりあえず寝てください。疲れてるんだか何だか知りませんけど、目の下のクマ、凄いことになってますよ。まるで心が病んでる人みたい」

 そして、緑香は緑香なりに自分の事を心配してくれていたらしい。

 団長はしばらく迷った挙げ句、済まなかったと言ってみた。

「お休みなさい」

 目が細くなって、瞳が見えなくなる。後ろでそうやって笑っているんだろうな。

 ぼんやりと彼女の顔を思い描いた団長は、意識を手放した。



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