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彼
み、短くて済みません……
彼は目の前に現れ膝をつき拝礼したそれに、目を向ける。
「逃がしたのか。龍石も奪われて」
「……済みません。彼らは羽栗と言う家に立て籠っております。何やら結界を張っている様子で」
何か答えることもなく、彼はまた尋ねた。
「丹洪の国王は殺れたか?」
「それが……」
それが言い淀んだのを見て、彼はまさか、と囁く。
「黒狼か? 奴が国王の側で抵抗しているのか?」
「……誠に残念ながら」
「否。どこが残念なものか」
それは呆然と彼を見上げる。
彼は薄い笑みを浮かべ、白い長髪を纏め、外套を羽織った。
「あれも回収しよう。俺も出る」