国王に報告
久野に戻ると、何故か国王から五十嵐と玲奈のみ来るように、と連絡が届いていた。玲奈は家が絡んでくるらしい。
すぐさま二人で馬を駆ると、待ち構えていた国王が報告を迫る。
二人が子供と会った話をすると、国王は顎に手をやった体勢のまま考え込んだ。
「……食事、だと? 生きた人間が側にいては……」
まさか、と国王は顔をあげる。
「魂喰らいか!」
玲奈が目を見開いた。
「マジですか」
「有り得ん話ではない。それに、生きた人間が側にいると、巻き添えを食う可能性がある。その子供はそれを危惧して……」
一人ついていけない五十嵐は混乱する。
「失礼ながら、訳が分かりません。そのタマシーグライと言うものは何なのですか」
「あ、説明したろ」
玲奈が名乗りを挙げた。世話好きだからなのだろう、顔が輝き嬉しそうにしている。
「魂喰らいってのはな、何やイカイって場所から登場する人間の事なんや。で、人間の魂を喰う。死んでその場をさ迷う魂でもいいみたいやで。死神とも呼ばれとる」
「イカイ、と言うのは?」
「異世界だな。何やら一人の者が統治しているらしい。ちなみにそこでは、俺のように魔法を使える人間もいるらしい」
国王が冗談のように、手を広げ、手のひらに炎を灯す。
余談だが。この世界、と言うのだろうか。丹洪を含め、大陸の国は皆、何故か王族に連なる者意外、魔法が扱えないようになっていた。
「……それは、かなり危険なのでは?」
「うむ。実際、昔は魂喰らいがよく丹洪に来ていたらしくてな。かなりの人間が生きたまま喰われた、との記述も残っている」
玲奈がでは、と静かに確認する。
「あの子供は」
「かなりの確率で、味方ではない。……お前達を巻き込まないようにと忠告してくれたのはありがたいがな」
それと、と国王は武士団の名簿を睨んだ。
「副団長に気を付けろ、か。本人も疑われているとは気付いているのだろう」
「はい」
久野を出るときも、苦笑で見送ってくれた覚えがある。
しばらく考慮のためか動きを止めた国王だが、諦めて名簿を書類の山に投げた。
「お前達が見張っていてくれ。当分の間は二人で副団長代行だ」
「はい」
「こちらでも捜査する。須王が死体の中に居なかった、それだけで充分だ」
膝をつくと、国王がさて、とにやにやしながら出口を指した。
「もう帰ってもいいが、鈴無の家からの使いが扉の外で待っているぞ」
「げっ」
玲奈が小さくうめいた。五十嵐も同じ思いである。
五十嵐も玲奈と関わるようになって、何故か鈴無の家から呼び出されるようになった。玲奈の父、つまりは鈴無一族の当主からに気さくに話しかけられるのだが、存在感が威圧過ぎて、未だに慣れない。
そろそろと部屋を出た二人だが、やはり使者に捕まった。