再会・衝撃
王都にはまだ地震が起きていなかった。
しかし安堵している暇はない。
五十嵐は近衛兵の知り合いが走っているのを見て、思わず声をかけた。
「おい!」
「五十嵐? 顔が真っ青だぞ」
「そんなことはどうでもいい。宿舎に、誰かいるのか?」
「誰もいないぞ」
その言葉に、顔を白に変えた玲奈がアンヌを宿舎まで案内する。
案の定、副団長だったそれが、御神木を破壊したところだった。
「案外、早かったね」
「どうも」
短く答えた彼女の側を、火の玉が飛んでいく。火の玉は、副団長に当たって破裂した。
「何をしている」
三人の後ろに、国王と鈴無当主が血相を変えて立っていた。
「親父殿!」
「分かってる。こいつは人間ではない。思考が読めないからな」
当主の答えにそれは興味をそそられたのか、火でただれた顔を当主に向けた。
「魔法、使えるんだ?」
その顔にまた、国王が容赦なく火の玉をぶつける。
「失せろ!」
「それは嫌。ところで国王陛下」
それは笑みを浮かべて、剥いだ副団長の顔を見せた。
「これ、なーんだ?」
愕然として国王が目を見開く。
「浮、草」
「そ。いやあ、彼もかなり足掻いてね。団長に奇襲かけてボロボロにしたのに、彼が血塗れになっても団長を守るように抵抗してさ。殺すのに苦労したんだよ? それでやっと彼を殺したと思ったら、団長は逃げてるし。しばらくは彼の顔を被ってなりすましても、団長出てこないし」
国王と当主の顔が、怒りに彩られた。
「貴様」
「剣を抜け。正々堂々切り捨ててくれる」
「良いことを教えてあげよう」
それはにこりと笑って、御石を砕いた。
地面が、揺れる。
「人間って、激情に駆られたら、注意を払えなくなるんだってね?」
大地から飛び出した手が、槍のように、当主の心臓を貫いた。
全員が、動きを止めた。
「…………な」
玲奈が、呆然と口に出す。
「親父、殿」
当主は、崩れ落ちた。
「親父殿!!」
玲奈が手を切り払い、当主の元に駆け付ける。しかし彼はもう、息をしていない。
そして、別の地面から現れた手が、国王を狙った。
しかし。
血塗れの団長が、国王を庇うように立ち、手を切り払っていた。
「団長!」
「元気で……何よりだ」
団長は僅かに笑い、顔をしかめる。じわり、とまた包帯が朱に染まる。
その隣に、子供が降り立った。
「無茶をするな。また傷口が開いたぞ」
「とっさに体が動いた」
「…………」
鼻を鳴らした子供は、さて、と副団長だったそれに手を伸ばした。それはくすりと笑い、溶けるように逃げた。すぐさま駆け寄ったアンヌが御神木に手をやり、武士団でやったように災害を収める。
さて、と彼女は国王を見た。
「説明は必要かしら?」
「してほしい」
「分かったわ」
力尽きたかのように団長ががくりと膝をつく。アンヌは彼を背負い、子供を指差した。
「バジル! 彼に説明してあげて!」
「私ですか!?」
思わず突っ込んだ子供だが、彼女が有無を言わさず五十嵐と玲奈を掴んで消えたので、頭を押さえた。
本編とは全ッ然関係ありませんが、
Merry Christmas!