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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第一章
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来てみました


 玲奈はまた渋い顔になっていた。

 気が付けば武士団の自分の部屋に寝かされており、側で五十嵐と、彼女を気絶させた女性がやいやいと騒いでいるのだ。

 そのくせ彼女は副団長が顔を覗かせると、素早く玲奈の布団に潜り込んで隠れる。

 来た理由が「気絶した玲奈が心配になったから」なのだから、追い返すのも少し気がひける。

 そんな、アンヌと名乗った謎の女性。

「そういえば、なのだけれど」

 もそもそと玲奈の布団から顔を出したアンヌは、玲奈を見上げた。

「玲奈あなた、この国の生まれじゃないでしょう」

「え」

 五十嵐も玲奈も、驚きを隠せない。

「何で分かるんですか?」

 五十嵐には昔話した。アンヌはへにゃりと笑い、玲奈の額を突いた。

「だってあなた、魔法の素質あるもの」

「マジですか!?」

 喜ぶと、彼女は亜麻色の長髪を揺らして頷く。

「属性は分からないけれど。でも、優しい感じがするわ」

「何なんやろ、治癒かな?」

 わくわくしている玲奈に、アンヌは笑みをこぼした後、表情を引き締めた。

「それよりも。どうして貴方はここにいるのかしら? どうやって国、ひいては世界を渡ったの?」

 玲奈は返答に詰まる。

「何て言えばいいのか、分かりません」

「何があったのか、教えて頂戴」

 五十嵐が警戒心を(あらわ)にして彼女を見ている。しかし、玲奈はぽつぽつと話し始めた。


 五十嵐に昔話したように玲奈が話し終えると、アンヌは目をつぶり玲奈の頭を撫でた。

「見入られてしまったのね」

 訳が分からないながらも、玲奈は素直に頭を撫でられたままでいた。彼女の手が妙に温かく感じられたのだ。

 目を開いた彼女はあのね、と五十嵐を見て、話し始めた。

「団長と副団長の襲撃。団長の失踪。貴方達を襲った手。地震。龍石の破壊。これらは全部繋がっているの」

 五十嵐が背筋を伸ばす。

「教えて下さい。そして、あの手は……そのイカイの生き物なんですか」

「そう。あの手は、迷い込んだ異界から出られずに、そこで朽ち果てた人間のもの。玲奈も、彼に出口を案内されなければ、あのなかにいたかもしれない」

 玲奈の両腕に鳥肌が立っている。構わず、彼女は続けた。

「異界の主は、朽ち果てたそれを自らの手足として扱うことができる。同じように、主から命を受けた彼らも、それを操ることができる」

 五十嵐が眉を潜める。

「彼ら?」

「主に作られた、人間の死体に命を吹き込んだ生き物」

 そんなものが、存在するのか。

 玲奈は思わず突っ込んでいた。

「……アレですか。その主、とか言うんは神様なんですか」

「神ではない。でも、それくらいの力を持つわ」

 布団に突っ伏す。五十嵐は考えることが多すぎて、頭を抱えている。二人を眺めていたアンヌはくすくすと笑った。

「これ以上ヒントはあげない。どうせ、もうすぐ全部分かるのだから」

 その言葉に玲奈が声をあげかけて、彼女の指に阻まれた。

「私、隠れるわ」

 アンヌは天井に飛び上がり、屋根裏に逃げ込む。それから間髪入れずに、副団長が顔を覗かせた。

「鈴無、体調はどう? 今から調練するんだけど、行ける?」

「行けます!」

 玲奈は布団を押し退けて立ち上がる。



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